映像制作


■PVRによるビデオキャプチャとVTRコントロールについての補足

 10月号でPVRのユーティリティを使ったバッチキャプチャについてお話ししたが,読者の方から質問もあったので,ここで少し補足したいと思う。
 PVRは映像だけのキャプチャ再生ボードのため,音声を扱うには別売の「A4V」や「Sound Blaster」などのサウンドボードが必要になる。A4Vはビデオ信号の入力端子があり,これを使って映像と音声を完全に同期させることができる。最近,米Linx Studio Tecnorogyから「Linx One」というサウンドボードが発売されたが,これもビデオ信号の入力端子を持っておりPVRに完全対応している。
 これらを使用することで,音声をWAV形式で記録できる。このWAV形式の音声データとPVRのPVDファイルは別々のファイルだが,この2つを擬似的に一緒にしたファイルがAVCファイルだ。AVCファイルを使うとWAVデータとPVDデータが同時に呼び出され,同時再生が可能となる。
 PVRは,ビデオや音声を同時にキャプチャする際にこのAVCファイルやAVlファイルを擬似的に作成することができる(図6)。Premiere5.0(または5.1)は,PVDファイルのほか,ここでできたAVCファイルやAVlファイルも使用できる。この際に,Premiereからフレーム落ちなくビデオ再生することができるのは,PVDファイルとAVCファイルである。
 AVCファイルには,PVRのユーティリティを使ったバッチキャプチャ時にタイムコードが記録される。これは,Premiere上でも利用できる。タイムコードを記録しておくと,再ディジタイズ(キャプチャ)を行わなければならない時にオリジナルデータのタイムコードが分かるので非常に便利だ。音声を伴わないビデオキャプチャの際にも,是非AVCファイルを作っておくことをお薦めしたい。
 さて,PVRは「PVR-422アダプタ」(図7)を使用することで,バッチディジタイズのほかビデオデッキエミュレーションも行える。これは,アダプタのスイッチをマスターからスレーブに切り替えることでPVRを一台のVTRプレーヤー(再生機)と見立てて,コントロール機能を持ったVTRや編集機から再生・停止・ジョブシャトルなどの制御ができる機能だ。録画側のVTRのタイムコード位置に正確にインサートすることもできる。
 しかし,編集機を持っていなかったり,録画側のVTRが再生側をコントロールできない場合は,録画側のVTRのタイムコードへ正確にインサートできない。このような時でも,Pipeline Digital製のPremiere用プラグイン「ProVTR6.1」(図8)を使用すれば,録画側VTRを制御することができる。これは,かなりのすぐれもので,PremiereからのバッチディジタイズやVTRへの録画をPVRを意識せずに行える。ディジタイズの際は先に述べたAVCファイルが自動的に作成されるので,PVDファイルやWAVファイルを意識する必要もない。また,最近発売されたPipline Digitalの「Rosetta Stone」(図9)を併用すれば,Control-L端子(RANC)を持った民生用VTR機器(ソニーDVR-VX1000など)をコントロールしながらPVRに録画することができる。




図6●PVRによるバッチディジタイズ
まず使用したいクリップのインポイントとアウトポイントを設定する。設定したものはバッチリストに表示される。その後,一気にディジタイズする。 バッチディジタイズの際は,ファイルの格納場所を指定できる。画面のBatch Record itemに表示されているVide FileはPVDファイル,Audio FileはWAVファイルのこと。AVCファイルはこれら2つを仮想的にまとめたもの,したがって,ファイルサイズは小さい。AVCファイルには,VTRから送られてくるタイムコードが記録される。

図7●VTRや編集機からPVRをコントロールできるPVR-422アダプタ
編集機とはRS-422で,パソコンとはシリアルポートで接続する。Remote ConnectionsダイアログのEditting ControlのCOMポートを選択後ConnectedをチェックしてOKを押すと,Deck Emulationが現れる。

図8●録画用VTRを制御できる
Premiere用プラグインソフトProVTR6.1
(販売はフォーカルポイントコンピュータ)

図9●Control-L端子を持つVTRをコントロールできるRosetta Stone
(販売はフォーカルポイントコンピュータ)

■リアルタイムエフェクトができるPremiere5.1RT

 最後に,Premiere5.1RTについて説明しておこう。Premiere5.1RTのRTはリアルタイムを意味しており,2ストリーム再生が可能なビデオキャプチャ再生ボードと組み合わせてリアルタイムエフェクトが可能になる。これまでのビデオキャプチャ再生ボードは,キャプチャも再生も1チャンネルだった。そのため,ビデオ出力の際にビデオデータを1本のムービーにして出力しなければならなかった。つまり,映像がAチャンネルからBチャンネルにワイプやディゾルブしながら変化する映像はリアルタイムに出力することができなかったわけだ。ところが,最近相次いで出荷され始めた2ストリーム再生が可能なボードは,2次元のリアルタイムエフェクト機能も搭載しており,リアルタイムエフェクトを行いながら再生できる。これらのボードに対応するべく開発されたのがPremiere5.1RTだ。Premiere5.1RTは,ユーザーインタフェースは一般のものと同じであるが,マルチストリームのビデオキャプチャ再生ボードに最適化されている。一般に市販はされず,ビデオキャプチャ再生ボードにバンドルされて提供される。
 Premiere5.1RTをバンドルする予定の製品としては,先日米Truvevisionを買収した米PinacleのReelTime,加MatroxのDigiSuite/DigiSuite LEがある。リアルタイムエフェクトボードとしてはこのほかPerception RTも登場しており,今年はリアルタイムエフェクトが面白そうだ。次回はこれらのリアルタイムノンリニアマシンにスポットを当てて詳しく紹介したいと思う。

日経CG1999年2月号