映像制作


テロップの使用頻度はどのくらいか

 テロップの使用頃度がどれくらいかは、ノンリニア編集において非常に大きなポイントだ。通常、シングルストリームノンリニア製品の場合、テロップを使用する個所はすべてレンダリングする必要がある。一般的に企業向けVPの場合テロップの使用額度は多い。
VPの全体を通して常時出てくるような場合も多々あるだろう。このようなとき、ビデオの最初から最後までレンダリングしていたのではたまったものではない。これは完パケ尺が長くなればなるほどいえる。このような場合は思い切って白完パケのみつくって、テロップ入れはテープ編集でやる方法も考えられる。しかし、どうしてもノンリニアでやるのであれば、デュアルストリームのノンリニアシステムを選ぶことになる。これらのシステムには、リアルタイムテロップが編集ソフトウェアに付属している場合が多い。たとえば業界標準になりつつあるソフトInscriberのInscriber CGがそれにあたる。これはInscriberCG Xtremeの機能限定OEM商品だ。そのほか、Pinnacle SystemsのTitleDEKO等があり、これは同社のReelTime+Premiere5.1RTに付属している。


業界標準になりつつあるリアルタイムテロップソフトlnscriber CG

製作予算はあるか?また編集に時間はかけられるか?

制作予算がある程度見込まれる映像制作を、ルーチンワークとして行えるのであれば、オフラインからオンラインの編集、また合成映像などを1台でこなせるノンリニア編集システムを構築できるだろう。たとえば、discreet logicのsmoke*やAvidのSymphony、またSoftimage:DSなどである。これらは、非常に高価であるが、システム化されたインターフェースにより生産性のよい映像制作を行えるだろう。そこに払う対価は前述したように¥2000万〜3000万であるが、ポストプロダクションなどでは考える価値は充分にあるだろう。

 しかし、一般的な業務ではここまで予算は組めないだろう。その場合、編集作業の効率化に絞り込み、合成に関しては必要になってから別途合成ソフトを購入すればいいだろう。
  たとえば、Avid Media Composer、Avid MCXpress、StrataSphere、Media100xr、INCITE、Perception RT、ReelTime Nitro、DigiSuite(LE)などだ。これらは標準またはオプションで3D DVE用ボードを追加することで、2D、3Dのトランジションエフェクトや、もちろんテロップ、色補正などすべてリアルタイムにこなすことができる。ただし、操作性については付属する(または組み合わせる)編集ソフトウェアによって大きく異なる。概して、自社用のハードウェア向けに専用でつくられたソフトウェアは汎用の編集ソフトよりも操作性はよいといえる。AvidやMedia100は編集ソフトとしての完成度が非常に高い。StrataSphereは直感的に使用できるインターフェースやエフェクト効果が興味深い。Perception RTは非常にコストパフォーマンスが優れており、カスタマイズできる3D DVEは特筆ものだ。
ReelTime Nitroはpinnacleの高品位3D DVEが魅力で、DigiSuite(LE)はPremiere5.1RTとの組み合わせで、基本性能の優れたシステムを組むことができる。


  続いての対象は、リアルタイム性よりもコストを考慮したシステムだ。たとえば、ノンリニア編集をオフラインでのみ使用する場合や、白完パケまでをつくる場合が考えられる。リアルタイムエフェクトはできないが、ビデオキャプチャーボードのDSPチップを利用してエフェクトのレンダリング速度を高速化させたものもあるので、編集時間に余裕があればコスト的に安くすませることができる。テロップなどはテープベースのビデオ編集を使うなどすれば、時間的に効率よい作業ができる場合もある。将来的にリアルタイムエフェクトに移行したい場合、TARGAシリーズやMedia100シリーズを購入しておけば、アップグレードも可能だ。

非圧縮オンラインフィニッシングシステムAvid Symphony

デュアルストリーム対応ロスレスノンリニアビデオシステム
Matrox DigiSuite。Premiere5.1RTにも対応

Media100xrにパソコンやディスクアレーなどをセットした
ターンキーシステムMedia100Complete

カノープスDVRex-M1の3 D DVEを高速化する
アクセラレーターボードRex fx
 さて、最後に筆者がお薦めする最もコストパフォーマンスがよい編集システムは、DVを用いたノンリニア編集だ。特にカノープスのDVRexは非常に優れた操作性をもっている。付属のRexEditでは基本的な編集作業が簡単に行えるし、トランジションの計算時間も他より速い。また、専用のテロップ機能ももっており、通常の業務用テロップ作業では充分だろう。最新バージョンではAdobe Premiere5.1のプラグインを同梱するので、Premiere上で使用することもできるようになった。また最近、3D DVEを高速化するボードが発表になった。
正直いって、最近のカノープスの開発力には感心してしまう。この3D DVEアクセラレーターボードの真価は機会があったらレポートしたい。

表1 最終フォーマット・機能別、主なノンリニアシステム一覧

おわりに

 さて今回、いかにして効率よいノンリニア編集を行うかを考えてみたのだが、結論からいうとリアルタイムエフェクトが大きな鍵を握っている。一度これらのエフェクトを使ってみると、従来のレンダリングによるエフェクトには戻れない。
 結局のところ、リアルタイムエフェクトを搭載したノンリニアマシーンでオンライン編集まで行うことが最も効率のいい編集方法だと思う。もし、コスト的に余裕がなかったら、2Dまでのリアルタイムエフェクトまでとりそろえ、3D効果は必要なときのみビデオ編集室で行うのもいいだろう。もう少し予算のない場合、OL部分ののりしろ部分を含めてカット編集し、この編集した映像を元にビデオ編集室で編集したらどうだろうか。特にDVを素材としている場合は基本的に映像の劣化はないわけだから、この方法はオンライン編集のコストを大きく抑えることができるだろう。
 ノンリニア編集に向かないのではないかと思えるのは、結婚式のビデオのように延々と長回しをする映像だ。この場合、もしテープデッキがもう1台あるのならタイトルやエンド部分を除いて、テープベースでビデオ編集したほうが編集時間は速くすむだろう。このあたりはどのくらいつくり込むかにもよるが…。

ビデオアルファ1999年4月号