質問コーナー
Q
 はじめまして。2月号は圧縮比など少々難しかったのですが,大変参考になりました。
 ところで僕は今,実写とCGの合成(動画)を制作しビデオに出力したいのですが,合成のやり方がよくわかりません。非常に恥ずかしい質問なんですがなぜ人を映す時こ背景をブルーにするのですか?合成方法などできれば教えて下さい。
 使用機種ほPower Macintosh 8500/180。ソフトはSTRATA VideoShopとShadeです。
A
 合成には.キーで抜く方法とマスクで切る方法(図D)があります。
 キーにはクロマキーやルミナンスキーなどがあります。クロマキー合成とは映像の色の情報を含むクロマ信号(Chrominance)のうちのある色信号を指定してその信号のみを抜く方法(図E)。ルミナンス合成とは映像の輝度とコントラストの情報を含むルミナンス信号(Luminance)のうちのある輝度信号を指定してその信号以下または以上のみを抜く方法です(同F)。
 通常,クロマキーでブルーバックを用いるのは.人の皮膚にはブルー色素がほとんどないため皮膚を誤って抜くことがないためです。しかし,この場合ブルーの服を着ていると服まで抜けてしまいます。そのようなときはクリーンバックを用いる場合もあります。いずれにせよ.バックが均一になるように光を当てておかないときれいに抜くのは難しくなります。After Effectsなどの合成専用ソフトを使うとマスクとの併用でかなりのところまで追い込むことができます。
 筆者は,STRATA VideoShopは使ったことがありませんが墓本原理は同じだと思います。
 背景の映像の上に,CGを合成する場合は,CGのマスクを作ります。このマスクを使って静止画の背景部分を抜くと合成が完了します(図G)。
 CGを合成する場合はレンダリングするフォーマットに,32ビットのアルファチャンネルを持った画像データ(TargaやPhotoshopのPDSなど)に保存するか,24bitの画像と8bitのアルファチャンネルを別々に保存します。このアルファチャンネルが先程のマスクに相当しますので,このアルファチャンネルを使ってCGの周りの背景画像を抜き合成します。
 合成するものが人や動物などの場合,一枚ずつマスクを撮っていくことも可能ですが,キーで抜く方法を用いると一回の指定でその色を抜くことができます。そのとき先にも言ったように,均一なバックカラーになるように撮影しておきます。
 もし,STRATA VideoShopがマスクを切る機能を持っていない場合は.Photoshopを使って1枚ずつ切る地味な方法もあります。STRATA VideoShopの使用方法はマニュアルを参考にして下さい。
図D マスク合成  
図E クロマキー合成

図F ルミナンスキー合成

図G 背景とCGの合成
Q
 ちょうど自宅でビデオ編集(CGと実写の合成)を本格的にやろうと思っていまして,興味深く読ませていたたいております。
 ハードディスクの選択で悩んでおります。本格的といっても,とりあえずキャプチャカードには「Cinema Gear」か「MiroVIDEO DC−30」を入れるつもりです。
ハード本体がMacintoshの7500/604e243なので,外付けでアレイを組むか内蔵でやろうと思っています。SeagateのCheetahが最速と聞いたのでCheetahを入れたいのですが,店の人に「熱の問題で内蔵はとても無理,外付けしか駄目でしょう」と言われました。
 DOS/Vショップに売っているような外付けのワイド対応ディスクケースに冷却ファンをつけて,Cheetah2台組みのアレイシステムを組めるものでしょうか?それとも,熱に強いアレイ専用のケースが必要になってくるのでしょうか?
 作品のイメージ品質はできる限り良いものにしたいので速いハードディスクが欲しいのですが,Cheetahでなくても大丈夫ですか?
 ご存じでしたら,お忙しい中恐縮ではございますがアドバイスをいただけないでしょうか。よろしくお願いいたします。
A
 SeagateのCheetah(Ultra Wide SCSI)は回転数10000rpm,シークタイム8msec,転送レート11.3〜16.8MB/秒のスペックを持つ非常に高速なハードディスクです。最近ではUltra2VVideSCSlインタフェースを持ったものも発売されており,転送レートは14.5〜21.8MB/秒にも達しています。1台でこの数字は.一昔前なら考えられません。ハードディスクのスペックはメーカーのWebで調べることができます(Seagateはhttp://www.seagate.com)。
 筆者はUltra Wide SCSIタイプのCheetah(ST19101W)をPerception VR用に使っています。パフォーマンステストでは9.5MB/秒をクリアしています。つまり,2台でアレイを組まなくてもこれくらいの転送レートの範囲なら十分使うことが可能だということです。予定されているCinema GearかDC−30でしたら,最高転送レートが6MB/秒(1:3)だと思いますので,Cheetah1台で十分なはずです。
 今後さらに低圧縮のシステムを組む予定があるようでしたらそのときに2台でアレイ接続すればよいのではないでしょうか。Cheetahは実際のところかなり発熱しますので,自作の場合きちんとした空冷処置が必要になります。ただ単に空冷ファンを付けただけではダメです。ハードディスクの正面から風を入れ,後ろに流れていくように工夫して下さい。もちろん,これらの作業は自分で責任を持って行って下さい。発熱を気にするようでしたら,7200rpmのBaracudaシリーズ2台でアレイを組む方法もあるかもしれません。
 ちなみにSCSlのタイプにはNarrow,Ultra,Wide,Ultra Wide,Ultra2 Wideが存在し,データを流せる最大値はそれぞれ10MB/秒,20MB/秒,20MB/秒,40MB/秒,80MB/秒となっています。これは,アレイを組んだ場合も変わりません。上位互操ですから混在は可能ですが,混在させた場合一番下のスペックになります。接続端子はNarrow,UltraはNarrowタイプで,ほかはWideタイプです。
Q
 はじめまして。Windows NTをベースに3次元CGの制作をしているものです。
 最近Windows NTマシンにDPSのPerceptionVRを載せてCGの編集をする人が多いようなので,導入を考えていますが,Perception VRは放送基準に達しているのでしょうか?
 よくポスプロなんかで,CGから来るものは信号がめうやくちゃな時があると聞きます。どこか安心できるものはありますか?Accomなんかも考えています。
A
 Perception VRの基本スペック(スループット)は放送基準をクリアしています。
筆者も使っています。圧縮レートは7MB/秒以上に設定しています。
 Perception VRはバーチャルファイルに対応していますので,3次元CGの出力には魅力です。画質も十分だと思います。しかし,実写映像の編集で考えるなら,ほかの選択肢もあると思います。
Accomのディスクレコーダは非圧縮をサポートしており,画質的には全く問題ありません。しかし,Perception VRに比べると価格面で高くなってしまいます。どれくらいの予算かによっても選択範囲は変わってきます。
Q
 山田さんの記事は、払が現在興味を持っていることでしたので大変興味深く拝見させて頂いています。さて早速の質問で恐縮ですが,よろしくお願いします。
 Perception VRを使用されているとのことですが.音について質問があります。効果音やBGMをMacintoshで作ってWavファイルに変換し、LAN経由でPerception VR搭載のマシン(編集マシン)へ送り,編集ソフト上で動画に音を張り付けて最終的にベータカムなどのデッキに落す場合,音質はPerception VR搭載マシンのサウンドボードに左右されるのでしょうか?もし左右されるのであればベータカムに落とす際のサウンドボードのベストチョイスをご教授いただければ幸いです。よろしくお願い申しあげます。
A
 音質は出力時にも関係しますから,Perception VR搭載マシンのサウンドボードの性能に左右されます。サウンドボードはマシンからのノイズを受けやすいので,ノイズ対策がされたものが必要になります。
 値段が安い「Sound Blaster」ではノイズの影響を受けやすいと言えます。最近,Creative Technologyからノイズ対策が施された「AWE64 gold」が出たので筆者も使ってみましたが、業務で考えた場合ちょっときついと思いました。そう考えると、DPS純正の「Perception A4V」が無難でしょう。
 音に関しては,今後オーディオボードのテストをしようと思っています。まだ実現していませんが,結果が出たらまた報告します。

日経CG1998年6月号
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