■Samplitude5.0について

 Samplitude5.0には,「Samplitude Studio」(定価8万8000円),「Samplitude2496」(定価14万8000円),「Red Roaster24」(定価5万8000円)がある。
Samplitude2496とRed Roaster24はDVDのオーディオフォーマット24ビット96kHzに対応している。それ以外は基本的にはSamplitude Studioと同じだ。また,Samplitude2496とRed Roaster24の違いはトラック数のみで,Red Roaster24は2チャンネルのトラックしか持っていない。これはオーディオCDのマスタリング用として特化させているためだろう。
 Samplitudeは最大1024トラックをサポートしたマルチトラックレコーダー/マルチトラックエディタである(図3,4)。したがって,録音,再生,編集を任意のトラック,任意の位置,任意の波形に対して行える。使用できるファイル形式にはWave,AIFF,MPEG,AVIファイルがある。
 また,マルチカードをサポートしており,音声の入出力に使用するサウンドカードも無制限に複数の同時使用が可能だ(実質的にはマザーボードのスロット数に依存)。この場合,トラックごとにPlayとRecで使用するサウンドカードを別々に指定することができる(図5)。
 しかし,複数のサウンドカードによる再生は,各カードのサンプリング周波数の精度に大きく影響を受けるため,クロックスピードが完全に一致していない場合は,再生位置のずれなどを引き起こしてしまう。
 つまり,ソフトウエアでサポートしていても事実上,複数のハードウエアの併用はほとんど不可能だと考えた方がいいだろう(ただし,各サウンドカードをワードクロック*などで同−クロック源からロックした場合はこの限りではない)。このことを考えると,必要なチャンネル数を持つマルチチャンネルサウンドカードの導入を検討した方がいいだろう。
 Samplitudeは,非破壊型編集と破壊型編集を使い分けて編集する。この非破壊型編集,破壊型編集とはオーディオのノンリニア編集でよく使われる言葉で,エフェクトなどをかける時にオリジナルデータ(波形)自身を変化させる編集方法を破壊型編集と呼び,オリジナルデータ(波形)を直接変化させない編集方法を非破壊型編集と呼んでいる。
非破壊型編集はUndoで元に戻れるが,破壊型編集を行った場合データは元に戻せない。
 Samplitudeの場合,基本的にリアルタイムエフェクト(図6)は非破壊型,その他のエフェクトは破壊型が使用されている。破壊型エフェクトを使用する際にCreate Copyをチェックしておけば原音を自動コピーしてくれるので,Undoで元に戻すことができるようになっている。

*Wordclock(ワードクロック):オーディオ機器固有のサンプリング周波数の信号のこと。SMPTEは1/120秒でのロックしかできないので,デジタルオーディオ同士の同期にSMPTEを使用すると,徹妙な位相が生じ,音がひずんで聞こえたりする場合がある。デジタルオーディオ機器同士を同期させる場合,それぞれにワードクロック・ジェネレータからワードクロックを供給(Word Sync)すると,正確に同期をとることができる。ただし,ワードクロックを入力できる機器に限る。

図3●Samplitudeのミキサー画面

図4●ボリュームの改革をペンで描くことができる

図5●Track Infoでは録音・再生で使うオーディオディパイスを別々に指定できる(マルチカードモードを選択している場合に有効)

 

図6●ミキサーでつかえるリアルタイムエフェクト

 

コンプレッサ


エコー


グラッフィックイコライザー


マルチダイナミックス(コンプレッサー/リミッター)


パラメトリックイコライザー

今回はノンリニア編集におけるMA作業の効率化を考えてみたが,いかがだっただろうか?次回は,SamplitudeとMatroxのビデオ入出力ボードDigisuite LEを組み合わせて使ってみた実際の操作感と音楽作成ソフトACIDについて,報告しよう。今後も,機会があったら,オーディオ用のいろんなソフトやハードディスクレコーダーについても話してみたい。

日経CG1999年5月号
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