映像制作


 近年のデジタル合成の発展は目覚ましいものがあり、映画やテレビでは額繁に使われている。特に最近では、どこで使われているのかもわからないように巧妙に使われていたりする。これは、ひとえにソフトウェアの進歩によるところが大きい。これらのハイエンドデジタル合成の現場でなくてはならないブランドの1つがdiscreet(旧discreet logic*)だ。ここで、最もハイエンドとされているスペシャルエフェクトシステムがSGIのOnyx 2をプラットフォームとしたinferno*である。合成映像を手がける者なら、だれしも使ってみたいシステムであろう。通常、ポストプロダクションのスタジオを使用することになると思うが、一般的な合成ならその下のクラスのflame*でもかなりのことはできる。しかし、flame*といえどこれらのシステムが入ったスタジオ料金はやっぱり高い。だがどんなに予算がなくても、映像に携わる者の気持としてはやっぱり使ってみたい。でされば自分の手元において使いこなしたいと思うのも人情というものだろう。
 そこで、discreetではこのようなプロダクション向けに編集から合成まででき、しかも上位機種に迫る機能をもたせたシステムを用意している。それがfire*とsmoke*だ。fire*はSGIのOnyx 2をプラットフォームにしたハイエンド・非圧縮ノンリニア編集・合成システムで、smoke*はfire*をベースにSGIのOctaneに最適化させたオンライン非圧縮ノンリニア編集・合成システムだ。
 今回は、最近smoke*を導入し仕事に活用されている制作プロダクション「KID'S」を訪れ、演出家でもある瀧澤正治社長にお話をうかがってきた。


写真1 smoke*Octaneシステム
■smoke*の概要および機能
 まず本題に入る前に、smoke*の概要と機能について簡単にお話したい。
 smoke*(写真1)は、SGIのOctaneをプラットフォームにしたオンライン非圧縮ノンリニア編集・合成システムである。inferno*やflame*との大きな違いは、合成機能のほかにfire*と同じ高度な編集横能を標準で装備しているところだろう。そして、スピーディでパワフルなランダムアクセスが可能なインターフェースは他の機種を踏襲している。
 このとき、smoke*の扱う映像データはOctane上で非圧縮4:4:4RGBのビデオクオリティを 保持し、3D DVE、キャラクタージェネレーター、スタビライザー/トラッカー、カラーコレクター、ペイントなどオンライン編集室で必要とされる機能をすべて1プラットフォームで行うことを可能にしている。合成から編集まで行えることを考えると、非常にコストパフォーマンスが高い製品だといえる。

■編集

 smoke*のクリエーティブな編集を支えるインターフェースはEditDesk(図1)と呼ばれ、ソースエリア、ツールバー、レコードエリアの3つの部分から構成されている。編集点、トランジションエフェクト、モーションコントロールはいつでも変更が可能で、5種顛あるレコードエリアビューは用途に合わせて自由に切り替えることができる。


図1 EditDesk。ソースエリア、ツールバー、レコードエリアの3つの部分から構成されている

■オーディオ編集

 discreetAudioサブシステムにより、48kHz、16ビットクオリティで4chの同時入出力と再生、無制限のバーチャルトラックをサポートしている。すべての編集およびミクシングは波形表示させながらタイムライン上で行うことができる。編集単位は1/100サブフレームまで行え、リアルタイム再生しながらオーディオレベル、パン、EQの調整、およびミックスダウンが可能だ。

■カラーコレクション

 ヒュー、サチュレーション、コントラスト、ガンマ、ゲイン、オフセットによるカラーコレクター機能をサポートし、リアルタイムプレビューが可能だ。ハイライト、ミッドトーン、シャドーなど範囲指定で単独調整ができる。ルミナンスレンジでの調整も行え、カラーコレクションのキーフレームアニメーションも可能だ。

■キーヤー

 RGB、YUV、HLSカラースペースでのクロマキーとルミナンスキーをサポートしている。マットのトレランス、ソフトネス、1/100サブピクセル単位でのシュリンク、エロード、カラーサプレッションによるスピル除去も行える。スプラインベースのガベージマットは個数もポイント数も無制限にサポート。マニュアルでのアニメーションやアクシスを使ってトラッキングとの組み合わせが可能である。

■ペイント

 手書きによるガベージマットや、汚れ、傷、ワイヤーなどを除去するスクラッチ/リムーバブル機能があり、ブラシはクローン、ブラー、シェード、ワープ、ウォツシュなどから選択でさる。マルチレイヤーのグラフィックアニメーションや移動マット用のカットアウトアニメーション機能もサポート、スミア、エンボス(図2)などのイメージフィルターもあり、すべてアンチエイリアス処理される。


図2 レタッチモジュール

■スタビライザー/トラッカー(図3)

 ルミナンス値およびパターン認識による正確なモーションアナライズで、高精度のモーショントラッキングを可能にしている。サブピクセル単位でのマグニファイグラスにより、トラッキングポイントやリファレンスポイントを正確に設定。スケールやローテーションを含む自動追従が行えるため、DVEと組み合わせれば、イメージを調整・修正し、合成を背景になじませることができる。コーナーピンも可能だ。


図3 スタビライザー/トラッカーモジュール

■DVE合成

 最大4つのビデオレイヤーにアクセスし、高性能DVE機能を使うことができる。完全な3D空間での合成、8ライトソースによる光源やカメラコントロール、3Dテキストをサポートしている。各レイヤーごとにキーヤー、カラーコレクション、トラッキングおよびアクシスの調整を個々に行うことができる。

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ビデオアルファ1999年8月号