■3次元で合成ができるeffect

図7●effectの画面

 Discreet Logicは,シリコングラフィックスのハイエンドマシン上で稼働するinfernoやflame,flintなどのハイエンド合成システムを製品化している会社である。Discreet LogicがDenim Softwareを買収し,Denimの「ILLUMINAIRE Paint&Composition」を自社製品に加えたのが2年あまり前になる。ILLUMINAIRE Paint&CompositionはWindows NTやMacintosh上で稼働するデジタル合成/ペイントソフトで,その時のバージョンは1.2であった。その後,effect&paintと名称を変え,3D Studio MAXとの連携操作が可能になるなどDiscreet Logicによりバージョンアップが行われてきた。
 effectとpaintは,単体もしくは2つを組み合わせた形で販売されおり,現在の最新バージョンはそれぞれ2.1.1となっている。価格はeffect,PaintともにOption1(廉価版)が14万8000円,Option2(フル機能版)が33万円。組み合わせた価格は57万8000円だ(ディスクリート・ロジック,03-5491-5510)。機能的なことは,本誌のBUN SADASA氏のコーナーでも度々登場しているので,今さらかもしれないが,本コーナーでは始めて取り上げるので,基本的な機能を簡単に解説しておこう。
 effect(図7)は,After Effectsのようにレイヤーを使った合成を行うことができる。After EffectsやDigital Fusionとの大きな違いは,画像を3次元オブジェクトとして扱い3次元空間での合成ができる点だ。effect内の映像は3次元空間のオブジェクトとして扱われるため,画像と画像の距離(Z軸の奥行き)を与えながら合成することができる。空間にはカメラやライトを置くことができ,画像オブジェクトには,反射や透明度など3DCGソフト同様の効果を与えることができる。たとえば,ブルーパックで抜いた人物と背景画像との距離を持たせることで背景に人物の影を落とすこともできる。この後でライティングを与えることもできる(図8)。これにより,従来より一歩進んだ合成が容易にできることになる。3D Studio MAXのRLAファイルをインポートすることで,Z軸の奥行きを認識してデプスフォグなどをかけることもできる。3D Studio MAXでオブジェクトにID番号を付けておけば,目的のオブジェクトを指定してエフェクト効果を付けることができる。
 effectは,Blur/Sharpen,Channel,カラー補正,Distort(変形),Linear Keyer,Mask,Noise,Stabilize,Stylize(エンボス,レンズフレアなどの表現手法),Transition,3D Post Filter(3次元効果)など合成ソフトとしては十分なエフェクト機能を持っている。特に,Discreet Logicのハイエンドソフトと同等のモーショントラッカー性能はありがたい(図9)。effectはPhotoshopやAfter Effectsのプラグインをサポートしているので,これらの標準プラグインや,Final Effects,Digi EffectsのBerserk1.0,Cyclonist,Aurorix2などのサードパーティ製プラグインもほとんど使うことができる。5DのMonsterもeffect&paintに対応する予定。ICEのアクセラレータボード「Blue lCE」も使用することができ,これを用いるとエフェクト効果を2〜20倍高速化させることができる。


図8●effectの合成例

図9●高性能なモーショントラッカー

■ベジェでペイントをアニメーションできるpaint

 Paint(図10)は動画像にペイント効果を与えることができるソフトウエアだ。ペイント効果により,ロトスコーピングや画像修正を行うことができる。ペイントと言うと単に色を塗ることを想像しがちだが,ぽかしなどのエフェクト効果をペイントすることもできる。エフェクト効果はeffectで使えるプラグインがそのまま使えるので,サードパーティ製も含めるとかなり多くのものを扱える。
 Paintで描かれたペイントデータはピクセルデータではなくベジェデータ(図11)として記録される。そのため,このベジェデータをアニメートさせることで,ペイントデータを動かすことができる。
 effect&paintは,Digi Suite(またはDigi Suite LE)を使用した場合,NTSCモニターで確認しながら作業することができる。effect&paintを使用する場合Digi Suite(またはLE)はお薦めだ。


図10●paintの画面(左)
図11●ベジェデータ(右)
日経CG1999年4月号
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