映像制作


カノープスDVRex-RT

 DVRex-RTは従来から人気の高かったシングルストリームのDVRex-M1にRT EngineなるPCIカードをコンビネーションさせることでデュアルストリームに対応させ、リアルタイムエフェクトを可能にしている。リアルタイム処理にはRT Engineのほかにパソコン本体のCPUパワーも利用している。したがって、完全なリアルタイムエフェクトを実現するにはCPUにデュアルPentiumIII500MHzが推奨されている。CPUパワーが足りない場合はエフェクトの一部にレンダリングが必要なものが出てくる。CPUパワーとリアルタイムの兼ね合いはカノープスのホームページでも公表されているが、今後はCPUパワーが大きくなる一方なので、マシーンも新たに購入するならあまり問題にはならないかもしれない。  また、DVRex-RTの編集にはカノープスオリジナルのRexEditのほか、同梱されるPremiere5.1でも使用でき る。Premiere5.1では、リアルタイムエフェクト以外はすべて問題なく使用できる。VTRからのキャプチャーやレコーディングもpremiereから制御できる。しかし、DVRex-RTのもつリアルタイム機能をフル活用するならRexEditを使用したほうがいいだろう。DVRex-RTとRex-Editによるリアルタイムエフェクトにはトランジションワイプ、アルファワイプトランジション、カラーコレクションのリアルタイム処理ができるほかに、RT2000やDV500では不可能だったフィルター系エフェクトのリアルタイム処理が可能となっている(DV500では一部できる)。  ワイプのベーシックパターンには任意のキーフレームを打てるので、より自由なトランジション効果の設定が可能になっている。あらかじめ5つのキーフレームパターンも用意されており、新しくパターンを保存することもできる。トランジション効果の中で、アルファマットをワイブに利用したアルファワイブトランジションも約80種類用意されており、任意のパターンをつくって利用することも可能だ。  フィルター系エフェクトにはモザイク、ノイズ、ブラー、高品位ブラー、エンボス、線画、モノトーン、モザイク、モーションブラー、シャープ、ソフトフォーカス、カラーコレクション、マージ、ブレンド、矩形/楕円領域をリアルタイム処理することができる。特に,ブラーや,モーションブラー,ソフトフォーカスを多用すれば非常に効果のある映像を生み出せるだろう。 また,カラーコレクションもリアルタイムで処理でさるので,正確な色合わせもやりやすくなった。もちろんこれらはすべてキーフレームにより制御ができる。  ところで,矩形/楕円領域というフィルターは矩形または楕円の枠内か枠外に前述のフィルター効果(モザイクやブラーなど)をかけることができ、大きさと位置をモーションパスとしてキーフレーム設定できる。 早い話、動くものにモザイクをかけたりすることが簡単にできるので、応用範囲は広がる。いままでこの価格帯でこのような機能をもったものはなかっただけに非常に重宝がられるだろう。  さて、DVRex-RT(RexEdit)のタイトル機能は非常に強力だ。日本語タイトルで重要な文字の表現として、ハードエッジ、ソフトエッジを初め、シャドー、ソフトシャドー、エンボス、グラデーション、透過といった多彩な表現が可能だ。また、タイトルの出し方や消え方などのタイトルエフェクトが35種類(カット、ディゾルブ、 プラーディゾルブ、ディゾルブスライド、ソフトワイプ、ソフトスライド、レーザー、スライド、ワイプなど)用意されている。このタイトルを同時に10タイトル重ねてリアルタイム処理することが可能で非常に強力だ。ただし、重ねるトラックが増えるとCPUパワーによりレンダリングが必要な場合も出てくる。まあ、そのあたりは仕方ないだろう。  DVRex-RTは現在いまだ3次元のリアルタイムエフェクト処理には対応していない。しかし、別売のオプションであるAGPグラフィックスカードDVXPLODE(¥5万9800)を使用することで、高速2D、3Dエフェクトを利用できる(レンダリング時間は3秒のエフェクトに約25秒)。エフェクトの内容はアニメーションと組み合わさった非常にユニークなもの、遊びごころのあるもの、オーソドックスな波紋やページめくりなど約400種類以上のプリセットエフェクトがそろっている。使い方によっては、映像表現の幅をもたせることができるだろう。値段を考えるとあまりあるものがあるが、光の反射とか影がもう少し奇麗に出るともっとうれしい。また、DVXPLODEは、RexEditのほかPremiere、MediaStudio Proで使用できるので、他のノンリニア編集マシーンでAGPグラフィックスカードに依存しないものがあれば、使用できると思う。



写真3 カノープスDVRex-RT

図11 DVRex-RTではワイプのベーシックパターンには
任意のキーフレームを打つことができる

図12 アルファマットをワイプに利用したアルファワイプトランジションも約80種類用意されている

図13 DVRex-RTのフィルター系エフェクトの一部

図14 矩形/楕円領域フィルターの設定画面(左)とその効果(右)

図15 RexEditのタイトル機能は非常に強力で、各種多彩な表現が可能だ

図16 オプションのDVXPLODEを用いることで3Dエフェクトにも対応する。その数は約400種類以上

まとめ

 さて、DVRex-RTとRexEditはビデオ編集を念頭に入れてつくられたシステムだけあって、ビデオ編集という立場からいうとRT2000やDV500より一歩進んでいるといえるだろう。特に日本製のため、日本のユーザーの声を反映しながらつくり上げてきたこと、優れた ビデオ編集作業を提供してくれる要因だろう。また、DV機器などのコントロールも問題なく使用できるのは、映像制作者に安心感を与えてくれる。これはDVRex-M1から引き継いできた技術があるからだろう。 また、問題が起こってもすぐに対処してくれるのもありがたい。しかしその反、操作性のよいRexEditはインターフェースの好き嫌いはあるかもしれない。  一方、RT2000やDV500も一般的なDV編集作業ではけっして引けはとらないだろう。価格はDVRex-RTの半分以下で手に入る。そして、MPEG2に対応しているのでDVD-Videoの制作までできてしまう。そう考えると非常にお得なパッケージである。  これらDV御三家からどれを選ぶかは、どういう目的で使用するか、自分がほしいエフェクトはどんなものか、そのクオリティはどの程度か、3Dのレンダリングタイム(3秒のエフェクトに約25秒)を遅いと感じるか速いと感じるか、タイトルはどの程度入れるか、現時点でVTRディバイスコントロールの正確さはどれくらい必要かなどが決めてになると思う。つまり自分なりにプライオリティを決めて選択するのがよいだろう。

ビデオアルファ2000年5月号