映像制作


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山田浩之(やまだ ひろゆき)

プロデューサ,デジタルクリエータ。
TV番組制作会社でTV,CM,イベントなどのプロデューサを経て独立。映像,CG,CD-ROM,WEBなどのマルチメディア企画制作会社,B-ARTISTを設立。現在同社代表取締役。自らもデジタルビデオや3DCGをクリエイトする。ビデオ専門誌やCG専門誌で執筆活動も行う。現在DV専門のWebサイト,DVWorld.net,人生を楽しむポータルサイトePlay.ne.jpの立ち上げ準備中。只今,歌って踊れるDVカメラレディーとWebデザイナーを募集しています。

 DVカメラは買ったし,ビデオ編集ソフトも揃えた。装備では十分だと思うし,それなりに撮影して映像の切り貼りもできる。でも,今ひとつ良い感じの作品が作れない,とお考えの人もいるだろう。確かに,ビデオ制作ほ漫然と始めても,それなりに作業の手順を踏むことはできる。しかし,その一つ一つで「基本」を怠ると,さらに上級のテクニックに踏み出すことはできない。
 このコーナーでは,プロの映像クリエーター山田浩之氏に,プロが押さえている映像制作の基本を招介してもらった。この機会に,もう一度自分の制作スタイルを再確認していただきたい。

撮影のお作法

■撮影はゆったりと,腰を据えて余裕を持って

 まず,カメラ撮影の基本だが,これはぶれのない映像を撮影することに尽きる。ぶれをなくすためのもっとも基本的な撮影方法は,三脚を使用した撮影だ。この時は,焦らず慌てず,ゆっくりした気持ちで撮影しよう。またズームやパンを多用したり,カメラをあっちこっちに移動して撮影しても,決していい映像は撮れない。ここぞと思う撮影ポイントを探し出したら,その位置でじっくりと撮影を開始する。そして,少なくとも10秒以上は撮影するようにしよう。編集のことも考えると,この辺りは大切なポイントだ。
 振影中は,ファインダやモニター画面をしっかりと見るのは当然だが,その外側で起こっている出来事にも注意を払っておくことが必要だ。このことを心がけると,被写体の動きに追従しながら,かつ全体の構図を考えた最良の撮影が可能になる。もし,被写体が突然ファインダの中央部を外れて動き出したとしても,慌てて反応してはいけない。たとえワンテンポ遅れたとしても,余裕を持って反応したほうが映像は明らかに良くなるはずだ。この時ファインダの外側の動きも把捉していれば,被写体がどう動こうとしているのかの予想がつくし,次の撮影ポイントをとっさに探し,すばやく移動することも可能になる。このあたりは経験も必要ではあるが,場数を踏んでぜひがんばってほしい。
 このほかに注意すべき点としては,撮影開始や終了の操作時にはよくカメラぶれが起きるので,必要カットの前後に5秒くらいの余裕を持って撮影するということも知っておくべきだろう。

■三脚の上手な選び方,使い方

三脚はカメラを固定する意味があるので,できるだけ重たくてしっかりしたものを使用したほうがよい。また,足の長さは伸縮できて,必要なだけ高くできるものを選ぼう。ただし,これは理想であって,実際は使用する目的や使用するカメラの大きさによって適切な大きさのものを選ほう。子供の運動会の撮影に非常に重たいプロ用の三脚を持っていっては撮影自体が大変になってしまうからだ。もし,小型の三脚を選ぶ場合でも,パンニング*が容易で滑らかに動くものを選ぼう。これは,撮影に大きく影響するので,十分な吟味が必要だ。
 三脚の使い方だが,まず撮影する高さを決め,撮影ポイントに三脚を設置する。カメラを三脚に取り付けた後,ヘッド部分に水準器*が付いている場合はこれを使って水平をとる。ヘッドにその機能が付いていない場合は,三脚の足の長さを変えて水平をとる。これでセットが完了だ。
 セットが終わり撮影を開始したら,パン棒を軽く握りいつでもパンニングできるように構える(図1)。振影中にカメラをパンする場合は,5秒くらい固定した後にゆっくりパンを開始する。カメラがパンし始めたら,一定速度を保ちパンニングし,ゆっくりとパンを終える。パン終了後も5秒くらいは固定で振影する。
 三脚が荷物になって持っていけないときは,一脚を使う方法もある。一脚を使用するだけでもカメラの縦ぶれを防げるので,かなりの効果を期待できる。


図1●三脚を使用した撮影 図1は,パンニング時の構え。あらかじめ、腰を最終的に向く方向に向けておくとよい。

■三脚を使わない撮影でのカメラの構え方

 ぶれのない映像を心がけるには,三脚を使うのが一番だが,撮影場所や機動性の問題から,いつも三脚が使えるとは限らない。実際,小さな民生用DVカメラでは手に持って撮影する場合がほとんどだろう。ここでは,そのような場合に心がける,カメラの構え方について紹介する。

(1)ノーマル立位での撮影は
                カメラを両手でしっかり持つ

 普通の立ち位置でカメラを構えるときは,両足を少し開いて立ち,両手でカメラをしっかりと持つ。脇を閉めてカメラがぶれないように構えたほうが,ぶれを少なくすることができる。ただし,肩や腕に余計な力を入れすぎると,とっさの動きに対応できないし,長時間撮影すると疲れるので,できるだけリラックスした状態で構えよう。ここでは,まずカメラぶれの少ない映像を撮影することを心がけよう。
 この状態でパンニングする場合は,若干膝を曲げ,体を安定させながら腰を回転させる。この時,カメラが波打たないように気を付け,ゆっくりと回転させる。パンすることが分かっている場合はパンする方向とは逆方向に体をひねった位置から撮影を開始するとパンニングの角度を広く取ることができる(図2)。

(2)ハイアングルではカメラは両手で支え,肩に無理がない高さで撮影する。

 人込みの後ろから撮影する場合など,ノーマル立位では被写体を写せない場合や,映像効果を狙って見下げた角度で撮影したい場合は,ハイアングルから撮影しなければならない。
 ハイアングルで撮影する場合は,両手を高く挙げ被写体を狙うが,この時も両手でカメラを持つか,カメラを持った方の手首を握るなどしてカメラぶれのない安定した姿勢で撮影しよう。あまり高い位置で振影を続けると,肩の筋肉への負担が大きくなるので,撮影時間内で持ちこたえられる高さで撮影することを心がけよう。
 また,ノーマルのポジションにも移動できるように考えて構えておくことも大切だ。

(3)ローアングルは片膝を地面につけ安定させて撮影する

 ローアングルで撮影する時は,片膝を付きカメラを足に密着させて固定する(図3)。この時も無理な力は抜き,リラックスかつ安定した姿勢でカメラを固定して撮影する。アングルを変えるかもしれない場合は,立ちやすいように膝をついておくことが必要だ。
 また,いざという場合に備えて,ローアングルからミドルアングルノーマルアングルヘ移行できるように考えて膝まづいておくことも大切だろう。

(4)いろんな物によりかかって固定する

 このほか,壁に寄りかかったり,テーブルにひじをつけたりなど,いろいろな物体を利用してカメラを固定する方法も考えてみよう。


図2●三脚を使用しないときのカメラの横え方足を少し開き,両手でカメラを持ち,脇を閉める。体に無理な力は入れないようにしよう。

 

 

 

 

 



図3●ローアングルでの撮影
片膝を地面に付け、安定させて撮影する。

* パンニングは、図5で示すように,カメラの位置を変えずにカメラを水平方向に回転させること。

* 水準器は,三脚などを設置するときに,その場所が水平であるかどうかを確認するもの。小さな管に水と空気を入わて、泡の位置で水平を見るものが一般的。

■そのほか,知っておくべき撮影のテクニック

 基本的なカメラの構え方を抑えたら,次はもう少し凝った撮影にも挑戦してみよう。ズーミング,パンニング,移動の3つは,その中でも特によく使われる基本的な動作だ。これだけの手法を使っただけでも,映像は非常に多くのものを語りかけるようになる。濫用は問題だが,適度にこれらの手法を取り入れて,良い映像を作り出していただきたい。

(1)ズーミング

 DVカメラのズーミングを使用すると,被写体を大きくしたり,小さくしたりしながら撮影することができる。しかし,この効果を使い過ぎると,節操のない映像になってしまう。素人が陥りやすいのはこのズームの使い過ぎだろう。ズームレンズのいくつかの位置(広角,中空遠,望遠など)で固定して使用するなど,ズーミングは極力使わないような気持ちで撮影するのも大切だ。ズーミングするかわりに,自分が被写体に近づいたり離れたりしながら被写体の大きさを調整するのが賢明だろう。
 ズームの多用は危険といったが,ズームを使用せざるを得ない場合や,むしろズーミングを使用したほうがいい場合もある。たとえば,撮影楊所を移動できずに撮影しなければならない場合(たとえば子供の演奏会など)や,場面展開前に被写体にズームアップすることで被写体の主観に入っていけるイメージを出そうとする場合だ。
 ズーミングを行う場合の基本は,一定の速度でズームすることだ。DVカメラによってはズームボタンがスライドの強弱で無段階に設定されているものがあり,このスライドの微妙なずれで早くなったり遅くなったりしてしまう。撮影前にズーミングの練習を行い,適度なスピードでズーミングできるように練習しておこう。
 一般に,カメラの広角側で撮影すれば,大体の撮影は押さえられる。広角側を使って撮影することで,ピンボケの少ない撮影ができる。
 中望遠を使用すれば,被写界深度の浅い,雰囲気のある映像を振ることができる。女性を美しく撮りたい場合などはこれ以上の望遠側を使いたいが,ピントがシビアになり,また手ぶれが起こりやすくなってくるので注意が必要だ。
 望遠側で振影すると後ろのボケた,より雰囲気のある映像が撮れるが,一方で手ぶれも起こりやすくなるので,三脚が必要になってくるだろう。また,画角が狭いので,動きの赦しいものをアップで振影するのは難しい。

(2)パンニング

 パンニングの方法は先に説明したとおりなのでお分かりだろうが,レンズの広角側で行うパンニングと望遠側で行うそれではずいぶんと意味合いが違ってくる。広角側ではさらに多くの情報を提供するための説明映像になるが,望遠側で使用すれば被写体に注目させる効果が出る。望遠側でパンを使用する場合は,一旦AF(オートフォーカス)ロックで被写体にピントをロックして本番の撮影をすれば,被写体にピントが合った映像を得ることができる。

(3)移動(ドリーまたはトラッキング)

 パンニングが振影位置を変えずに被写体を追っかけるのに対して,移動は被写体を追っかけて撮影する方法だ。移動時にカメラがぶれないように振影するためには,三脚の下に車を着けた「ドリー」や移動事が最適だ。しかし,一般には手持ちで移動撮影することのほうが多いだろう。そのようなときは両手でしっかりカメラを持ち,膝を曲げ,カメラに縦ぶれがおよばないように水平に移動する。プラさずに振影するのはなかなか難しい技術だが,これは体で覚えるしかない。何度も練習して,ぜひ習得しよう。

ノンリニアビデオ編集完全ガイド2001