■ビデオ圧縮/伸張ボードのビデオ出力

 ビデオ圧縮/伸張ボードは機種によって,NTSCのみの出力を有するものや,コンピュータモニタ用のRGB出力とNTSCを同時に行えるものや,どちらかを切り替えて使用するものがある。
 例えば,DPSのPerceptionの場合出力はNTSCのみである。従って,コンピュータの操作用には別のビデオボードを使用する
 また,MEDIA100で使用されるVincentもNTSCのみの出力である。この場合,Macintosh(一部を除いて)本体のビデオ出力により操作する。
 Video Vision PClの場合はRGBとNTSCを切り替えてどろらかに表示することができる。従って,本体のビデオ出力と合わせて2画面での編集操作が可能となる。
 後発のTARGA2000をMacintoshで使用する場合,NTSCとRGBの同時出力が可能で,本体も合わせると3画面表示できる優れものだ。このRGB出力は1152×870の24ビット表示ができる。また,Windows上で使用する場合は,他のビデオボードを使用しなくても操作できるので,PCIスロットの節約につながる。

ディジタルビデオ一口メモ
A 趣味程度でノンリニアを体験したい人
 初めて導入する人や,前にとりあえず体鹸したい
●miro VIDEO DC30
 Macintosh版,Windows版の両方がある。このクラスでは画質は定評。編集ソフトはAdobe Premiere LEが付属する。
●TARGA1000シリーズ
 TARGA2000と比べると若干物足りないところはあるが,入門用としては性能も充分。コストパフォーマンスは高い。Macintosh版,Windows版の両方がある。

B ビデオからマルチメディアまでオールラウンドに取り組みたい!
●Radius VideoVision PCI,VideoVision SPソフトウエアがバンドルされているのでかなり割安感がある。SPではコンポーネント入出力のほか,ディジタルオーディオの入出力も持っているので便利。
●TARGA2000シリーズ
 必要に応じて放送品質(RTX,DTXは1:2〜1:1.5までの低圧縮が可能)までグレードを上げることができる。ビデオ出力を2系統持ち,NTSC画面でもRGBモニターでもフルスクリーンで表示できるのがいい。Macintosh,Windows共用。

C ビデオ編集を中心に使いたいMacユーザー
●MEDIA100シリーズ
 NTSCでの使用に照準をあわせて作られているので,画質面で安心して使用できる。業務,放送レベルを達成している。専用ソフトによる操作性もよい。また「GAUDI」を追加することで高品位な3次元エフェクトも可能になる。最近リアルタイムエフェクトも可能となった。

D ビデオ編集を中心に使いたい
 Windowsユーザー
●MCXpress
 アピッドの専用ソフトにより操作性は良い。特にたくさんのフィルタが付属しているのでおもしろい効果を出せる。NT版ではTARGA2000RTXを使用すれば操作性,画質ともによくなる。

E Windows上でCG制作を中心にビデオの制作もしたい
●Perception VR
 ユーティリティソフトが使いやすいので,CGの管理がしやすい。ドーターカードの追加でノンリニア編集にも使用できる。ソフトウエアにはスピードレーザーやVideo Actionぴおすすめ。合成ソフトDigital Fusionとの組み合わせて,After Effectよりも操作性を向上できる。

F 放送レベルで安心して使いたい。
●Media Composer
 業務,CMレベルで最も多く用いられているのがAvidのMedia Composer。いろんなスタジオで使用されているという実績があるので安心して使用できる。

G 超ハイエンドマシンをコストパフォーマンスよく構築したい その1
●DPS HOLLYWOOD+Digital Fusion
 HOLLYWOODの登場で今まで非常に高価だった放送レベルの非圧縮のビデオボードに手が届くようになった。これにDigital Fusionを組み合わせるとベスト。ただし,現時点ではHOLLYWOODと音声の同期ができないようだ。

H 起ハイエンドマシンをコストパフォーマンスよく構築したい その2
●マイクロソフト SoftimageIDS
 ハイエンドワークステーションレベルの作業を,NTマシン上で行える。しかも,映像,音声全てをトータルでクリエイトできるといううたい文句である。1セット1700万円クラスともなると,放送,業務レベルでの使用になると思われるが,現行のハイエンドマシンを退けて実際に現場レベルへの浸透を見せるには早い段階での,実績が求められる。

番外 定価格で完全リアルタイムエフェクトの編集マシンを構築したい
●AMIGA+VideoToaster+Flyer
 完全にリアルタイムエフェクトを達成している。
 筆者も使っているが,使い心地は良い。しかし,現段階では最高スペックでHQ-5(4.8M/秒)なので画質面で若干の不満がある。今更,AMIGAを買って使う人も少ないかもしれない。何よりも日本代理店側の販売意思がないのが残念。セットアップも7.5のみ。

今後期待の製品
 今後は,NewTekのVideoToasterの開発スタッフがスピンアウトして創ったPlay社からVideoToaster(Flyer)をも完全に超越したTrinityがいよいよ出荷されそうだ。

■付属ソフトや使えるソフトを調べよう

 マルチメディアコンテンツ制作者にとっては,制作中にいろんなソフトを使い分けるため,できるだけ多くのソフトを使える環境を構築したい。
 基本的にシステムがコンピュータと一緒に組まれているものは専用ソフトのみで稼働し,ビデオ圧縮ボードのみを販売しているものはいろんなソフトが使えることが多い。
 Macintoshの場合,専用ソフト以外でも使えるものなら,ほぽすべてのソフ卜で利用できるが,Windowsの場合,ソフトがハードに対応しているものといないものがあるので注意をしてもらいたい。
 また,圧縮ボードには編集ソフトが付いている場合が多いのでどんなものが付いてくるかチェックしておこう。編集ソフトは付属していてもビデオデッキをコントロールするデバイスコントローラなどが別売のものもある。

C-オフライン編集(仮編集)用

 さて,ノンリニアシステムを映像用のオフラインシステムとして使用する場合の注意点,及び最低条件を考えてみよう。この場合,完パケは編集スタジオの機材を使用して制作することになる。そのため,EDLを出力するまでのベストな環境を構築するのが目的だ。
(1)フルモーション(フルフィールド)の入出力が可能か?
(2)SMPTEのタイムコードをサポートしているか?
(3)EDLの編集データを出力できるか?
(4)将来のオンラインシステムヘのアップグレードは可能か?
 映像用のオフライン機として使用する場合,上記1〜3は必ずクリアしておかなければならない。そして,将来に向けて,オンラインの画質での編集ができるようにアップグレード可能なようにしておけばなおさらいいだろう。
 ノンリニアシステムを映像用のオフライン機としてのみ使用するには決して高価なシステムを購入する必要はない。例えば先に説明したマルチメディア向けのシステムで上記1〜3をクリアしていれば,オフライン機として十分に機能する。ということは1/2のオフライン編集機の導入価格で比べても,同額程度でそろえることができるだろう。
 ここでEDLについて注意しなければならないことがある。EDLデータが出せるからすぐオンラインに利用できるかと言ったらそうではなく。オンライン編集室との互換を調べておく必要がある。また,ポストプロの編集者がEDLデータの編集になれていれば,事前に注意事項を聞いておくことも必要だろう。
 ビデオ編集とノンリニア編集での違いに,レンダリングというものが存在する。画像編集ソフトは画像編集の際,ワイプやディゾルブなどのエフェクト処理をコンピュータで計算させ処理するのにレンダリングが必要になる。この処理は,コンピュータのCPUの能力如何でかかる時間が違ってくるのだ。
 オフラインでカット編集しか使用しない場合は関係ないが,ワイプ,ディゾルブなどを使用する場合,この処理にかかる時間が重要なのだ。ビデオ編集ではワイプ,ディゾルブはリアルタイムなので,ビデオ系の人にとってはこのレンダリング時間を待ってられないと感じる人も多いだろう。
 最近ではボードにDSPを搭載させ,あるエフェクトに限って高速処理が行えるようになっているものもある(TARGA2000,MEDIA100など)。
 また,2トラックの映像を同時再生(デュアルストリーム)することを可能にすることで,リアルタイムエフェクトを可能にした製品も登場している。これらは,エフェクトによる待ち時間は生じないので,非常に快適である。ただし,その分値段もはるのだが・・・。このシステムにはNewTekのFlyerや松下のWJ-MX1000,MEDIA100XR,ScitexDigital Video社のMicroSphere,またAVID Media Composer(オプションが必要),MCXpressなどがある。


 さて,ビデオ圧縮/伸張ボードの条件を使用目的別にみてきたわけだが,更に細かく目的別に分類し筆者お薦めのビデオボードとしてまとめてみると表1のようになる。次号から,これらのハードウエアを検証しながら,紹介していきたい。
 なお,このコーナーヘの質問やご意見などあれば編集部宛にどしどしお寄せいただきたい。私の主催するインターネットのWeb上でも質問を受け付けているのでちょっと覗いてみてほしい(http://www.b-artist.com,E-Mail:info@b-artist.com)。       


表1●ビデオ圧縮/伸張ボード必要条件
日経CG1998年3月号
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