映像制作


 Play社からTrinity(トリニテイ)のコンセプトが発表されて以来、ここ数年間、業界では常に注目されうわさされてきた。もし、そのコンセプトが現実のものとなれば、真の意味での映像革命をもたらすことは業界人ならだれしも疑うことのない事実であった。そのためライバル会社は脅威に思っていたことは事実であろう。しかし、コンセプトが発表されてから数年間経つうちに他社ではノンリニア製品群が充実し、さらにリアルタイムで多機能な製品群が現れつつある。こんな中USAでTrinityの出荷が始まった。すでに遅しという感もないわけではないが、Trinityの発表から数年経ってしまったいまでもその基本コンセプトはまだ魅力にあふれている。はたして、Trinityは真の意味で映像革命を起こしてくれるのだろうか?
 そんな中、日本にTrinityが入ってきたという情報をキャッチした。そこは湘南にある潟<<bスだ。そこで、さっそく潟<<bクスの飛田幹司社長のところに取材に出かけることとなった。
 さて、メメックスといえばDTVの世界では草分け的な存在であることは、この道の詳しい人は周知のとおりだろう。古くはAMIGA、特にVideoToasterなどの販売やCGの制作などもされていたようだが、最近ではDPS社のPerception VRなどの国内代理店をされている(現在はDPS社の日本代理店ができたので、そこのアドバイザー的役割をされているようだ)。
 ところで、社長の飛田氏は自らマシーンを駆使し、CGを初めビデオの編集をされる。古くはAMIGA時代・からDTVを実践してきた人だ。今回は、飛田氏のもとでデモンストレーションを受け、Trinityの数々の魅力を伝授していただいた。ではさっそくTrinityとはどんなものか紹介していこう。


写真1 Trinity外観

写真2 Trinityシステム
■ビデオ規格:in;NTSC、PAL、PAL-M、SECAM Out;NTSC、PAL、PAL-M ■サンプリングフォーマット: ITU-R601、4:2:2:4(D-1) ■サンプリング周波数:27MHz ■A/Dコンバーター:8or10ビット、2×Oversampling
■ピクセル解像度:720×486(NTSC)、720×576(PAL) ■DG・DP:1%、1° ■信号内ノイズ:8ビット>58dB/10ビット>70dB ■Kファクター:<5%
■周波数特性:5.0MHz±25dB±5.5MHz-1dB ■ビデオ入力:それぞれの入力に対してフォーマットアダプターが必要。内部では8入力までサポート ■リファレンス入力:コンポジットビデオまたはブラックパースト ■リファレンス出力:ブラックパースト
■ユニットサイズ:ラックマウントサイズ 幅17×高さ17×奥行24インチ ■内部ドライブペイ:5ハードディスクペイ、4CD-ROM/CD-R/DVD/テープバックアップペイ ■ソフトウェアタイミング調節:水平SC位相、水平ポジション、垂直ポジション ■推奨ホストマシーン:標準的なペンティアムPC、Windows95 or NT4.0、32MバイトRAM、CD-ROM、1024×768/24ビットSVGA、ディスプレー
■問い合わせ先:(株)メメックス TEL0466(35)0815 
 表1 Trinityの主な仕様 

■Trinityとは(図1)

ここで、ビデオαを購読されている方に、Trinityを簡単に説明しよう。
 Trinityはスイッチャー機能、DVE機能、キャラクタージェネレーター機能、ペイント機能、オーディオミックス機能、VTR制御(編集)機能をもった1ボックスシステムで、コントロールにはインテル系WindowsNTマシーンが必要となる。
 さて、先に話した機能を見ると以前DTVの走りとして話題を集めたNewTek社のVidoToaster(図2)とほぼ同じ機能であることがわかる。違うところはVTRをコントロールできる編集機能をもっているところだろう(ところでVideoToasterは別売のAmiLinkを使用することで編集機能を一元化することができた)。

 そう考えると、あまり代わりばえのしないシステムであるかのように思われるが、Trinityのすごいところは、すべてにデジタル処理が行われており、ITU-R601に完全に対応した4:2:2:4のD-1解像度による高画質をもち合わせていることだ。マザーボードは8ビット、10ビットに対応しており、使用する入出力ボード(オプション)によりコンポジット、Y/C、アナログコンポーネント、SDI、DVなどあらゆる入出力に対応可能となっている。また、TimeMachineなるノンリニアユニットを取り付けることで、リニア、ノンリニアの混在したシステムをたやすく構築できる。何度も繰り返すが、これらがすべてD-1解像度でしかもハイクオリティな画質をもっている。そして、最も驚くベきことはこのTrinityのベースシステムの価格がアメリカで4995ドルであるということだ。これは実に信じがたい事実なのである。 図2 VideoToasterSwilcher

 先に述べたVideoToasterと比べた場合を考えると、VideoToasterでは画質面で明らかに差がある。特にDVEを使った際の表示解像度に大きな差がある。つまり、VideoToasterではDVE処理においてモザイク上の画質に荒れが生じたが、Trinityではいっさいない。またVideoToasterではFlyerというノンリニアボードを付けることでリアルタイムノンリニア編集を可能にしていたものの、9ピンでのコントロールができなかったため、スタジオで使用する場合にとても不都合があった。もちろんサードパーテロールはできたようだが、不明な点が多かった。それに比べ、Trinityのコンセプトは放送レベルのクオリティをデスクトップで実現し、しかも業務用、放送用としても使用できるように非常にしっかりした設計になっている。
 さて、このようにPlay社のTrinityの基本コンセプトがNewTek社のVideoToasterに似ているのは、Progressive Image社とDigital Creation社、そしてNewTekを辞めた人がいっしょにPlay社を起こし、VideToasterにとどまらない本当につくりたかった製品Trinityを開発したからだ。
 では、Trinityをさらに詳しく見ていくことにしよう。

図1 Trinity Switcher

■外観と内部

 まずTrinityの外観だが、写真1のとおりだが、かなりデカイ。サイズは19インチラック10U(17×17×24インチ)である。
 内部をのぞくと29基の拡張スロットをもったマザーボード(図3)があり、標準では4枚の拡張ボードがインストールされている。この4枚の拡張ボードは、Switcherボード、WarpEngineボード、Framestoreボード、Coordinatorボードである。
 さて、これらが米国で4995ドルで販売されている基本システムだが、実際には入出力ボードなどがオプションとなっているので、入出力ボードを必要な枚数購入しなければならない。そうすると基本的なシステムではUSA価格で8500ドルくらいになるらしい。


内部

外部

図3 マザーボード
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ビデオアルファ1998年9月号