映像制作


■Premiereに似たインタフェーマスを持つビデオ編集ソフトPreditor

 Trinityに付属するビデオ編集ソフトウエアがPreditor(図11)だ。Preditorを使用することで,4台までのVTRを制御しA/B/Cロール編集を行うことができる(422シリアルコントロール)。
 また,近々発売されるノンリニア用のボードTimeMachineを組み込むことで,リニア/ノンリニア編集を複合的に組み合わせながらビデオ編集を行える。
これにより,今までとは異なったアプローチですばやくエフェクトや編集を行えるようになる。
 Preditorは,ノンリニアビデオ編集ソフトのPremiereに似たユーザーインタフェースを持っており,ノンリニアビデオ編集ソフトに憤れた人にとっては,非常に分かりやすいインタフェースと言えるだろう。
 VTR映像をリニア編集する場合は,Preditor側からデッキコントロールを行いながら,イン点とアウト点を打って映像のタイムコード情報を作成し,これらをタイムラインに並べていく。ノンリニア編集の場合は,Binウインドウから必要なビデオクリップを選んでタイムラインに並べていく。トランジション効果は,映像の切り替わる部分にドラッグ&ドロップすればよい。
 タイムラインでの編集が終了すると,アセンブル編集機能により自動的に最終編集が行われる。リニア編集の場合,ソフトウエアから必要なビデオが要求されるので,そのビデオテープを送り出し側のVTRに入れると自動的に受け側のVTRに録画されていく。もちろんワイプや3次元DVEはすべてリアルタイムに処理されていく。
 Binウインドウには,自分が必要とする素材を表示させておけばよい。ちなみに,Binウィンドウは,単にディレクトリ内を表示しているだけなので,ここからディレクトリ間の素材のコピーも可能である。
 ちなみに,Preditorの中央に2つのモニター画面(プレビユーとプログラム)を表示させるためには,オプションでClipGrabカードが必要だ。これが無い場合は,外部にNTSCのモニターが必要になる。
 ノンリニア用のTimeMachineだが,8月ころの出荷ではないかということなので,この本が出る頃には発売されていることだろう。このTimeMachineは筆者にとって実に待ち遠しい製品だ。


図11●ビデオ編集ソフトPreditor

■放送用のフォントを備えたタイトル作成ソフトTitleWave

 映像に合成する文字は,日本の映像業界では「テロップ」,アメリカでは「キャラクタ」と呼ばれ,それらを作り出す装置はそれぞれ「テロッパ」,「キヤラクタジェネレータ(CG)」と呼ぶのが一般的だ。ノンリニアビデオ編集ソフトでは,これらは「タイトル」と呼び,それを作るソフトを「タイトラー」と言ったりする。
 Trinityは,ソフトウエアだけではなくハードウエアの助けを借りて,ライブビデオやノンリニアビデオクリップに対して高解像度のテキストアニメーションをリアルタイムに合成できる。
 タイトルはTitleWaveを利用して作っていく(図12)。TrueTypeフォントやPostScriptフォントが使用できるほか,標準で欧文100書体のBitstreamタイプフェイスライブラリが付属している。これらは放送用に作られたフォントなので,ビデオで使いやすい字幅の太いフォントが揃っている。したがって,これらのフォントだけでも,かなりのことができる。
 ただ,残念なことに現段階では,まだ2バイトコードに対応していないので日本語の表示は不可能だ。近い将来には2バイトにも対応するようなので,非常に楽しみだ。
 TitleWaveを利用して入力したタイトルは,大きさや縁の色,影,透明度などさまざまなファクタを変更でき,グラフィックスと合成しながらロールやクロール,フラッシュが行える。
 自分でカスタマイズしたフォント,ロール,クロールの情報はすべて保存することができるので,いつでも再利用できる。こうした点は,Trinityがとにかくライブ放送に強い設計になっていることを示している。


図12●タイトラーのTitleWave

■ベクターペースのペイント/合成ソフトPanamation

 Panamation(図13)は,マルチレイヤを持ったベクターペースの強力なペイント合成ソフトだ。
 グラフィックスデータを利用する際は,アルファチャンネル付きの32ビット静止画(Targa32)や32ビットのAVlファイルを読み込み,瞬時に合成することができる。またマルチレイヤーを使って多重合成したり,それぞれに移動や回転などのアニメーションを付けることもできる。
 Stroke機能を使用すると,カスタムブラシを設定してペインティングできる。ペイントはすべてベククーペースで処理されているので,ペイントのアニメーションも可能だ。
 ペイントというと単に色を付けることだけと思うかもしれないが,実はそれだけではなく,ペイント部分にエフェクト効果を付けることもできる。例えば,ある部分にモザイクをかけたり,ライト効果を与えたりできる。
 Scaterと呼ぶパラメータにアニメーションを設定すると,グラフィックイメージをパーティクル状に爆発させることもできる。とにかく驚くほど多種多様の効果を作り出せるのだ。
 次のバージョン1.1ではモーショントラッキング機能も搭載される予定だそうだ。
 例えばパスが走っている映像があるとしよう。モーショントラッキングを使用することで,パスの動きを自動的に検出して,広告の画像をパスに追随させることができる。これにより,常にパスの側面に広告を貼り付けられる。しかもこれらがほとんどリアルタイムで処理できるようになる。
 このリアルタイムのモーショントラッキング機能は非常に画期的だ。もちろん今までもAffter EffectsやDigital Fusionなどの合成エフェクトソフトを使用すればモーショントラッキングはできた。だが合成にはレンダリング時間が必要だった。
 ほとんどリアルタイムにモーショントラッキングを行える製品はあるにはあった。例えばクオンテルのHenryが有名であるが,1億円以上もする。
 Trinityに非圧縮のノンリニアボードを搭載すれば,Henry以上のシステムを低価格に組み立てることができるのではないだろうか。そう考えると,Trinityにノンリニア編集を組み合わせた時,その可能性は無限に広がっていく気がする。


図13●ベクターペースのペイントソフトPanamation

■待ち遠しいノンリニア用ビデオカード TimeMachine

 TimeMachine(タイムマシン)はTrinityをノンリニア編集システムに変身できるオプションボードだ。
 TimeMachineカードは,独立した2系統のD1品質ビデオストリームと4チャンネルのCD品質オーディオを取り込んで再生することができる。TrinityのSwicherボードを使用することでカットやトランジションもいつでも自由に実行することができる。
 圧縮比は3:1から30:1まで自由に設定することができるので,BetacamSPレベル以上の画質のビデオを30分から数時間録画することができる。圧縮にはMotion-JPEGとは異なるWavelet方式のコーデックを使用しているので,1/3圧縮でもMotion-JPEGの1/2の画質に匹敵するそうだ。
 驚くのは,このTimeMachineを複数使用することで,複数トラックのノンリニア映像を同時に走らせることができる点だ。マルチカメラを使ったライブ映像の編集には効果を発揮するだろう。
 このほか非圧縮用のボードも用意されるようだが,詳細は分からない。
 ざっとTrinityを見てきたが,見れば見るほど欲しくなる。それほど魅力的な製品だ。VIDEO TOASTERやFlyerなどを使っていて不完全燃焼していたところが,Trinityを使用することですべてクリアされるからだ。
 映像品質で放送クオリティを満たし,機能面で業務機器や放送機器システムとの完全な融合(9ピンコントロールなど)ができ,今後の発展も期待できる。
早く日本でも正式発売されることを期待したい。
 なお,このコーナーヘの質問やご意見などあれば編集部宛てにどしどしお寄せいただきたい。僕の主催するインターネットのWeb上でも質問を受け付けているのでちうょっと覗いてみてほしい。

日本での正式リリースは秋頃


 今回,Trinityが日本に上陸したと聞き,早速取材に出向いた。場所は湘南にあるメメックスだ。メメックスの社長,飛田氏はデスクトップビデオの草分け的存在であり,AmigaやVIDEO TOASTERの頃から活躍している。メメックスは,加DPSの日本法人ができるまでParceptionVRの日本総代理店だったのでご存知の方も多いだろう。もちろん,現在もアドパイザ的に関わっている。
 さて,Trinityと飛田氏との関わりだが,Play社にはVIDEO TOASTER時代からの知人もいて,3年も前からPlay社に対しTrinityの国内販売ができるよう働きかけていたそうだ。Play社側からは,アメリカと日本での価格差の是正や技術教育を要求されたそうだが,これらについての飛田氏の案が最近Play社に受け入れられたそうだ。ということで,秋頃には日本で正式リリースとなるらしい。販売方法については今のところ公表されていないが,正式に発表されるのも時間の問題だろう。ちなみにPlay社のホームページには日本でのデモロケーションとしてメメックスが紹介されている。

メメックスの飛田社長と筆者

 今回メメックスに届けられたTrinityはプライベートな評価機だそうだが,このTrinityを使って飛田氏からかなりの時間を割いてデモンストレーションをしてもらった。
 Trinityのいろんな機能の説明を受けるたびに実にワクワクしてくる。今までVIDEO TOASTERでつっかえていたモヤモヤがすべて吹き飛んでしまったからだ。ガタイはでかいが,これは将来まで見据えた設計であり,そう割り切ると気にならない。
 Trinityの国内販売に向けて,今後飛田氏率いるメメックスが先導的役割を果たすのはとても心強いと思う。ぜひ,日本に新風を吹かせて欲しい。Trinityの購入方法やデモンストレーションに関しての問い合わせはメメックスまで(0466-35-0815,http://www.memex.co.jp/)。
日経CG1998年8月号