映像制作


■Switcher機能(図4)

 Switcherカードは、D-1非圧縮の映像を60フレーム/秒の精度で同期スイッチングが可能なスイッチャー機能をもっている。Trinityにおける最も重要な核をなすのがこのスイッチャー機能といえるだろう。TrinityではLive D-1 Production Switcherと呼ばれており、このスイッチャー機能の性能が卓越していることが、以後述べる他の機能を最大限に引さ出せるもとになっている。
 では、Trinityのスイッチャー機能を紹介しよう。
 まず、入出力系だが、8chのライブビデオ入力、ワイプ/カラーマットジェネレーター、2chフレームストア(静止画)、ブラックパースト(基準信号)、プログラム出力(最終出力)、プレビュー出力など多数の映像信号を扱うことができる。
 そして、これらの信号を切り替えるワイプやトランジションシステムに標準的なSMPTEワイプパターンは当然ながら、Trinity独自の多彩なエフェクト類が用意されている。たとえば、多彩なワイプパターンや本格的な3D DVE、また24ビットのグラフィックアニメーションをトランジションとして使用することができるアニメーションエフェクトなどである。
 また、これらの映像に対して、テロップ(タイトル)合成やクロマキー合成も行うことができる。


図4-2 カラーコレクション機能は入力ボードにすべて
搭載されている。編集時は各編集ソースに対して個別に
設定することができる

図4-1 Trinity Switcher。オーディオ制御も可能だ

■デジタルエフェクト、DVE機能

 Trinityの特徴を最も表す機能がリアルタイムデジタルエフェクトだろう。
 DVEは2次元だけでなく3次元のDVEも得意である。Trinityの特徴として普通の3次元効果にとどまらず、直方体や球、円筒形、波面などの一部や全部に対して入力映像を投影表示させることが可能となっている。しかもこれらはリアルタイム処理される。これは、ハードウェアとしてWarpEngineモジュールを使用しているからだ。そして、特質すべきは、オリジナルの3D DVEを付属のPersonal FX(図5)により自分でつくり出すことができる点だ。
 3D DVEの制作方法は、ソフト上であらかじめ用意されているプリミティブオブジェクトを変形させたり、あるいは外部からオブジェクトをインポートしてそれらをX、Y、Z軸で移動、回転させながらキーフレームを打っていく。これらはいったんつくってしまえば、保存することで何度でも呼び出して使用することができる。
 ところで、Personal FXにインポートして使用できる3DソフトのオブジェクトファイルとしてはLightWave 3D、3D Studio MAX、Softimage 3D、ElectricImageなど可能のようだ(現時点ではこれらすべてできるかどうかは不明)。
 また、スイッチャーのクロマキー合成との連携でバーチャルセットの作成が可能となっている。図6はメメックスの簡易クロマキーシステムを使って筆者をバーチャルセットに合成したところだ。水面ややかんに筆者の影が映り込んでいるのがわかる。


図6 バーチャルセット。クロマキー合成した映像が、周辺にも反射している


図5 Personal FXでDVEをつくり出せる

■編集およびVTR制御機能

 Trinityの編集ソフトウェアがPreditor(図7)だ。Preditorを使用することで、TrinityはRS-422シリアル(9ピン)コントロールにより4台までのVTRを制御しABCロール編集を行うことができる。また、近々発売されるノンリニア用のボードTimeMachineを組み込むことで、リニア/ノンリニア編集を複合的にコントロールしながら編集を行える。これにより、いままでとは異なったアプローチで素早くエフェクトや編集を行えることになるだろう。
 Preditorのインターフェースはどちらかというとノンリニア編集ソフトに似たインターフェースをもっており、ノンリニアの編集に慣れた人にとっては非常にわかりやすいといえるだろう。実際のところ、後述するノンリニアシステムの編集も可能となっている。
 つまり、映像や静止画などをタイムラインに並べていき、映像の切り替え点にトランジション効果をドラッグ&ドロップすればよい。VTR映像を編集する場合はPreditor側からデッキコントロールを行いながら、IN点とOUT点を打つことで、映像のタイムコード情報のみを作成し、これらをタイムラインに並べていく。デジタイズされたビデオデータを編集する場合は、Binから必要なビデオクリップを選びタイムラインに並べていく。
 タイムラインでの編集が終了すると、アッセンブル編集にて自動的に最終編集が行われる。つまり、リニア編集用のデータの場合ソフトウェアから必要なビデオが要求されるので、そのビデオテープを送り出し側のVTRに入れると自動的に編集録画VTRに編集されていく。もちろんワイプや3D DVEなどはすべてリアルタイムに処理されていく。
 さて、ウィンドウに表示されているBinには自分が必要とする素材を表示させておけばよい。ちなみにこれらのBinは単にディレクトリ内を表示しているにほかならないので、ここからディレクトリ間で素材のコピーも可能だ。
 ところで、Preditorの中央に2つのモニター画面(PreviewとProgram)が表示されているが、これを可能にするには、オプションでClipGrabボードが必要だ。
これがない場合は、外部にNTSCのモニターが必要になる。


図7 編集ソフトPreditor
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ビデオアルファ1998年9月号