|
●トランジションやロトスコーピング合成など動画関連に使える機能も
このほかテクスチャー機能では,合成する画像をペインティングの要領で貼りつけることができる。これもアニメーションできるので,ペイントした部分が別の画像に変わってゆくような,トランジション効果として使用できる(図7)。
キーイング*3では,タロマキー,ルマキーを使った合成が可能だ。たとえばクロマキーの場合,「インクルード」タブで抜きたいブルーをピックアップし(図8上),キーの追加適用を行えばよい。微調整するには,
クロマタブでキーの範囲や滅少範囲を上下させて再適用する(図8下)。
Satoriの持ち味はロトスコーピング機能(図9)にある。ロトスコーピングは簡単で,使用した連番ファイルやAVIファイルを読み込んでしまえば,動画も静止画と同じ要領でペイント・エフェクト・合成・色調補正などができる。フレームの制御はアニメーションパレットで行う。
*3 キーイングとは,マスキングと並ぷ画像合成法のひとつで,クロマキー(特定の色信号を抜きとる)やルマキー(特定の輝度信号を抜き取る)などがある。
|
図7●テクスチャ機能を使ったトランジションの例トマトの画像の上に,セロリの画像をペイントしている。Photoshopのスタンプ機能に近い。
|
|
図8●キーイング
「インクルード」タブで選択した範囲の色情報がキー情報になる(左)。キーの色範囲の調整は,クロマタブ(下)で行う。
|
図9●ロトスコーピングバック画像にアニメーションCGを取り込み合成したところ。
|
●プラグインを通してPhotoshopとの連携や,機能強化も
ジオメトリ機能(図10)では円や四角形,多角形,テキストなどを描くことができる。
線にはベジェ曲線も使えるので,なめらかな曲線を使った描画もできる。そしてこの範囲に効果を与えたり,影をつけたりすることが可能なほか,別の画像をマッピングすることもできる。
標準フィルタ(ティント,明るく,暗く,プラー,エンボス,シェード,シャープネス,回転)などもここで使用できる(図11)。
SatoriFilmFX64にはこのほか「CanvasFX」として100種類以上のフィルタが用意されている(図12)。さらに,Photoshopフィルタも使用することができるようだ。
Satoriには「PaintFX」(図13)というツールが同梱されている。これは,PhotoshopとSatoriとのリアルタイム連携のためのツールだ。一方の編集結果が,自動的に他方のデータに反映される。PaintFXはPhotoshop用のプラグインソフトとしてインストールされる。また,PaintFXをインストールすると,PhotoshopプラグインとしてCanvasFXフィルタが18種だけインストールされる。これによりPhotoshopでも64ビットのフィルタが使用できる(図14)。ただし,細かい設定はできないので,本格的に使うにはSatoriを使用することになるだろう。これらはPhotoshopプラグインの使えるほかのソフトにも対応している。
このほか,Webオプションとして,Javaロールオーバー機能,画像最適化ウイザード,イメージスライスエクスポート機能がある。ロールオーバー機能はWebサイト用のJavaScriptによるアニメーションボタンを作る機能のことだ。画像最適化ウイザードでは,イメージ品質を考慮しながら小さいファイルサイズでの出力ができる。イメージスライスは,大きな画像を切り分けてWebページでの画像表示を速くするためのものだ。これらの機能では,画像と同時にHTMLファイルも出力される。
|
図10●ジオメトリのタブ |
図11●標準で搭載されているフィルタの種類 |
図12●CanvasFX上のように多くのメニューがある。下は,そのうち「印象派」というエフェクトをかけたところ。
|
図13●PaintFXプラグインPhotoshopと,Satoriの問のリアルタイム連携作業を可能にする。
|
図14●Photoshop用CanvasFXプラグインPhotoshopでも,64bitのフィルタを使うことができる。 |
●64ビットで画像を処理するため階調表現や色補正に適する
SatoriFilmFX64は,すべての処理を64ビット(アルファチャンネル16ビットを含む)処理する能力を持つ。つまりRGB各色に16ビットを当てることができるので,各6万5536レベルでの表現が可能になるのだ。ほかの2次元ソフトで一般的な32ビット(アルファチャンネル8ビットを含む)の場合は,RGB各色8ビットのため256レベルでの表現しかできないことを考えると,階調レベルで非常に余裕がもてる。これは色補正,とくにレベル補正をおこなう時に効果がある。
|
●大容量画像データや色補正にこだわるならPhotoshopより有利
さて,SatoriFilmFX64はどちらかと言うと大きいファイルサイズのデータを扱う場合や,色調整など64ビット処理を最大限に利用したい高画質出力においては,Photoshopなどと比べてかなりのアドバンテージを持っていると言えるだろう。特にフイルム解像度のロトスコーピングやマットペイント*4では威力を発揮すると思われる。事実,映画「The
Matrix」などのマットペイントで使用された経緯がある。また,ポスター用などの写真合成でも使ってみる価値は大いにあるだろう。逆に言えば,Webコンテンツ用などの小さな容量の画像は,レンダリングの手間がいらないPhotoshopで事足りると言うことになる。D1画像程度の解像度が境界線と考えても良いだろうか?
なお,FilmFXと同じエンジンを使い,動画関連の機能がない「Photo XL」という廉価版が1万1800円で販売されているので,試してみてはいかがだろうか?
ちょっと蛇足だが,日本語マニュアルはありがたい半面,メニュー名が英語表記のままで,ソフトの日本語化されたメニュー名とかけ離れているので探すのが大変だった。
マニュアルを変えるなどの工夫が欲しい。
*4 マットペイントは,実写の一部に手描き,あるいはCGなどの画像をはめ込む技術の総称のこと。
|
日経CG2000年6月号 |
|
[目次へもどる] |