映像制作


■『Gaudi』による高品位3D DVE

 そして、今回の目玉である『Gaudi』による3D DVEの使用方法であるが、『Gaudi』のエフェクトを使用するには、まずTransitionから『Gaudi』を選択する(図9)。つぎにCustomボタンをクリックすると、『Gaudi』のインターフェースが現れる(図10)。
 『Gaudi』の3D DVE設定は大きく分けると12のパラメーターからなっている。これらパラメーターは画面左にそれらの働きを示したアイコンで表示されている。このアイコンを選択するとその項目における設定項目が下部に現れるので、バーをスライドしたりもしくは数値入力することで値を変更する(図11)。これらの値は、直接アイコン上でクリックアンドドラッグすることで設定することもできる。設定された内容は、確定のキーフレーム(画面下の△を打つことで設定)を確定していく。その際これらの動きを直線的にもスムーズにも設定できる。
 では、これらの12のパラメーターにはどのようなものがあるのだろうか。
1)size:ここでは画面のXY軸の2次元での大きさを設定する
2)Perspective:ここでは、XYX軸での遠近感を設定することができる
3)Skew:ここでは、歪みの設定をする
4)Crop:ここでは必要範囲の切り抜きを行う
5)Movie Scene:ここでは、映像の移動(動き)設定を行う
6)Rotate:回転を設定する
7)Axis:軸を設定する
8)MoveCamera:見た目(カメラ位置の)多動を設定する
9)Key:キータイプの設定
10)Border:映像周りの縁取りの設定
11)shape:映像に与える変化の選択と設定を行う
12)Highlight:ハイライトの設定による反射の設定を行い、よりリアルに3DDVEをつくることができる。
『Gaudi』ではこれらのパラメーターを設定することで、無数の3DDVEをつくることができる。つくったエフェクトには名称を与え保存することができるので気に入った効果は何度でも使用することができる。なお、『Gaudi』にはあらかじめ約80種類のエフェクトが添付されているので、最初はこれらから使用すればよいだろう。そして必要に応じてこれらを少しずつ変化させることで、簡単にしかも速く好みのエフェクトを作成できるだろう。


図9●『Gaudi』効果はトランジションかカら選択して行う


図10●『Gaudi』のインターフェース

 


図11●『Gaudi』の12種類のパラメーター


図12●Gaudiにあらかじめ添付されているエフェクトのうちのいくつかのパターン

 さて、『Gaudi』を使っての感想であるが、作成されるエフェクト類は放送レベルで通用する気品のある上質のものといえる。これらのエフェクトを放送用の3D DVEシステムでそろえるとかなり高価になってしまうだろう。しかし、筆者は実のところ今回のテストまで『Gaudi』はリアルタイム3D DVEができると思い込んでいた。ところが、実際のところ『Gaudi』にはレンダリングが必要だった。そこで実際に標準添付3D DVEの1秒間のエフェクトのレンダリング時間を計測すると約47秒であった。
 はて、この約47秒の時間はいったい短いのだろうか長いのだろうか。
 そこで、Adobe Premiere4.2で3次元DVEプラグインの『Boris Effects』を使用して1秒間の3DDVEを行ってみた。マシーンは同様のものを用いた。そのときの時間は、おおむね2分20秒〜3分30秒だった。このときエフェクトの設定は、標準添付された一般的なものだ。もし、設定をもっと複雑にすればもっと時間がかかったであろう。
 しかし、ここで断っておかなければならないのは、Boris Effectには『Gaudi』でいうShapeの設定はない(図13)。つまるところ、PageTurn、CenterBurst、MultiWave、Sphereなどの設定はできない。つまり平面の状態のフレームを3次元に飛ばしたりしているにすぎない。仮にもしできたとしても、さらにもっと多くのレンダリング時間を有するであろう。

図13●Shapeの種類
 つまり、『Gandi』はこれらの特殊効果を超高品位に処理しているにも関わらず47秒で終わらせていることになる。これらは編集ソフトが違うので比較にはならないかもしれないが、この高速処理を行っているのは『Gaudi』に搭載されたCPUとDSPによって行われている。
 しかし、願わくばこの処理速度がVincent601のFastFXと同様の8秒くらいまで縮まってくれたらと思うのは筆者だけではあるまい。もちろんリアルタイムになってくれるとしたらうれしい限りだ。『Gaudi』の製造元であるピナクルシステムズは3次元DVEとスイッチヤー、そしてペイント機能が付いたPC向けのボード『Genie Plus3.0』を発売しており、リニア編集においてはすでにリアルタイムを可能にしている。ノンリニアにおいても、近々対応予定である。つまり、『Gaudi』においても将来像としてリアルタイムが可能なように設計されているのではないかと推測される。現在、MEDIA100は完全リアルタイム化を目指し次期バージョンの開発が押し進められているようだ。また、8月発売のHDRfxオプションはMovie 2 Busを使ってDual Streemを実現し、ディゾルブ、ワイプなどの21種類のトランジションを1/2高画質で完全リアルタイム処理する。MEDIA100の進歩が、真のノンリニア編集時代の到来へまた一歩近づけてくれるだろう。
ビデオアルファ1997年5月号