■撮影には三脚を使おう

図9●不思議な画が撮れるステディカム
腕力で支えていたステディーカムDV用に,アーム&ベストが登場した。これにより安定した撮影と長時間に及ぷ撮影の疲労が軽減する。日本総代理店:レトロエンタープライゼズTEL:(03)3829-2776
【URL】http://film.club.ne.jp/

 そのほか必ず揃えておきたい機材は三脚である。いかなる撮影でも三脚を使用することは基本であり,手持ち効果を狙う場合を除いては三脚を使用すべきである。三脚を使用した映像と使用しなかった映像では,撮影した映像に歴然と差が現れてくる。
 妙にブレブレの映像は好ましいとは言えない。後で泣かないためにも面倒くさがらずに必ず三脚を使おう。どうしても三脚が立てられない場合や現場に持っていけない場合は一脚を使用しよう。これでも十分に手ぶれを防止できる。
それも無理ならビデオカメラの手ぶれ防止を使用して撮影する。最近の手ぶれ防止機能は非常に優れており,特にズームレンズで望遠側を使用する場合は効果てきめんだ。画質は若干落ちるが,プレた映像よりもマシだ。
 三脚を選ぶ際のポイントは,できるだけ大きくて重たいものを選ぶこと。少しの風ではびくともしないものがいい。
しかし,持ち運びを考えると,少し軽めのものもあったら便利だ。この辺は,どんな状況で使用することが多いかを考えて選べばいい。いずれにせよ,ヘッド部分が動き,カメラの水平を合わせられることと,パンニングやティルトが滑らかにできることが必須条件だ。
 ところで,「ステディーカム」(図9)をご存じだろうか。これをカメラに付けると動く対象物を追いかけながら滑らかな撮影ができる。カメラを手で持って対象物を追いかけてもブレないようになっているのだ。ステディーカムを使って撮影された映像は何とも言えない雰囲気を持った映像に仕上がる。映画では,例えば狭い潜水艦の中を被写体を追いながら撮影する場合などに使用される。最近では,陸上競技の撮影でもステディーカムが使用されている。
 このステディーカム独特の映像を求めるならステディーカムDVがお薦めだ。ステディーカムDVはDVカメラなどの民生用の小型カメラ用に開発されたもので,ステディーカムの独特の映像表現を得ることができる。最近,アーム&ベストも発売になり,本格的なステディカム操作が行える。
 一度使ったらやめられなくなる。

■音声をきれいに録音するには


図10●ズーミングでカメラマイクの指向性が変わるものがある

 ビデオカメラには収録用のマイクが付いているので,そのマイクを使えば一応音声は収録できる。しかし,インタビューなど,きっちりと音声を録音するには外部マイクが必要だ。マイクには無指向性マイク,単一指向性マイク,指向性マイク,超指向性マイク(ガンマイク)がある。
 マイクが見えても構わなければ,単一指向性のマイクを手持ちで使用する。テーブルの上にスタンドマイクを置いて使う場合は指向性を持ったマイクを使用し,口元に向かってセットする。カメラフレーム外から音源を狙って収録するにはガンマイクを使用する。スタジオ(屋内)での使用の場合は襟元に忍ばせるピンマイクを使用すれば見た目もよく,音質も非常にきれいに収録できる。これには有線とワイヤレスがあり,被写体に動きがある時や全身を撮影する時は有線だと邪魔になるのでワイヤレスタイプがいいだろう。
 さて,カメラマイクを使った場合の注意点を話そう。実はカメラマイクをオートで使用する際,レンズのズーミングに合わせて指向性の角度が変わるものがある(図10)。
 アップ(望遠)にした時は指向性が鋭くなり,狙った被写体の音を拾いやすくなる。逆に引き(広角)にした時は指向性が緩やかになり全体的な音が録れるようになる。実はこれで困ったことが生じる。例えば,ライブステージや講演会を撮影する際,被写体に対して寄ったり引いたりするたびに録音された音が大きくなったり小さくなったりしてしまうのだ。これを防止するには,カメラマイクのズーム機能を外し,指向性を緩やかにした方が良い結果が得られる。ただし,安いDVカメラだと手動切替がついてなかったりするので注意したい。このような時は外部マイクを使って録音しよう。
 ところで,録音する音声をチェックするためにヘッドホンは必ず使用するようにしたい。微妙な音の違いを聞き分けられるからだ。

■暗いところではライトを使おう

 DVカメラはディジタルで記録できるので非常に高画質で撮影できるが,放送用の機器と比べてレンズの性能は月とスッポンなので,放送機器との画質差はどうしても生じてしまう。ところが,スタジオなどでライトをばっちり与えて撮影するとDVカメラでも一昔前の放送用ビデオカメラと対等の映像を記録することができる。これは,被写体の明るさが十分になるとレンズの絞りを絞り込むことができるので,レンズの性能を補うことができるからだ。
 受光部のCCDが小さいので,暗いところではゲインアンプが働きノイズが出る場合もある。室内撮影のような暗い
場所ではできるだけ照明ライトを使用して撮影しよう。ライトは被写体の立体感を出すために2〜3灯使用することが望ましいが,どうしても仕方がない時は1灯でもいいだろう。屋外での撮影ではレフ版を使用すれば,明るさを補い被写体をきれいに撮ることができる。ライトはビデオ専用が望ましいが,スチール写真用のアイランプなら比較的安く手に入る。
 太陽光や屋内の照明のランプの違いで色温度は違う。カメラのオート撮影では自動的にホワイトバランスをとってくれるが,できれば光の条件が変わるごとに手動でホワイトバランスをとることをお勧めする。


今回はDV撮影機材の選択とワンポイントアドバイスといったところに終始したが,次回はDV編集システムの構築と編集の実際をお話ししよう。

日経CG1999年9月号
[目次へもどる]