映像制作


 

■Henry(QUANTEL)

 クォンテルといえば、映像合成の分野では以前から名声を築いてきた。古くは、ペイント合成システムであるPaint Boxに始まり、そして一時は合成の代名詞とまでなったのがHarryである。その後、Paint BoxはHarrietに進化し、現在、HAL Ver.6やPaintBox F.A.Tに進化した。またHarryはHenryとなり、その後その一部を取り出したEditBoxも登場した。
  そして、1998年のNABではHenry V8(写真1)、Henry Infinityが発表となった。これらクォンテルの製品はすべてビデオでの使用を目的としているため、フィルム解像度での合成はできないが、近年登場したDominoはフィルム解像度での特殊効果合成を得意とし、ペイント機能も充実している。日本では、先に映画化された『北京原人』で使用されたのは有名な話だ。
 ここでは、Henryにスポットを当てて見てみよう。
写真1 Henry V8
Henryは、特殊効果と編集機能を完全に統合化したビデオ専用のポストプロダクションシステムで、専用のハードウェアとソフトウェアの組み合わせで製品を成している。その包括的な機能集中の中には、キー合成、カラーコレクション、レンズ効果、追跡機能、スタビライザー機能、3次元効果、ペイント、光源、グラフィックス、自動編集、モーションエフェクト、VTR制御、クリップ管理機能、マルチトラックオーディオ機能等が含まれる。
 なかでも、カスタマイズできるカスタムブラシを使ったペイント(図1)やブレンダーを用いたDVEへのリアルタイムブラー、そしてオートロックフォロー(ALF)による追跡機能(モーションコントロール、図2)、そして強力なカラーコレクションがあり、さらにこれらをリアルタイムにあるいは高速に処理することが可能である。
 編集から合成まで高速に処理できるのは、本体のCPU処理ではなく本体に取り付けられた専用のハードウェアによるものが大きい。これにより、複数のプロセス処理や同時処理、真のランダムアクセスが可能となっている。そのため、バージョンアップも本体のハードウェアではなく、ソフトウェアにより行うことができる。
 また、クオンテルの製品全般にもいえることであるが、Henryはすべての制御を最小限のペンの移動とメニューの選択で可能にするなど、人間工学的にかなり研究されたインターフェースをもっている。このインターフェースによって、アーティスティックに編集できることが最大の売りかもしれない。

図1 カスタマイズできるカスタムブラシ



図2 ALF(Auto Lock Follow)の処理前(上)と処理後(下)

■Avid Media Illusion

 Avld Media Illusionは、ノンリニア編集機で有名なAvidから発売された編集・合成・ペイントツールだ。特長は、インタラクティブなプロセスツリーをもったインターフェースにある。そして、そこでは合成、キーイング、エフェクト、トラッキング&スタビライゼーション、カラーコレクション、ペイントなど、クリエーターの想像力をかき立てる機能を数多く備えている。
 ハードウェアとしては、SGI社製のグラフィックワークステーションすべてに対応している。そのため、経済性、パフォーマンス、用途に応じたハードウェア選択が可能となっている。

 解像度はNTSC、HDTV、フィルムなど幅広いレゾリユーションに対応し、ファイルフォーマットも30種頚以上に対応している。日本の映画では『ガメラ2』(大映)などで使用されている。
 つぎにいくつかの機能を簡単に述べよう。
 Media Illusionには、60以上ものエフェクトブラシを備えたペイントツールで高速ロトスコーピングツールとして定評のあるMatadorのペイント機能がすべて搭載されている。ユニークな機能としては、1つのブラシで各アクションをいくつも組み合わせたり、ペイントメニューから各アクションをいくつも組み合わせたり、各アクションのパラメーターを自由に変更できる。また、プログラマブルユーザーブラシもサポートしている。
写真2 AvidMediaIllusionのシステム
 そのほか、視覚的にツリーを組んでいくことで、複雑な合成処理も容易に行うことができるインターフェース、プロセスツリーを採用しており(図3)、どの処理過程からもレンダリングなしに結果を見ることができる。確認・修正は大変簡単に行える。またツリーに組めるプロセスも数に制限がないし、一度作成したツリーはコピー、セーブ等が可能なので、効率的な作業を行うことができる。プロセスツリーはIllusionのインターフェースの大きな鍵を握っているともいえる。
 エフェクト・DVEとして、150以上ものSMPTEワイプパターンや稲妻・炎・パーティクルなどの物理シミュレーション的なフィルターなど、優れたビルトインフィルターが多数装備されている。3Dカメラ、ライト、ディスプレースメントマッピング等の3DDVEの機能もサポートしており、Film to VideoやVideo to Filmのフレームレート変更などの機能もある。

図3 視覚的で操作が容易なインターフェ−ス、プロセスツリー
  [次のページへ]
CGアニメーションガイドブック