映像制作


  日経BPから『Premiere 5.0によるノンリニア編集完全制覇』というビデオパッケージが1月20日に発売になった。このビデオはノンリニア編集をこれから始めようとしている人やPremiere5.0を導入して間もない人など、初心者からプロまで役立つように製作したHow toビデオだ。ノンリニア編集での筆者の実際の経験を採り入れているので、すでにノンリニア編集を使いこなしている人でもためになるようにしているつもりだ。今回はこのビデオの製作秘話をお届けしたい。

『Premiere 5.0によるノンリニア編集完全制覇』VP制作のいきさつ
 著者は本誌でもいろいろ執筆をさせてもらっているが、日経BPの月刊誌『日経CG』(定期購読および一部の書店販売のみ)で「Digital Video Wonderland」というコーナーの連載をしている。もともと「日経CG」はCADやCGを主にした雑誌であるが、最近はデジタル合成やノンリニア編集の台頭のため、筆者がビデオの基礎知識を含めたノンリニア編集のコーナーを担当しているわけだ。
今回のビデオは「How toビデオをつくったらどうか」という筆者の提案と、「初心者にためになるビデオ、とりわけAdobe Premiere5.0を使った解説ビデオをつくったらどうか」という編集部からの要望で、実際の制作が進んでいくことになった。
 実際にこの話がでたのは、昨年の夏くらいではなかったかと思うが、諸事情で実際の製作は10月くらいから始めることとなった。

第2部「デジタルビデオの基礎知識」内の、ノンリニアの基礎知識の説明(左)と業務で使うためのワンポイントアドバイス(右)

第3部の「Premiere5.0による編集術」内では、Film素材を用いてPremiere5.0編集術を解説している
売れるためのビデオ構成を考える(映像素材は16mm Filmで撮影!)
編集部との打ち合わせで、ビデオの構成は3部構成をとり、1部では実際にデジタルノンリニア編集システムを導入しているユーザーレポートを、2部ではデジタルビデオ(ノンリニア編集)の基礎を、そして3部ではPremiere5.0の編集方法を述べることにした。
 ここで、ユーザーレポートやデジタルビデオ(ノンリニア編集)の基礎を述べたのは、編集ソフトにPremiere5.0を使用していない人でもためになるようにという配慮と、購買対象を広げたいという下心も少しある。
 そのため第1部のユーザーレポートではCGプロダクション、学校、大学病院、デザイン事務所、映画、VFXプロダクションなどできるだけ業種を広くし、使用している機材やソフトも限定しないことにした。その結果、これらのレポートはこれからノンリニア編集システムを導入しようとしている人にとって、なんらかの形でためになるはずだ。
 第2部のデジタルビデオ(ノンリニア編集)の基礎は、本誌を初め本誌別冊や他誌で筆者がいままで述べてきたことについてをまとめて話すことにした。
 さて、第3部の「Premiere5.0による編集術」が本来の一番中心となるところだ。ここで困ったのが編集で使う映像素材である。How Toビデオが実際どれくらい売れるかわからない状況では、制作費もそう多くはかけられない。しかし、チープな映像素材ではいやだし…。いろいろ考えた末、このビデオパッケージの編集をすべてノンリニア編集機、しかもPremiere5.0で完パケまでつくってしまえば、編集費が浮くしPremiere5.0による編集能力も証明できる。そして、編集費が浮いたぶんで、素材映像の撮影予算が組める・・・などと考えていると、仕事仲間であるO氏から「どうせ撮るならFilmでやりましょう」という声が上がった。
 O氏はシネカメラマンでもあり、デジタル合成を行うデジタルクリエーターでもあるわけだが、O氏に撮影を依頼するとかならず第一声は「Filmでやりましょう」である。ホントはビデオカメラを使えないのではないかと思うほど、かならず「Filmでやりましょう」といってくる。だから今回も最初は無視したのだが、「山田さんにしかできないことをやりましょうよ」の一言ですっかりその気になってしまった。

「Filmで撮りましょう」とかならずいうOカメラマン

映像素材の撮影風景
映像素材の出演者を決める
Filmで撮影するとなると妙に力が入ってくる。どうせやるなら映画の予告編風の映像を撮ろうと思った。
リュック・ベンソンの『ニキータ』にしようとスタッフにいったらかなり盛り上がった。ロケハンを行いながら、発砲シーンも入れるぞ…等と意気込んでみたが、そんな予算はどこにもないことにふと気づさ、スタッフをその気にさせたことを反省した。役者は鈴木省吾さんとひがし由貴さんという舞台を中心に活躍している演技派の2人にお願いすることにした。
 加えて、日経CGで連載記事を書いているCGアーチストのBUN SADAKA氏の音楽ユニット「C60Projects」も出演可能で、音楽も提供してくれるということになった。初めて会った翌日に音楽をミックスして送ってくれたのだが、その完成度の高さに驚いた。それもそのはず、1人は元シュガーのメンバーで、現在CMやVP、ゲーム等の音楽を制作しているという笠松美樹さんと、これからソロデビューが決まりそうだという弱冠20歳の宇高美里さんだ。十数曲送ってもらったうち、映像としてイメージできた曲「はじまり」(字高美里:作曲)を使うことにした。


舞台を中心に活羅している鈴木省吾さん(左)と、ひがし由貴さん(右)

C60Projectsの笠松美樹さん(左)と、宇高美里さん(右)

ユーザーレポート取材ロケ
 取材ロケはベータカムSPで行った。ここで、おじゃました方を簡単に紹介しよう。
 医療の現場として、東京医科歯科大学第二外科の長内孝之先生を訪ねた。先生は大学病院で乳がん、乳腺、消化器疾患を専門に、外来から外科手術、そして学会発表など非常にお忙しい方だ。ノンリニア編集は主に学会発表用ビデオの作成に使用されているということで、いままでに自分の発表分で約20本、医局用で30本、他の先生から頼まれて20本くらいをつくられたそうだ。使用されているマシーンはMac環境でTARGA2000とPremiere4.2のシステム。また、最近導入されたMotoDVとPremiereの組み合わせだ。取材では、Premiereを導入するに至った理由や医療の現場での利用ノウハウを聞くことができた。
 続いて学枚の代表として訪れたのは、慶応義塾大学、三田メディアセンターだ。慶応義塾大学は湘南の藤沢キャンパスなど、コンピュータやマルチメディアを利用した教育で有名だ。今回訪れたキャンパスの三田メディアセンターは、いままでの図書館のもつ情報提供のみにとどまらず、マルチメディアを駆使して情報の加工生産まで行うことを目的に建てられた、いわゆる近代図書館である。ここではその導入のきっかけを初め、学生たちがどのように利用しているかを金子康樹さんに聞いてみた。ここでの使用マシーンはWinNTをベースにしたDVMasterとPremiere4.2の組み合わせである。またWeb利用も考えMPEG2のエンコーダーも用意されているなど、教育の現場利用で興味深いお話を聞くことができた。
 デザインの現場として訪れたのは、オズボーンだ。
ここはMacを主体に歓媒体用のデザインを主に手がけているようだが、最近導入されたSGIのO2とPremiereのノンリニアシステムにより、クライアントヘのプレゼンテーションビデオを制作しているということだ。また、3DソフトのLightWave 3Dを加えることでCGのビデオ利用も行っているとのことだ。このあたりの経験論をアートディレクターの小俣俊司さんにうかがうことができた。
 映画の現場は、本誌でも何度か紹介されているのでご存じの方も多いだろうマリンポストである。ここは映画用のタイトルや予告、CG、マットペイントなどをFilm向けに手がけてきたプロダクションの老舗だ。映画館で流されている予告編の多くはここでつくられている。本編作品では、「モスラ」シリーズや「ゴジラ」シリーズを初め、「あぶない刑事」「ショムニ」などのタイトルや、合成映像を手がけている。以前はすべてMacベースでElectricImageやAfterEffectsなどを使用して仕事をされていたが、今回おじゃましたときは、DECマシーンがずらりと並びSoftimage 3Dや3D StudioMAXが導入されており、さらにスケールアップしていたのに驚いた。今回は、タイトルを担当されているデザイナーでタイトルエフェクトディレクターの竹内秀樹氏にお話をうかがった。
 最後におじゃましたのは、先にも述べたBUN SADAKA氏の制作現象だ。ここでは、10数台のコンピュータを駆使し、ちょうどハウスのCM用のCG制作が行われていた。取材ではPerceptionVRと3D StudioMAXを使った制作法。ハウスのCMでも使ったという、discreet logicのpaint*、effect*と3D Studio MAXでの使用について、またCMでの納品形態や方法を初め、お得意のOpenGLボードの話などを熱く語ってもらった。さらに、冒頭の日経CGのロゴの制作も行ってもらった。

東京医科歯科大学第二外科の長内孝之先生

慶応義塾大学、三田メディアセンター金子康樹さん

オズボーン、アートディレクターの小俣俊司さん

マリンポストのタイトルエフェクトディレクターの竹内秀樹氏

マリンポストのタイトルエフェクトディレクターの竹内秀樹氏

第3部のために16mmFilmで撮影した映像素材のほんの一部
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ビデオアルファ1999年4月号