映像制作


ソフト上の特徴

 つぎに、ソフト面から見てみることにしよう。
このソフトを広い意味でいうならば、アビッドのソフトというよりもアドビPremiereに代表されるインターフェースに近いといえる。したがってPremiereを使ったことがある人は、説明書がなくてもある程度は使いこなしが可能だろう。説明書を読む前に筆者が使った感じでも、すんなりと使用することができた。
しかし実際の操作においては、業務用ノンリニア編集機である本機は、汎用ソフトのPremiereとはひと味もふた味も違ったよさが随所に見られる。これは、何度も述べていることだが、NTSC入出力に的を絞ったポリシーがはっきりしているためだろう。
では、順を追って見ていこう。

(1)デジタイズについて

 いままで、汎用ソフトのPremiereを使用して因っていたことに、デジタイズしながら信号のモニターができなかったことが挙げられる。
MEDIA100の場合PowerOptionを付けることによって、波形モニターまたはベクトルモニターを行いながらデジタイズすることができる。また、オーディオ入力レベルも同時にモニタリングできるので、突然の過入力もデジタイズしながらモニタリングできる。
これらの機能は、業務用として使用するには当然といえば当然であるが、波形モニターとオーディオモニターを行いながらデジタイズできる点は、安心して仕事ができるという意味でも捨てがたい。なにせノンリニアの場合、初めにデジタイズありきなのだから。
ただ少し残念なのは、出力の際や取込んだ画像をその後で波形およびベクトルモニターができないことだ。

(2)インターフェースについて

 取込んだ画像はProject Mediaフォルダーに保存され、Binといわれるファイルで管理される。そして、インターフェース(画面)上はBinの中に取込んだ画像が現れる。
このBinの中の画像を、Programウィンドウと呼ばれるタイムラインのスコアにドラッグすることで編集していくこととなる。このとき現れるProgramウィンドウはビデオトラックのa、bと2chのオーディオトラックのみである。
これらは操作的に他のソフトとそん色はないが、強いていえば、ビデオをa、bトラックでオーバーラップさせるとき、少々面倒くさい。なぜなら、お互いが1Ch、2chのオーディオ信号をもっているときは、そのままではオーバーラップができず、まずトラック数を増やし、さらにオーバーラップさせたい画像のオーディオチャンネルの1chと2chから別チャンネルに変更し、オーディオが当たらないようにしてからBトラックのビデオチャンネルに画像をドラッグしなければならない。これはいささかめんどうな気がする。もう少し簡単にできるように工夫してほしい。
また、Binをいくつも登録し開くことができるので、Binを分類してデジタイズすることにより効率的に編集できる点や、Bin同士での画像のドラッグアンドドロップを行うことができる点はいいのだが、誤ってBin内の画像情報を消去した場合など、インポートにより1つずつ取込まなければならないのはいささか不便だ。
いっそPremiereみたいに、画像の入ったProject Mediaから直接ドラッグアンドドロップでBinの中に入れられたらいいように思うのだが・・・・・・。

図3●入力映像の波形モニターができる


コンポーネント波形


ベクトルスコープ


波形モニター


図4●映像波形(図3のいずれか1つ)とオーディオ信号をモニターしながらデジタイズを行う

■取込み画像の再エディット(Edit Clipウィンドウ)

 デジタイズした画像のイン点、アウト点を変更する場合、スライダーを使って簡単に行うことができる。
これはすごく使いやすかった。またV2.5から拡大縮小の虫眼鏡が付いたので、タイムライン倍率を変えられるようになり便利になった。
また、MotionFXとしてスピードを-400〜+400%の間で可変することができる。これも扱いやすいと感じた。
MEDIA100の特徴の1つに、リアルタイムカラーコレクション(SuiteDealオプション)があるが、これは初期値で7種類が登録されており、LuminanceやStyleを変更して自分独自のカラーエフェクトをリアルタイムでかけることができる。また、これらに名称を付け保存することができるので、いろんなカットに設定の使い回しができるのもうれしい。


図5●取込んだ映像ごとに、尺、MotionFX(スピード、リバースなど)の設定や、リアルタイムにColorFX(『カラーコレクション』参照)をかけることができる


『カラーコレクション』

■FX(エフェクト)

 aトラックとbトラックのビデオがオーバーラップしている間に現れるfxトラック上の→をクリックすると、Transitionウィンドウを開くことができる。このウィンドウでDissolve、Wipe、DVEなどのFXを行うことができる。
冒頭にも述べたように、MEDIA100の特徴の1つに高速エフェクトがあるが、1種類の高速ディゾルブと12種類の高速ワイプをこのウィンドウで設定する。このほかにも合計で約60種類のエフェクトをもっており、この中にはMEDIA100独自のものからPremiereのプラグインフィルターも含まれている。したがってサードパーティ製のPremiere用のプラグインフィルターも使えるようだ。ちなみに、Premiere上でMEDIA100用のフィルターや高速フィルターを使えるか試してみたが、それは無理だった。

■トリムモード

 カット間のトリミングはトリムモードで行うが、これは一般的なものとさほど変わらない。

■タイトル、テロップの設定

 使用できる文字の種類はTrueType、ATMフォントで、日本語、英語ともOKだ。また、表現力としては肉太、斜体、影、ふちどり、色透過率、グラデーション、マッピングなど、とりあえずやりたいことはほとんどできるだろう。ロールテロップにも対応しているのでなかなか使えるようだ。


図6●キャラクタージェネレーターは色、太さ、モーションなど、ほとんどのことが設定できるほか、日本語も使用可能

■サウンド

 初期設定2chのオーディオトラックはAddトラックにより8chまで追加できる。ウィンドウにはパンニング、モノラルポタン、1chだけを音出しできるSボタンがある。再生中にフェーダーをスライドすると、Programウィンドウのレベルトラックにキーフレームが自動的に設定される。

■テープへの出力

 編集したデータをテープに戻して最終完パケとなるわけだが、MEDIA100の場合、テープへの戻しがスムーズにできるようになっているので好感がもてる。
通常はRecordモードにて単純にプリントすればよいが、業務で編集をやっていると、テープに戻す場合にいろんな要求が出てくる。たとえば、任意のタイムコードを指定して録画したい場合や、すでに編集されたテープへある区間を指定して割込み録画したい場合がそれである。MEDIA100ではこれらの基本的なことはすべてできるようになっている。Premiereなどと比較できないのは、こういうところにも出てくる。また、編集前後にカラーバーや1 kHzの信号を任意の長さで入れることができるので便利である。


図7●テープヘの出力は希望するタイムコードを指定して録画したり、挿入したい区間を指定して割込み録画もできる

互換性について

 基本的にCodecはMEDIA100独自であるが、QuickTime互換であるからその他のアプリケーションでデジタイズしたデータも、MEDIA100を意識することなく使用することができた。
いまやデジタルビデオには必需品ともいえるアドビAfterEffects3.0Eも問題なく作動した。このAfterEffectsについては、本誌(1995年12月号〜1996年2月号)にてビジュアルジャパンの山田氏がくわしく解説されているので、そちらを一読していただきたいが、本誌発売前後に日本語版3.0が発売になるので、ぜひそろえたいアプリだ。
これらのアプリケーションを使用する場合に注意することは、それらのアプリケーション上でデジタイズすることができない点と、アプリケーション上でリアルタイムでの再生ができない点である。これらがNTSCに最適化させたための欠点といえば欠点だろう。したがってマルチメディア制作においては、若干弱いともいえる一面だ。もちろんAfterEffectsなどで制作したムービーをMEDIA100で圧縮セーブすれば、NTSC画面でリアルタイム再生することができるのでご安心を...。


図8●他のアプリケーションのフォーマットでも出力可能。
また、オプションでMEDIA100以外のCodecにすることもできる

図9●アドビAfterEffectsでの互換性も万全。ただしAfterEffects上でNTSC画面での動画の確認ができないので、MEDIA100に戻ってから行う

最後に

 このテストを始める前後にタカラから発売されたソニー・プレイステーション用ソフト『闘神伝2』のオープニングにおいて、実写とCGの合成にMEDIA100が使われたと聞き、撮影の演出とMEDIA100の編集までされた演出家の堀祐一さんを訪ねてみた。堀さんは日ごろの連絡もインターネットやNIFTY-Serveを使って取合うといった、ある種コンピュータを手足にしているくらいの人である。そのためか1日でMEDIA100のだいたいの使用法をマスターし、オフラインからオンライン編集、そしてMAまで延べ2週間で完成されたそうである。
実際編集された映像を拝見したが、演出のうまさも手伝って、1/8圧縮で編集されたものとはいいがたいクォリティであった。この映像はゲームの中で若干の圧縮がかけられるそうで、MEDIA100の画質にはお目にかかれないが、それでもけっこうきれいだそうなので、ゲーム好きの方がいらっしゃれば一度ご覧になってはいかがだろう。
ところで、今回のMEDIA100をテストレポートして感じたことは、やはり金額は業務レベルの金額だけあって、さすがに充実しているといった感じだ。
先ほどゲームの話を述べたが、ノンリニア編集はコンピュータグラフィックとの合成に、が然威力を発揮するであろう。MEDIA100もさらなる進歩を遂げてほしいし、売れることで値段が下がってくれればうれしい限りだが。


『闘神伝2』のオープニング(1995年12月29日発売・\5800
)©TAKARA Co.,LTD,1995.PROGRAMMED ©TAMSOFT,1995.

●機材協力:アップルコンピュータ株式会社
株式会社メルコ
株式会社ソフトウェア・トゥー

ビデオアルファ1996年2月号