■強化されたオーディオ機能

 従来,Premiereはオーディオ面が弱く何かと指摘されていたが,今回大幅に強化された。まず,14個のオーディオプラグインフィルタ(図7)が追加され,オーディオの細かな調整ができるようになった。これらは,トランジション効果と同様に,複数のキーフレームでの設定が可能なため,より本格的なMA(マルチオーディオ)作業が可能となった。
 サンプリング周波数については,32KHzと48KHzの両オーディオレートを完全にサポート(図8)したことで,DVビデオ編集に完全に対応した。また,高いサンプリング周波数を2KHz,3KHzへダウンサンプリングすることで高品質,低データレートの音声ファイルを作成することができるようになった。これは,音声をWeb上で使用する場合に有効だ。
 従来までは,映像と音声のずれが生じる場合があったが,任意のタイムベース(NTSCの場合毎秒29.97フレーム,フィルムの城合毎秒24フレーム)でオーディオとビデオの精密な同期をとるコードベースを備えたことで,正確なリップシンクが可能となった。これはPremiereの信頼性を高めている。


図7 14個の強力なオーディオプラグインフィルタが追加去れた(上)
 下の画面はCompressor/Expanderを実行したところ


図8 さまぎまなサンプリング周波数に対応した

■テキストロール/クロールに対応したタイトリング

 タイトリング機能でも,テキストロール(スクリーン上で垂直に移動)とテキストクロール(スクリーン上で水平に移動)が可能になった(図9)。従来はテキストロールとテキストクロールはモーション設定で定義していたが,太いタイトルのロールやクロールは1ファイルではできなかったため,一種のコツが必要だった(いくつかのファイルを作って重ねていかなければならなかった)。これが,一つの設定でできるようになったことは喜ばしいことだ。
 日本語はアルファベットと違い文字が細かいので,ビデオ映像では小さいテキストに対しては縁取り(エッジ)がよく使用される。なかでもよく使用されるのは白の縁取りだ。残念ながら,今回のPremiereでもまだ縁取り表示はできないようだ(図10)。縁取りを行うために,Photoshopで素材を作らなければならないのかと思うとうんざりしてくる。この辺のところは日本のAdobe関係者は理解しているのだろうか?非常に残念だ。サードパーティのテキストプラグインを使用すれば問題は解決するが・・・それでよいのだろうか?。


図9 テキストロールとテキストクロールにも対応

図10 タイトリングでテキストに縁取り(エッジ)ができないのが残念だ

■オフラインビデオ編集での信頼性が増す

 Premiere5.0にはまだまだ,たくさんの新機能がある。中でもEDL出力の強化は喜ばしい(図11)。データフォーマットにSony BVE5000,BVE9000,BVE9100が追加されたことは当然としても,最適化したEDLをエキスポートできるようになり,オフラインビデオ編集機としての信頼性を増したようだ。この辺のところは,まだ検証できていないが,今後Premiere5.0でのオフラインビデオ編集が益々盛んになることが予想される。
 Premiere5.0は独自方式のMedia AbstractionLayer(MAL)を採用することで,リアルタイム効果のサポートが約束された。現在,Premiere5.0上でリアルタイムエフェクトを可能にするハードウエアとしては,PinacleのReelTime,MatroxのDigiSuite,TruevisionのTARGA2000RTなどが予定されている。
 マルチメディアタイトル作成の使用でも,いくつかうれしいことがある。
MPEGデコーディングをサポートし,Webで配信するためのアニメーションGIFファイルを出力できるようになった。Real Video Streaming Formatでの保存も可能だ。
 最後になったが,Mac,Windows間でプロジェクトファイル,タイトル,モーショングラフィックス,フィルター,バッテリストライプラリなどは完全に互換になった。このことで,Mac,Windowsを越えた,制作環境の柔軟性に対応できることは喜ばしい。
 今回Premiere5.0を使用して思ったことはPremiere4.2に比べてビデオ編集での使用感がかなり改善されたことだ。
これは非常に好感を持つことができた。ただし,今回使用したソフトは英語版のべ一夕版の英語収であり,マニュアルもなかったので,一部製品版と異なった表記があるかもしれないことをお断りしておきたい。製品版出荷時には筆者が連載中の『Digital Video Wonderland』でさらに詳しく,紹介したい。



図11 EDL出力機能が強化された

日経CG1998年6月号
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