●Power Mac G4(500MHz)

問い合わせ●アップルコンピュータ(03)5454-0700
【URL】www.apple.co.jp
価格●42万8000円〔本体のみ)CPU●Power PC500MHz
メモリー●256Mバイト
ハードディスク●27Gバイト


図9●Final Cut Proの画面
使い勝手がよく,好感が持てるインタフェースだ。

図11●Final Cut Proのエフェクト
図10●3秒間のトランジション効果の合成時間を計測
Final Cut ProとPremiereで同じような効果のあるプラグインを10種類選び,Aトラックの映像からBトラックの映像に変化するトランジション効果のレンダリング時間を計測した。誤差を小さくするためトランジション効果をかける時間は通常のビデオ編集時よりも,少し長めの3秒間にした。
トランジション部分をPremiereがレンダリング開始し,終了するまでをストップウォッチを使って計測した。
 浮動小数点演算を高速化する「VelocityEngine」を搭載したPower Mac G4(500MHz)は,アップルコンピュータが公表している資料によると,PentiumIII800MHzの2倍以上の処理速度があるとしている。いままでのプロセッサが32ビットまたは64ビット単位でデータ処理をしていたのに対し,PowerPC G4に搭載されているVelocityEngineは128ビット単位で処理しているからだ。32ビットの浮動小数点演算も一度で4〜8つ並列で処理できる。
 このためVelocity Engine搭載のPowerPC G4は,ビデオ,音声,グラフィックアプリケーションなどの処理に非常に適していると言える。もちろんG4本体にはFireWireポートが3基(1基は内部)用意されている。
 ところで,このVelocity Engineによるアクセラレーションの恩恵を受けるにはVelocity Engine対応のソフトが必要だ。現在ではPhotoshop5.5やAfter Effects4.1など著名なソフトが対応してきているが,アップル製のビデオ編集ソフト「Final Cut Pro1.2」(図9)もVelocity Engineに対応している。今回Power Mac G4とFinal Cut Pro1.2を組み合わせたDVノンリニア編集システムの実力を探った。
 まず,映像編集の際のトランジション効果にかかる処理(レンダリング)速度をテストした(図10)。通常のビデオ編集時のトランジション効果の長さは約1秒くらいが普通だが,今回は3秒間のエフェクトを実行してみた。結果は,大体のエフェクトが20〜30秒台で終わっている。一昔前のCPUだと1秒のエフェクトで40〜50秒,アクセラレーションボードを搭載した業務機レベルで1秒のエフェクトが8〜15秒かかっていたことを考えると,いかにCPUの処理能力が高いかが分かる。
 ノンリニア編集システムの善し悪しは処理スピードのほかにソフトの使いやすさも影響する。Final Cut Proはもともと米Macromediaがハイエンド向けのビデオ編集ソフトとして開発しきた経緯があり,ビデオ編集ソフトとして非常によくできている。After Effects的な考え方を取り入れ,合成からビデオ編集までこなせてしまうソフトに仕上がっている。エフェクトにはAfter Ef-fectsのサードパーティ製プラグインも使えるので,かなり高度な合成にもチャレンジできる(図11)。FireWire以外に業務用機器などのデバイスコントローラにも対応しているので安心できる。ただ一つ欠点といえば,日本語の縁取りができないなど,タイトル(テロップ)系が貧弱なことだ。これはPremiereにも共通しているが,海外で開発されているためあまり重要視されていないのだろう。今後この辺が強化されれば,MacとFinal Cut Proを使ったDV編集が当たり前になる日が近いかもしれない。ただし,アップルがサードパーティの参入をどこまで許すのか不透明だ。将来さらに高度な作業を目指す人にとって,若干の不安感が残るかもしれない。

●VAIO PCV-R72(PentiumIII 750MHz)

問い合わせ●ソニー
(03)5454-0700
【URL】www.vaio.sony.co.jp
価格●オープン価格(本体35万円程度)
CPU●Pentiumlll750MHz
メモリー●128Mバイト
ハードディスク●40Gバイト

 WindowsのAVマシンといえばソニーのVAIOシリーズということになるだろう。
 VAIOシリーズは早くからi.LINK(FireWireと同意)を搭載し,DV編集機能を搭載したマシンとしての位置付けがなされてきた。今回テストしたVAIO PCV-R72はPentiumlll(750MHz)のCPUを搭載した最上位機種にあたる。
 MPEGエンコード/デコードのできる拡張ボードも標準で搭載されている。これにより,DVフォーマットでのDV編集のほか,MPEG1,MPEG2でのリアルタイム録画・再生が可能となっている。この拡張ボードにはTVチューナーも搭載されているので,TV番組のMPEG2録画も行える。
 ところで,最近のメーカー製Windowsマシンには異常に多くのアプリケーションソフトがプリインストールされる傾向にある。このVAIOにもインターネット系から,ビジネスソフト,画像,映像のソフトまで,たくさんのアプリケーションがプリインストールされている。大容量ハードディスクが安価になり,初心者へのサービスということもあるのだろうが,必要ないソフトがはじめからプリインストールされていると非常にわずらわしい場合も少なくない。1台目のパソコンならまだよいのだろうが,2台目や映像編集専用に買ったパソコンの場合はそんなにたくさんのソフトは必要ないのだ。
 本来,映像のキャプチャカードなどを使用する場合は,システムの安定性から見ても,必要なものだけをインストールして使ったほうがいい。インターネットの接続プロバイダのスターターなどがたくさんインストールされているのは不快でたまらない。アンインストールの手間はかかるし,Windowsの場合アンインストールが完全にできる保証もない。メーカーもこの辺を少し考えてもらいたい。
 もしも,ソニーが想定しているVAIOのユーザーを,初心者から中級者程度のユーザー層に絞っているのだとすれば,納得せざるを得ない。なんと言っても,豊富な付属ソフトは,初心者にとっては至れり尽くせりの環境になるはずだからだ。
 本機の特徹はDV入出力によるDV編集のほか,アナログ入力によるMPEG1,MPEG2編集ができるところだ。TVチューナーも内蔵されているのでテレビ番組の録画編集も簡単にこなせる。作成した映像はDV機器を使ってDVテープに記録したり,内蔵のCD-RにMPEG2で記録したり,MPEG1でビデオCDを作成したりできる。初心者でもとっつきやすいオールマイティな製品だ。しかし,使用する目的別に,起動するソフトを細かく分けているため,逆に分かりづらいという感じも受けた。
 さて,本題のDV編集の方法だが,一般的な方法としては付属ソフトの「DVgate Motion」(図12)を使ってムービーの取込みを行い,「DVgate Assemble」(図13)でカット編集(映像の切り貼り)を行う。編集が終われば,再びDV-gate Motionを使ってテープやCDに書き出す。
 DVgateAssembleではカット編集しかできないので,もう少し高度な編集を行うには同梱されているPremiere5.1Jを使うことになる。
VAIOに付属するPremiere5.1は市販されているものと同じものなので,そのままでもかなりのノンリニアビデオ編集をすることはできるが,3次元エフェクト特殊効果などを使ってみたくなっ
たら,サードパーティー製のプラグインソフトを購入するとよいだろう。Power Mac G4と同様に,VAIO上でもトランジション効果の速度を計測してみた(図10)。ただし,ソフトウエアはPremiereを使用している。G4に負けはしたが,レンダリング時間は結構速い。
 今後望むこととしては,余分なソフトが入っていない,拡張性のある上級者向けマシンの登場だ。ハイエンド映像制作者をターゲットにしたマシンをぜひ開発してほしい気がする。また,OSがWindows98だけなので,Windows2000モデルを切望する。

図12●DVgate Motionの画面
DV映像の取り込みをこのソフトで処理する。


図13●DVgate Assembleの画面このソフト上で,カット編集する。
日経CG2000年4月号
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