映像制作


●WindowsNT版 MCXPressについて

(1)システム構成について

 NT版MCXPressの場合、ソフトウェアでの販売となっており、これにキープロテクトが同梱されている。ビデオボードにはトゥルービジョン社のTARGA1000またはTARGA2000シリーズを別途用意しなければならない。ハードにはi486以上を必要とし、OSにはNT3.51(Service pack3)が必要である。またRAMは、24Mバイト以上を推奨している。なおCPUには、できればPentium以上を使用したほうがよいだろう。今回は、Pentium Pro200MHzにRAM128Mバイトを搭載したマンーンでテストを行った。


写真2●アビッドMCXpress WindowsNT版

(2)基本性能と使用感

 NT版の基本スペックは、搭載するTARGAボードの性能に左右される。今回は、当初TARGA2000DTXで行う予定であったが、テストで使用したMCXpressはバージョンが1.0だったため、まだDTXに対応していなかった(1.01からは対応しているそうだ)。そのため、TARGA2000PROを搭載してテストを行った。
 TARGA2000PROを搭載した状態での基本スペックでは、CCIR準拠の720×486ピクセルの解像度で30フレーム/60フィールドでの入出力が可能である。転送レートは基本的にボードの性能に左右されるはずであるが、今回のテストではちょっとおかしな結果が出た。
というのは、使用したWIDE SCSIディスクについて、TARGAの入出力インターフェースでディスク速度を測ると、5425kバイト/秒をクリアしており、そのままデジタイズしても問題なくできたのだ(図10)。ところがMCXpreesにて使用可能速度を測ると、96kバイト/フレーム(換算して2880kバイト/秒)を示し(図11)、110kバイト/フレーム以上ではオーバーフローで入力ができなかった。ひょっとしてNT版においても、Mac版同様に転送レートの制限を与えているのだろうか。だとしたら、TARGA2000DTXなどのさらに高速転送の可能なボードに対応したとしても、意味が薄れてしまう。ただし、今回はRAIDディスクでテストを行っていないので、実際はもっと出るに違いないと思うのだが・・・・・・本当のところはわからない。
 そこで、さっそくアビッドに問合せてみると、テストで使用しているVer.1.0では若干制約があるが、1.01ではRTXで220〜250kバイト/フレームの報告もあるそうだ。また年内にアップグレードする予定の1.5では、DTXで300〜400kバイト/フレームくらい出せるようになるかもしれないということだった。これは、Mac版よりも高画質での入出力が可能になるということなのだろうか。
 ところで、NT版はMac版のように重厚な感じはなく、いかにもWindowsといった感じであるが、基本的にはMac版と似ている。また操作も、それに類似している。たとえば、デジタイズの際も波形をきちっと表示してくれるし、AUDIOのレベル調整も可能である(図12)。しかし決定的な違いとして、エフェクト類の高速レンダリングがサポートされていない点と、ノンドロップタイムコードにしか対応していない点が挙げられる。TARGAボードにはDSPチップが載っているのだから、今後はぜひ対応してもらいたい。タイムコードのドロップ対応については、今後は対応する可能性も残っているようだ。
 なお、NT版のアドバンテージになっているものもいくつかある。たとえばプラグインエフェクトを使ったフィルターエフェクトの種類が多いということだ。このへんはいろいろ遊べるかもしれない(図13)。
 また編集後のテープへの戻しは、4chのAUDIOをミクシングしながら行える。この際、編集シーケンスのイン点/アウト点間、またはシーケンス全体を指定したタイムコードに戻すことができる(図14)。


図10


図11●今回のハードディスクの条件で、TARGAのユーティリティで直接測定すると5425kバイト/秒(18ikバイト/フレーム)をマークし、この値で問題なくデジタイズできた。MCXpressでの測定では96kバイト/フレーム(2880kバイト/秒)を表示し、120kバイト/フレーム(3600kバイト/秒)でなんとかデジタイズできるが、それ以上はオーバーフローの注意が出た


図12●デジタイズしながら波形やAUDlOのモニターができる(NT版)


図13●Filter Editor(NT版)


図14●Audio Mixing(NT版)



図15●NT版でのトリミング

●総合

 Mac版とNT版のMCXpressをテスト操作して感じたことは、汎用の編集ソフトとは比較にならない、操作性の良さと気品があるということだ。そして、細部まで気配りされた完成度を感じた。特に映像信号の入出力時の波形モニターによる信号管理は万全であり、テープヘの戻しの際にカラーバーなどの各種基準信号を発信できたり、また出力している信号のセットアップレベルなどの変更ができたりする点など完璧であろう。またタイムコードを使ったデッキコントロールも確実にこなしてくれるなど、実際の業務に使用するのに必要不可欠な、基本的なことがしっかりしている。

 しかしMac版では、通常のMacのインターフェースとは違ってアイコンや隠れた操作法(ショートカットなど)が多いため、マニュアルなしにはちょっと迷うことがあった。これは慣れるまではつらいかもしれないが、いったん慣れてしまえば繰作性はさらに向上するだろう。そんなわけで、先にも述べたようにマニュアルの日本語化を早く行ってもらいたいものだ。
  Mac版とNT版では、ソフトの基本コンセプトは同じであろうが、製品としてのコンセプトは違うように思う。自社のビデオボードを載せた、いわばメディアコンポーザーというサラブレッドの血を引くMac版と、今後台頭してくるであろうNTという大海原で他社のボードと共存しながら、今後続々と登場してくるだろう他社製ノンリニア編集ソフトと激戦を繰広げなければならないだろうNT版は、今後いかなる成長をしてくれるであろうか。

図16●Mac版に付属のTimecode Calculator
 最後になったが、現在Mac版はオプションで1/3圧縮のAVR75に対応しているが、11月末のアップグレードでは1/2に対応するようだ。またこの際、3次元のリアルタイムエフェクトが可能なオプションも出現するらしい。
 ここで一言・・・・・・。
 機能や性能で比較しながらメディアコンポーザーにするかMCXpressにするかを考えるより、この際、値段(予算)で決めたほうが手っ取り早いのかもしれない。どうせ上位機種にアップグレードできるわけだし・・・・・・。
 秋の夜長、あなたはどう過ごされますか。
■機材協力:アップルコンピュータ、フォーカルポイントコンピュータ、メルコ  
ビデオアルファ1996年11月号