映像制作


■オフライン用

 さて、ノンリニアシステムを映像用のオフラインシステムとして使用する場合の注意点および最低条件を考えてみよう。
1)フルモーション(フルフィールド)の入出力が可能か?
2)SMPTEのタイムコードをサポートしているか?
3)EDLの編集データを出力できるか?
4)将来のオンラインシステムへのアップグレードは可能か?
 映像用のオフライン機として使用する場合、上記1)〜3)はかならずクリアしておかなければならない。そして将来に向けて、オンラインの画質での編集ができるようなアップグレードが可能なら、なおさらいいだろう。
 ノンリニアシステムを映像用のオフライン機としてのみ使用するには決して高価なシステムを購入する必要はない。たとえば先に説明したマルチメディア向けのシステムで上記1)〜3)をクリアしていれば、オフライン機として充分に機能する。ということは1/2のオフライン編集機の導入価格と比べても、同額程度でそろえることができるだろう。
 先に紹介したBUGのデスクスタジオプロなら最も安く組むことができるのだ。余裕をみてもう少し上の機種を選べば、高画質での使用もできるだろう。これらの機種に編集ソフトを組み合わせるとEDLデータを吐き出せるので、本編集を短時間で行うことができる。もちろんキャプションのシート出しも不要だ。
 ただし、ここで注意しなければならないことは、EDLデータが出せるからすぐオンラインに利用できるかといったらそうではない。オンライン編集室との互換を調べておく必要がある。また、ポストプロの編集者がEDLデータの編集に慣れていれば、事前に注意事項を聞いておくことも必要だろう。
 ビデオ編集とノンリニア編集での違いに、レンダリングというものが存在する。画像編集ソフトは画像編集の際、ワイプやディゾルプなどのエフェクト処理をコンピュータで計算させ処理している。これをレンダリングというが、この処理はコンピュータのCPUの能力いかんでかかる時間が違ってくるのだ。オフラインでカット編集しか使用しない場合は関係ないが、ワイプ、ディゾルブなどを使用する場合、この処理にかかる時間が重要なのだ。ビデオ編集ではワイプ、ディゾルブはリアルタイムなので、ビデオ系の人にとってはこの処理時間を待ってられないと感じる人も多いだろう。
 その中で最近のボードにはDSPを搭載させ、あるエフェクトに限って高速処理が行えるようになったものもある。タルガ2000などがそれであるが、筆者が知っている中では、メディア100(ただし、オプションが必要)のビンセントが非常に高速だった(表2)。
 また、システム化された製品にはリアルタイムエフェクトを搭載したモデルもある。これらは、エフェクトによる待ち時間は生じないので、快適である。ただし、その分値段も張るのだが。このシステムにはニューテック(NewTek)のフライヤー(FLYER)や松下のWJ−MX1000、アイミックス(ImMIX)社のビデオキューブ(VideoCube)やターボキューブ(TurboCube)、またアビッド・メディアコンポーザー(オプションが必要)などがある。



表2 3秒のエフェクトをかけたときの高速エフェクトと標準エフェクトの速度比較


写真9 松下・AVワークステーションWJ-MX1000


写真10 アイミックス・ターボキューブ

■オンライン用

 ここでいうオンラインをビデオパッケージの完パケ用として見た場合のノンリニアシステムの必要条件を見てみよう。
1)最終完パケの画質を満足させるべき画質クオリティの確保
2)SMPTEタイムコードのサポート
3)フルサイズ(640×480、768×486)、フルモーション(フルフィールド)の確保
4)波形、セットアップレベルなどの信号管理ができるか?

 オンライン編集で最も重要になってくるのは、画質である。この画質のチェックは自分の目で見たほうが確実だ。特に高価なシステムを組む場合は、販売店に見慣れたビデオ素材(ベータカム以上のもの)を持参し、デジタイズとビデオ出力をやってもらい画質のチェックをしたほうがいいだろう。

 この画質の目安として、カタログ上ではビデオ信号の圧縮率で判断することができる。通常オンラインで使用する場合、1/8〜1/4以上の低圧縮をサポートしていなければならないだろう。また、入出力には当然コンポーネントの入出力を装備したものが良い。画質は確実に良くなるだろう。したがって、松下WJ−MX1000、ビデオビジョンテレキャスト、タルガ2000プロ、メディア100、メディアコンポーザー、ターボキュープなどがこの部類に入る。
 ここでの見極めとして、CD-ROMなどのマルチメディアタイトルでの使用も考えるなら、ビデオビジョンテレキャストやタルガ2000プロなどが適しているであろうし、NTSC映像信号の処理のみで考えるなら、メディア100の画質や操作性には一目置くものがある。また、メディアコンポーザーにおいてはCM制作時のオフラインに多く使用される現状があり、操作性においても安心できるだろう。
表3 内部処理をRGBで処理したものとYUVで処理した場合の転送レートと圧縮率の違い(フルサイズ、フルフレームのとき)
 ところで、最近ではITU-R(旧CCIR)601、つまりD-1フォーマットと同じ解像度(720×486)をサポートしたものが増えてきたが、解像度と画質は別ものだからくれぐれも混同しないように。ただ、概してITU−R601をサポートしたものは画質がいいものが多いことも事実だ。
 ポストプロで放送レベルのオンラインシステムを組む場合は、非圧縮のビデオ入出力ボードを搭載したマシーンが必要不可欠になるであろう。これにはアビッドのメディアスペクトラム(Media Spectrum)やディスクリートロジック・ファイアー(DISCREETLOGIC FIRE)などがある。
 また、オンライン用のシステムを組む場合は、信号の管理ができたほうがいい。特にセットアップレベルの設定は必要だ。アメリカの場合7.5IRE、日本の場合0.0IREが用いられることが多いので、0.0IREにセットできることが必要になるだろう。または波形モニターも別途用意してもいいが、メディア100などは波形モニターやベクトルスコープをオプション搭載できるので、すごく便利である。
 オンラインとなると音声も重要だ。入力端子のしっかりしたものを選ぼう。キャノン端子を装備したものや、デジタル人出力を備えていれば文句ない。そして、ソフト上で音声ミックスもできたほうがいいので、かならずチェックしよう。汎用の映像編集ソフトでは音声のミクシングはあまり良くないのが現状だ。その点システム化されたノンリニアシステムの音声ミクシングは若干良いようだ。それでも映像に比べてまだまだの感もある。その辺のところもぜひチェックしてもらいたい。
 既存のビデオシステムに組み込むなら、ゲンロックを装備したものを選ぶと良い。そして、スイッチャーからGPI信号でノンリニアのスタートができれば、使用範囲がずっと広がるだろう。オンラインをうたったシステムはたいていこれらは装備しているが、念のためにチェックをしよう。

その他の導入時の注意点

 導入時に考えなければならない最も重要なことに、導入後のアフターサービスがある。特に高価なものを購入するにあたっては、若干の値段の差があったとしても、アフターサービスのしっかりした販売店から購入されることをお薦めしたい。そして、さらにつけ加えるならば、知識をもった販売店にしなければならない。愛想はいいが知識のない販売店はやめたほうがいい。販売店もこれからは勉強しないと買ってもらえない時代がくることを肝に銘ずるべきだ。
 しかし、もっと悪いのは、勉強不足のメーカーや国内代理店があることだ。メーカーや国内代理店はもっと自分の製品の本質をとらえて勉強する必要がある。海外製品を輸入して売りっ放しではなんともいただけない。
 筆者の場合、こんなことがあった。
 ある製品で問い合わせると、わからずじまいで電話を回され、いき着く先はかならずある担当部長なのだ。結局本当にわかっているのはこの大会社にしてたった1人ということになる。なんとも情けない事実だ。おまけにこの会社(メーカー)のオンライン用とうたった製品のテクニカルサービスは販売店まかせなのだ。だから、もしテクニカル力のない販売店で買ったとしたら、泣くことになる。たとえばこんな風だ。
 わからないことがあってメーカーに電話すると、委託されたテクニカルサービス会社に電話するようにいわれる。それでテクニカルサービス会社に電話すると、その製品はうちの契約外だから販売店に聞いてくれといわれる。販売店はきっとわからないだろうと思ってはいるが、しかたなく販売店に電話すると愛想良く折り返し電話するといわれる。・・・が、返事はなしのつぶて。それもそのはず、販売店では例の担当部長に電話しているのだが、この担当部長は出張が多くて捕まらないのだ。こんな会社(メーカー)は買収でもされるのが落ちなのだ。
 一つの例で示したが、こんな例は意外と多いのも事実なのだ。


  新しい製品がどんどん登場してきているノンリニアシステムはまだまだ過渡期だともいえる。しかし、すでに使える製品が多数存在しているのも事実だ。したがって、導入時期をいつにするかが大きなかぎを握ると考えられる。慎重に考え、揖得勘定を行ってもらいたい。
 ところで、筆者はインターネットにホームページをもっている。できればここで、ノンリニアを含めたデジタルビデオの近況を報告できればと考えている。興味のある人はhttp://www.b-artist.comにアクセスしてほしい。
  [DTVシステム4機種の画質を見る]
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