映像制作


ノンリニア編集の実際

(1)Output Setting

 Speed Razorでの設定は、まずOutputSettingを行うことから始まる(図8)。ここでは、どういうファイル形式で最終出力するか決定し、Audioのサンプリング周波数などの設定を行う。PVRを使用する場合、DPS Anim Fileを選択する。
 また、VideoのChangeボタンをクリックすると、PAR/PVR Settingウィンドウ(図9)が現れるので、ここでPVRの圧縮レート(Q Factor)や、ビデオ出力端子(コンポジット、コンポーネント、Y/C)の設定を行う。


図8●Speed RazorのOutput Setting画面。PVR使用の際はファイルをDPS Anim Fileに設定する

図9●Speed Razor側からPVRの出力設定を行える

(2)ビデオキャプチャー

 さて、いよいよビデオのキャプチャーである。ビデオキャプチャーは、Capture Videoウィンドウ(図10)でクリップ名を決め、Browseで保存する場所を決め、Input Settingで入力端子(コンポーネント、Y/C、コンポジットなど)を決めれば、後は簡単である。
  キャプチャーした画面はRazor LibraryのMediaウィンドウに現れる。この辺のところはAbobe Premiereに似ている。もちろん、すでにキャプチャー済みの画像の場合でもライブラリーへ/簡単に追加できる。たとえばRazor LibraryのMediaウィンドウの空ボックスをクリックすると、追加したいファイル形式を選択するウィンドウが現れるので)、PVRの場合DPS Anim Fileを選択し、PVRのディパイスから必要なファイルを選択すれば、Libraryにクリップを追加できる。
図10●Speed Razorでのビデオキャプチャーコントロール画面。ビデオデッキ・コントロールディバイスを使用しない場合に、このウィンドウでキャプチャーを行う。ディバイス使用の際は図19のウィンドウで行う

 また、この際ファイル形式やサイズが違っても追加することが可能で、先のOutput Settingで設定したファイル形式で最終レンダリングができる。ただし、当然のことながら、入出力ボード(今回はPVR)と同じフォーマット形式でないとリアルタイムでの映像確認はできないのでそのつもりで。

(3)EffectおよびTransition

 EffectやTransitionのウィンドウはRazor Libraryウィンドウ上のTransitionボタンをクリックし、切替えることで行う(図11、12)。このような切替え式になっているのは、操作画面が本体RGBモニターのみなので沢山のウィンドウを開けないからだろう。これがMacであったら、マルチ画面での使用が簡単にできるところではあろうが・・・・・・。

 ところで、肝心のEffectであるが、図12のように現在38のエフェクトが用意されている。操作自体は非常に簡単で、かつ複雑な設定まで行うこともできる。Adobe Premiereの場合、よくてEffectの開始と終点での設定だけになるが、Speed Razorの場合、始点から終点までの間の設定に非常に自由度がある。どちらかというとAdobe After EffectsをPremiereのインターフェースで操作する感じだ(図13)。こんな点でも、このソフトがハイエンドの映像編集ソフトであることがわかる。
 Transition効果は現在8つ用意されており、操作性はEffect同様複雑な操作が可能だ(図14)。これらのレンダリング画像は質が良く、もちろん60フィールドに完全対応している。
図12●Speed RazorのEffect Library Window
 


図11●Speed RazorのTransition Library Window


図13●3D DVEの設定ウィンドウ。ご覧のような各種細かい設定が可能

図14●Transition効果の設定画面。Effect同様、細かい設定が可能

(4)テキスト

 テキストはEffectのTitlesを使用する。固定の表示以外にも3D DVEばりの複雑な動きを与えることができる。大きさを変えたり、影を付けたりと、自由度は広い。また、当然色の設定もできる(図15)。
 日本語の表示だが、今回のバージョンではまだ対応していない。輸入元のプロピックスではin:Sync社に日本語表示対応版の開発を要請しており、今後のバージョンアップで対応可能となるはずだ。


図15●Titleの設定画面。複雑な動きの設定が可能

(5)全体的な操作性

 全体的な操作性であるが、操作的にはAdobe Premiereに似ており、非常にわかりやすく使いやすい。あえて違いをいえば、ビデオ用とEffect用のトラックの別がなく、トラックにも番号がないことだ(図16)。
 では、簡単な編集をやってみよう。
 まず、Razor LibraryをMediaウィンドウにし、必要なクリップを選択する。これをタイムラインウィンドウにドラッグ&ドロップする。タイムラインに並べたクリップの尺は、クリップの前後を動かして長さを調整することもできるし、選択されたクリップデータがItem Infoウィンドウに表示されるので(図16)、イン点、アウト点などの数値入力が可能である。ただ、この際のタイムコード入力が時間の問に『:』をいちいち入れなければ正常に入力できなかったので、ぜひ改善してもらいたい(たとえば、タイムコードの数字を続けて打てるとか、『:』の代わりに『.』でも大丈夫とか、現在点から3フレーム延ばしたいときは、『+3』と入力すればいいとか、ここらはPremiereでは対応している)。
 このItem Infoでタイムライン上のクリップを再生させることもできるし、再生させながらMark in(イン点)やMark out(アウト点)を打つこともできる。なお、この際の再生画はNTSC画面に出力される。
 続いて第2のクリップをフェードインさせたい場合を説明しよう。
 まず、タイムライン上で重ね合せたクリップにフェーダーを表示させ(Ctrl-key&Right clicking)、グラフを上下させ、フェードの具合を調整すればよい(図17)。簡単である。
 Transition効果やEffect効果をかけたい場合は、まず必要な効果をRazor Libraryから選択し、タイムラインウィンドウにドラッグする。そして、同じタイムラインに存在するクリップに対して、どちらをソース1にするかソース2にするか、またはどちらをインサート画面にするかなどを指定し、効果を適用する。
 効果をダブルクリックすると図18のようなウィンドウが開き、ここで効果のかかり具合や、モーションを設定する。設定はかなり細かく設定することができる。
効果のかかり具合をチェックするには、いったんシングルファイルをレンダリングしてつくることになる。
これらの効果は1つだけに限らずいくつも重ねて行うことができるので、より複雑な効果を生出すことも可能だろう。
 今回は確認することができなかったが、マニュアルによるとαチャンネルにも対応しているので、かなりのことができるだろう。
 そして、ノンリニアでの操作において必要不可欠であるデッキコントロールやバッチデジタイズであるが、ソフト的には完全に対応しており、9ピンでのコントロールも可能である(図19)。しかし、今回はコンピュータのパラレルポートを9ピンシリアルに変換するアダプターが入手できず、操作確認はできなかった。
 余談だが、デッキコントロールはSpeed Razor側からだけでなく、PVRのソフトでも制御可能である。ただし、こちらもパラレルシリアルポート変換アダプターが必要である。Speed Razor用との互換性は定かではない。


図16●Speed Lazorの全体的な操作画面。
右下にItem Infoのウィンドウがあるが、ここにコンポジションウィンドウのクリップ情報が出ている。またここでプレーバックもできる


図17●クリップ同士のフェードはグラフィカルに行うことができる


図18●効果をダブルクリックするとこのウィンドウが開き、効果のかかり具合やモーションを設定する


図19●バッチコントロールウィンドウ。
ディパイスコントロールを使ったデジタイズはこのウィンドウで行う。今回は動作確認はできなかった

最後に

 今回Raptor3、PVRを使用して、Speed Razorでの編集テストを行った感想だが、Speed Razorでの操作は非常にわかりやすく、かつ複雑なエフェクトまでかけることができ、ハイエンドの映像編集ソフトとして実感できた。ただ、最終レンダリングのスピードがRaptor3を使ったわりにはけっして高速だとは感じなかった(表4)。しかし、マルチプラットフォームということで、まだまだ発展の過程だろうから、ソフトがCPUの性能を充分に生かしきってくれるようになれば、ハイエンドマシーンと組合せることで無敵のソフトとなりうる実力は充分にもっているといえる。

 また、今回のテストでは英語マニュアルを使用したが、この本が出るころには、Speed Razorの日本語マニュアルも出るということなのでうれしい限りだ。もちろん現在の正規ユーザーには無償で届けられるそうである。
 Perception VRはまことによくできたボードで性能面でも十二分に満足できると確信する。DPS社は、今後、完全D-1対応のボードを発売する兆しがあり、ますます注目の会社である。筆者としては音声入出力も内蔵したボードをぜひ出してもらいたいと思う。
表4●3秒間のエフェクトをかけた場合のレンダリングタイム
※重いデータ同士の場合も、軽いデータ同士の場合もレンダリング速度にほとんど差がない。
 高速マシーンを使用しているわりに遅い印象を受ける。
 ところで、このPVRの日本総代理店であるメメックスは、古くからAMIGAを取扱っていたところで、CGクリエーターには古くから知られているところであるが、これを機に、DPS社の日本でのユーザーサポートなどをやってもらえればと強く切望する次第である。
筆者のPARやTBC IVのソフトのバージョンも上げられるし・・・・・・。
 余談だが、コンピュータ備品はもともとメカに強い人が買うわけで、値段の安いアメリカから個人輸入をする人も多いため、販売店が育たない(特にAMIGAなど)場合が多い。しかし、個人輸入は言葉の違いなどでトラブルになることも多い。今後は、いろんな人たちがコンピュータを始めることが多くなるであろうし、正規代理店のユーザーサポートがあれば心強いものである。そして、海外との値段格差が縮まればもっとうれしいのだろうが・・・・・・。
 アップルの業績不振がささやかれるなか、IBM互換機(WindowsやWindows95、WindowsNT OSマシーン)で操作性がよく、高性能のボードやソフトが出てくると、今後のノンリニアの行方もどう転ぶかわからない。ソニーもノンリニアの編集機をIBM互換機に載せて出すようだし、ますます興味津々である。
 ただ、Macと違い、IBM互換機の場合、周辺機器の選択肢が広く、場合によっては動作しないこともありうる。そんななか、自分でシステムを構築するにはそれなりの知識が必要となってくる。
 Speed Razorのような映像向けのハイエンドソフトの場合、メーカーからある一定の性能を発揮できる基本セットで販売することも考えたほうがいいだろう。
そうすることにより、導入する人がすんなり受入れられるのではなかろうか。
 いずれにせよ、ノンリニア編集機の戦国時代はまだまだ続きそうである。

●価格
Speed Razor:\22万5000
Razor Pro :\12万8000
Perception:\36万5000
Raptor 3(スタンダードシステム):\288万
●問い合わせ先:プロピックス営業部(tel:03-5566-2725)

 
ビデオアルファ1996年4月号