映像制作


 discreetのノンリニア編集ソフトedit*がVer.5.0にアップグレードされた。discreetはご存知のように、上はinferno*からflame*、Smoke*などハイエンド向けのデジタル合成/編集システムを提供している。しかし、これらハイエンドシステムがSGIのIRIXワークステーションをプラットフォームにしているのに対し、edit*はWindowsNTマシーンをプラットフォームにしており、ミッドレンジからハイエンドまでをターゲットとしている。discreetでは便宜上、edit*をnew mediaと位置付け、inferno*、flame*、Smoke*などをAdvanced systemと位置付けている。これは対象顧客層が異なることを意味し、それにより販売戦略も異なることになる。
 さて、new mediaと位置付けられる製品にはedit*のほか、3Dエフェクトソフトのeffect*、ペイントソフトのpaint*がある。edit*5.0では、これらのeffect*、paint*と連携した編集作業が可能となり、ハイエンドシステムに負けない高い水準の合成/編集が可能になった。
 今回、そのedit*5.0を試用してみたので、さっそくレポートすることにする。

■試用したシステムの紹介

 さて、今回はTARGA2000RTX+3D DVEボードを搭載したIntergraphのTDZ 2000GX1にedit*plus5.0を組み合わせて使用した(写真1)。また、映像専用のRAIDディスクとしてBIOSのUltra VXR−HT80シリーズ(写真2)を使用した。
 TDZ 2000GX 1は、CPUに550MHz PentiumIII Xeonを2個搭載したハイエンドマシーンで、3Dから2D合成などのCGやノンリニア編集に最適のマシーンだ。搭載されているOpen GLカードも、最新のIntense 3D Wildcat4105を初めWildcat4000、Wildcat3510などの高速GLボードを搭載したタイプがあり、特に3D CG制作には素晴らしい性能を発揮する。ただし、edit*5.0を使用する際はビデオボードにMatroxのDigiDesktopを使用しないとRGBモニター上でプレビュー画面を動画として確認できないため、今回はもともとTDZ2000GX 1に搭載されていたMillenniumG200を、DigiDesktopと入れ替えて使用した。ターンキーシステムの場合は最初からDigiDesktopが搭載されてくるようだ。
 BIOSのUltra VXR−HT80シリーズはソフトウェアRAIDを使用することで、低価格で高性能なRAIDディスクを実現している。搭載されているハードディスクのインターフェースはUltra L WideまたはUltra 2 Wideタイプがあるが、今回はUltra 2 Wideタイプで8つのHDドライブを搭載したモデルを使用した。ソフトウェアRAIDはWindowsNTに標輝搭載されたディスクアドミニストレーターを使用した。
 なお、RAIDの台数による転送速度の違いを見るためベンチマークを計測した(表1)。ベンチマークプログラムには、Diskdrive Benchmark on Win32 Ver.1.22
(塚本雄二氏作、http://www.inco.ne.jp/~tukada/)を使用した。また、手持ちのMatrox DigiSuite LEとショップフランドPC(ASUS2PB−DS)があっていたので、試験的にedit*plus5.0を組み合わせて使用してみた。このとき、ビデオカードにはMatrox DigiDesktopを使用した。
本来、動作保証は販売代理店に確奨されたPCシステムは使用することが条件とされているが、今回のシステムではなんら問題もなく使用することができた。


写真1 システムー式を組み上げたところ



写真2 BlOS UltraVXR−HT80シリーズ(上)と
仙er9「aPhTDZ2000GXl(下)


写真3 IntergraphTDZ2000GX1に、Pinnacle TARGA2000RTX+
3DDVEボードとMatroxのDigiDesktopを組み込んだところ。
edit*5.0は、ビデオボードにDigiDesktopが必須となる

表1 RAIDの台数による転送速度の違い

■edit*5.0の概要と製品構成

 edit*5.0はWindowsNTをベースにし、編集から合成まで行えるノンリニア編集ソフトである。編集レベルはオフラインからオンラインまで行え、EDLデータを使用して他の編集機器との連携もスムーズに行える。また、映像クオリティは使用するハードウェアによりロスレス(非圧縮)クオリティまで対応している。
 使用できる機能レベルで、edit*5.0およびedit*plus5.0の2種頚がラインナップされ、edit*plus5.0に3D DVEボードを使用することで、3D DVEもリアルタイムに行え、業務から放送レベルまでを対象とした製品といえる。上記のようにedit*には機能のレベルでedit*5.0とedit*plus5.0があり、edit*plus5.0のほうが上位機種となる。ちなみに、今回試用したのはedit*plus5.0のほうである。
 使用できるハードウェアには、Matrox DigiSuite/DigiSuite LE、Pinnacle TARGA2000DTX/RTX/SDXがある。なお、DigiSuiteはedit*plus5.0でのみ使用でき、リアルタイム3D DVEはedit*plus5.0にTARGA2000DTX/RTX/SDX+3D DVEボードを組み合わせた場合にのみ使用できる(表2)。
 またソフトウェアを、使用するハードウェアに最適化しているため、使用するハードウェアによりソフトの使用磯能が一部異なっているところがある。
 edit*5.0の販売杉葱は、discreetからはソフトウェアの販売になるが、実質的にはIntergraphのTDZ2000GX 1やIBMのIntelliStationなどの推奨PCと組み合わせたターンキーシステムが、販売代理店を通して販売されることになるだろう(図1)。


表2 対応ボードと価格(ソフトウェアのみの価格)

図1 ターンキーシステム構成例

■edit*5.0のインターフェースと操作性

 さて、edit*5.0のインターフェースは基本的には他のノンリニア編集システムと似ており、違和感なく操作できる(図2)。組み合わせるモニター数で、シングルモニター、デュアルモニターでのレイアウトも可能だ。
 画面上には素材を入れておくBin(ビン)ウィンドウがあり、これをTimeline(タイムライン)ウィンドウに並べて編集作業を行う。また、Bin(ビン)内の素材を確認するためのSVプレビューウィンドウやタイムライン上のProgramを確認するためのRVプレビューウィンドウが用意されている。これらのウィンドウにはIN点/OUT点、現在のポイント、デュレーションがタイムコードで常に示されているため、素材や編集点の確認がやりやすい。そのほか、オーディオミクシングのMXウィンドウやオーディオレベルのモニターウィンドウも開くことができる。
 そして、それぞれのウィンドウ左上には、主に使用する磯能をアイコンボタンとして配置しているため、メインメニューからの選択なしで一気に呼び出すことができる。一方、ウィンドウズ上で右マウスクリックすることで必要なメニューを呼び出すこともでき、操作性を向上させるためのさまざまな工夫がうかがえる。また、これらのウィンドウの位置(並び)を4パターン記憶でき、ボタンで瞬時に切り替えることができるので、これまた便利である。
 このように、操作性向上のための工夫は編集効率を高め、少なからず作品のクオリティのアップへつながるだろう。


図2 デュアルモニター表示したedit5.0のインターフエース
■edit*5.0の操作

●ビデオキャプチャ

 ビデオのキャプチャーウィンドウ(図3)はメニューのToolから呼び出す方法と、Binのツールバー上のVTRアイコンをクリックして呼び出す方法がある。この画面では、VTRをコントロールしながらIN点/OUT点を設定してキャプチャーする。Logを使用することでバッチキャプチャーも可能だ。また、Audioモニターも付いているので、キャプチャー時の録音レベルを確認できる。
 このほか、メニューからCapture from Programs(図5)やCapture from Bin(図6)を呼び出せば、プログラム(タイムライン)上の素材データやBin内の素材データをバッチデータとして呼び出せるので、オフラインからオンラインデータへの再キャプチャーなどを簡単に行うことができる。


図4 メニューからCapture from ProgramやCapture from Binを呼び出す


図5 Capture from programウィンドウ

図6 Capture from Binウィンドウ

図3 Captureウィンドウ

●豊富なデータフォーマット、EDLデータに対応

 edit*5.0は、AVIデータのほかQuickTime3伽こも対応し、QuickTimeでのインポート、エクスポートができるようになった。これによりTARGA RTXなどのQulckTimeアクセラレーションに対応したボードを使用した場合は、QuickTimeでのリアルタイム編集も可能となった。
 また、TGA、TIFFアニメーションファイルをインポートする際にαチャンネルを含むAVIファイルへ変換することができるため、編集効率を上げることができる。
 そして、特筆すべさは豊富なEDLデータ(図7)に対応していることだ。これらのEDLデータにはテープベースの編集システムを初め、Advance製品のfire*/smoke*EDLデータを読み書きできるため、ハイエンドマシーンとリンクが可能だ。


図7 豊富なEDLデータの入出力が可能
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ビデオアルファ1999年11月号