映像制作


■キャラクタージェネレーター機能

 Trinityはソフトウェアだけではなくハードウェアを使用することでライブビデオやノンリニアビデオクリップに高解像度のテキストアニメーションや合成をリアルタイムに行うことができる(図8)。
 タイトルはTitleWaveを使用してつくり出していく。使用できるフォントにはTrueTypeやPostScriptが使用できるが、標準で欧文100書体のBitstreamタイプフェースライブラリーが付属している。これらは放送用につくられているフォントなので、ビデオで使いやすい字幅の太いフォントもそろっている。したがって、これだけでもかなりのことができる。ただ、残念なことに現段階では、まだ2バイトに対応していないので日本語の表示は不可能だ。しかし、近い将来2バイトに対応するようなので、今後が非常に楽しみだ。
 さて、TitleWaveを使用して入力したタイトルは大きさを初め、緑の色や影、透明度などさまざまなファクターを変更していくことができる。そして、グラフィックスと合成しながら、ロールやクロール、フラッシュなどを行える。
 自分でカスタマイズしたフォントやロールやクロールの情報はすべて保存することができるので、いつでも再利用することができる。そのためTrinityはとにかくライブに強い設計だといえる。


図8 タイトラーTitleWave。まだ、日本語に対応していないが、近々対応予定だ

■Paint機能

 Panamation(図9)はベクターペースのマルチレイヤーをもった強力なPaintソフトだ。グラフィックスデータを利用する際はアルファチャンネル付きの32ビット静止画(Targa32)や32ビットのAVIファイルを読み込み、瞬時に画像に合成することができる。またマルチレイヤーを使って多重合成したり、それらに個別で移動や回転などのアニメーションを付けることもできる。
 また、Stroke(ペイントツール)を使用するとカスタムブラシを設定し、画像に対してペインティングを行うことができる。ペイントはすべてベクターペースで処理されているので、ペイント後のペイントのアニメーションも可能だ。ここでペイントというと単に色を付けることだけと思うかもしれないが、実はそれだけではなく、ペイント部分にエフェクト効果を付けることができる。たとえば、ある部分にモザイクをかけたり、ある部分にライト効果を与えたりなど。
 Scaterというパラメーターにアニメーションを設定すると、グラフィックイメージをパーティクル状に爆発させたりすることもできる。とにかく多種多様の効果をつくり出せる。
 そして今後最も期待できる機能の1つに、モーショントラッキング機能がある。これは現在のVer.1.0ではまだ搭載されていないが、つぎのVer.1.1では搭載される予定だそうだ。
 いままでもAfter EffectsやDigital Fusionなどの合成ソフトを使用すれば、モーショントラックの使用は可能だった。しかし、これらはいずれも合成にレンダリングが必要であった。Trinityは合成にレンダリングが不要である。つまり、あのクォンテルのHenryと同じである。同じといってしまえば相手は1億円以上もする代物なので、すべて同じではないにしても、Trinityに非圧縮のノンリニアボードを搭載すれば、ある意味でHenry以上のシステムを安価に組み立てることが可能となる。そう考えると、Trinityにノンリニア編集を組み合わせたときこそ、その可能性は無限に広がっていく気がする。


図9 強力なペイント機能Panamation。クォンテルのPaintBoxやHenryがライバル?

■ノンリニアシステム

 Trinityの基本システムは、ノンリニアシステムというよりリアルタイムスイッチング、編集システムということができるが、TimeMachineボードをオプション追加することで、非常に強力なノンリニアシステムに変貌する。TimeMachineボードは、独立した2系統のD-1品質ビデオストリームと4chのCD品質のオーディオを再生することができる。そして、TrinityのSwitcherボードを使用することでカットやトランジションをいつでも自由に実行することができる。
 圧縮比は3:1から30:1まで自由に設定することができるので、ベータカムSPレベル以上の画質のビデオを30分から数時間録画することができる。圧縮にはMotion JPEGとは違ったWavelet方式のコーデックを使用しているので、1/3圧縮でもM-JPEGの1/2の画質に匹敵するといわれている。
 実はTrinityのすごいのは、このTimeMachineを複数使用することで、複数トラックのノンリニア映像を同時に走らせることができることだ。これはいままで非常に高価なLightWorksやHeavyWorksなどにしかできなかったことである。これで、マルチカメラを使ったライブ映像の編集には非常に効果を発揮するだろう。
 さて、このほか非圧縮の外付けTimeMachineも用意されているようだが、詳細はわからない。オーディオは別付けのシングルストリームという話もある。

■おわりに

ざっと、Trinityを見てきたが、見れば見るほど、欲しくなる。それほど魅力的な製品だ。
 というのも、VideoToasterやFlyerなどを使っていてどうしても不完全燃焼していたところが、このTrinityを使用することですべての部分がクリアされるからだ。つまり、映像品質で放送品質を満たし、機能面でも業務機器や放送機器システムとの完全な融合(9ピンコントロールなど)ができ、今後の発展も期待できるからだ。
 近い将来、VJといわれるアーティストがこぞってTrinityを使う日もくることだろうし、プロダクションやサテライトTVやケーブルTV、インターネットTVなどいろんな場所で使われることも予想される。もちろん放送局も入れるだろう。だって、いままでの放送機材に比べると非常に安いんだから。
 さて、最後にTrinityの日本での発売予定や今後のスケジュールについて尋ねてみた。
 Play社の要望はアメリカと日本での価格差の是正や、技術教育にあったようで、飛田氏がこれらについての解決案(内容はオフレコ)をPlay社に対して示し、それが受け入れられたそうだ。したがって、秋ごろには日本での正式リリースが行えるらしい。ただし、販売方法についてはいまのところ正式公表はされていないが、それも時間の問題だろう。いずれにせよ日本での普及活動は、潟<<bクスが先導をきって行うことは間違いなさそうだ。飛田氏にはPlay社にVideoToaster時代からの友人が沢山いらっしゃるようで、そういう意味でも心強い。飛田氏の情熱でTrinityの日本での成功を願いたい。ぜひ頑張ってもらいたい。
 最後に、貴重な時間を割き、長時間にわたり自らデモンストレーションを行ってくださった飛田氏に、誌面をお借りして感謝いたします。
PLAY.Inc Trinity

●キューブに静止画を張り付けた3Dエフェクト。動画のマッピングも可能

●厚みをもった画面が飛んでくる3Dエフェクト。厚みの部分にテクスチャーを張ってある。

●TitleWaveはフェース、サイド、アウトライン、シャドーの4属性をもつ。フォントをデザインして、タイピングもできる

●画面中央のヘルメットがワイプのボーダー代わりとなっているトランジションエフェクト

●著者みずからが被写体となったバーチャルセット。やかんや水面に実写が映りこんでいる

●PanamationとTitleWaveを駆使してテロップを作成。「フラッシュ」により文字がピカピカ点滅する

●これもバーチャルセット。被写体をテレビの画面として合成
 
ビデオアルファ1998年9月号
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