映像制作


編集ソフトによる操作性の違いを知る

 さて、先にはハードウェアの見地からお話ししたが、実はノンリニア編集の操作性は編集ソフトによるところが非常に大きい。インターフェースの操作性を初め、ハードウェアのスペックを十二分に使いきることが必要だ。
 編集ソフトでもっともポピュラーなものとしてはAdobePremiereが有名だろう。ほとんどのビデオ人出力ボードがこれに対応しており、バンドル販売されているものも多い。
 Premiereは編集から合成まで一通りこなすツールとしてはたいへんよくできている。編集作業においては、一度使えば操作もさほどむずかしくはないだろう。合成作業もレイヤーを重ねていけばよいので、理解しやすいソフトだといえる。強いていえば、ビデオ編集に特化したというよりも合成を行いながらビデオ編集も行えるようにしたといったソフトウェアといえる。そして、ノーマルの状態ではテロップ系が若干弱く、テキストのエッジ処理などができないので、サードパーティ製のテロッププラグインが必要だろう。ビデオ入出力ボードにバンドルされたPremiereにはこれらのプラグインが事前に同梱されているものも多い。
 そのほかトランジション効果やエフェクトフィルターなども同梱されているので、本格的にノンリニア編集を行うにはどのようなものがバンドルされているかたしかめる必要がある。特にリアルタイムエフェクトに対応したハードウェアを使用する場合、どのような機能がリアルタイムで使用できるかも確認する必要があるだろう。これらの違いが作成したい映像制作を左右する場合があるので、充分と吟味しよう。
 このほかの編集ソフトには、DigitalOrigin EditDV、カノープスRexEdit、in-sync Speed Razor、Apple Final Cut ProやIncite、discreet edit、Media100i、iFinishなどがあり、Premiereとは比べがたい操作性をもっている。
 たとえば、EditDVはAvid MediaComposerに相通じる繰作性をもっている。ただし、基本的には自社のDVボード専用となるため、リアルタイムエフェクトには対応していない。
RexEditはDVRex-RTに付属する専用ソフトで、Premiereとは操作性は異なっているが、ビデオ編集を考慮したソフトのため慣れると非常に使いやすい。自社ボードの性能をフルに発揮できるソフトになっている。Speed Razorは各種ビデオ入出力ボードに対応したバージョンが存在し、変わりどころではVldeoToaster NTにもバンドルされている。NT用の編集ソフトとしては老舗であるが、最近Windows2000に対応したSpeed Razor2000にアップグレードし、さらに磨きがかかってきた。Inciteやeditはハイエンドのシステム構築用の編集ソフトとして、完成度も非常に高い。
 editはdiscreetの3ds Maxやエフェクトソフトcombustionとの連携により同社ハイエンドソフトに近い機能を身につけることができる。
 Avid XpressはMedia Composerの廉価版だが、その血筋を引きながら操作性と安心感が売り物だ。Media100i(Mac用)やiFinish(Windows用)は従来の定評どおりノンリニア編集ではずば抜けた定評をもっている。これはシステムの安定性、ソフトウェアの使いやすさはもとより、日本での販売代理店が築さ上げてさたものでもあるだろう。
 Final Cut ProはAppleのMac用の編集ソフトでありDVシステムに使用されるのが主だが、TARGA1000、TARGA2000シリーズでも使用可能となっている。このほか、Fuseや非圧縮ボードIGNITERも対応している。
 さて、実際の選択にあたっては、自分に合ったソフトを選び使いこなすしかないだろう。ただし、ハードウェアには通常編集ソフトがバンドルされているので、ハードウェアとソフトウェアの両方の組み合わせを吟味したうえで製品を選択することになるだろう。


Adobe Premiere


in-sync Speed Razor

話題の合成ソフト(システム)はどれか

 さて、合成ソフトといえば、やはり定番はAdobeAfterEffectsであろう。バージョン4.1からはRAMプレビューなどが搭載され、リアルタイムプレビューが可能になりさらに使いやすくなった。また、多くのビデオ入出力ボードでプレビュー映像をNTSC出力で確認できるようになった。色味の調整や位置確認などをNTSC上で確認できるようになったのは大きなメリットだろう。
 このほか動画映像の合成には最近Commotionの人気が高い。Commotionは合成のほか、ペイントソフトも搭載しており、かなり幅広いエフェクト処理を行うことができる。また強力なリアルタイムRAMプレビユーも大さな魅力のひとつだ。PinnacleSystemsに買収されたおかげで同社の製品にはバンドルされてくるようになった。特にDVに特化したCommotion DVの登場で購入しやすくなった。
 このほか、NewTekのAuraやeyeonのDigital Fusionも非常に定評のあるソフトウェアである。AuraはAmiga時代のTVPaintが原形らしいが、機能面、操作面ではさらに進化している。ペイント機能とエフェクト機能を併せもち、ペイント機能は独自の味のある画風をかもしだす。VideoToasterNTとの併用で操作感はさらに向上する。
 Digital Fusionはハリウッド映画でも使用されている経緯をもっており、画像処理やエフェクト効果の質の良さがあげられる。特に64ビット版は色の深度が深いため合成後の画質劣化は最小限に抑えられる。また、discreet flameやflintなどのエフェクトプラグインで有名な5DのMonsterプラグインを使えるため、ハイグレードなエフェクトも可能だ。このプラグイン使いたさに購入する人も多い。
 その中でも筆者の一押しソフトはdiscreetのcombustionだ。このソフトは、以前からあった同社のeffects、painを統合しさらにflameやflintの血筋を引くソフトウェアで、AfterEffectsの2倍くらいの価格でありながら、かなりのハイエンド使用にも耐えられるソフトだ。また同社の映像編集ソフトeditや3ds Maxとコンビネーションでさらに可能性が増す設計になっている。使っているうちに味がでるソフトといえそうだ。


Adobe AfterEffects


discreet combustion

何を選ぶか?

 さて、ノンリニア編集システムのハードウェア、編集ソフトウェア、合成ソフトについて簡単ながらお話ししたが、今後は非圧縮やHDの高画質ハイエンドマシーンへの進化とともに、インターネット時代を見据えて、小さいデータで高画質の映像を扱うストリーミングビデオに対応した製品もぞくぞく登場してくるだろう。Avid、Media100そしてMatroxなどはインターネットを使用して遠隔地同士でオフラインチェックを行いながら、編集室ではハイエンド高画質のオンライン編集を行っていくという両者の複合的な応用化を進めている。今後はユーザーがますます目的意識をはっきりして製品選びを行う必要が出てくるだろう。

ビデオシステムと機材2000-2001