映像制作


 今年のNAB2000でdiscreetから「combustion」(図1)が発表されたときには、非常な衝撃を感じたのを覚えている。そしてNAB後、discreetは日本でもいくつかのプライベートセミナーを開き、combustionをお披露目しているが、どこの会場でも非常に注目度が高く、評判も上々だ。そのcombustionが日本でもいよいよ発売になる。今回はこのcombustionの槻要を解説し、実際の使用感などは改めて近日中にレポートしたい。

■クリエーター魂に火が着くか!

 combustionはペイント機能とコンポジション機能を統合した動画像合成ソフトウェアだ(動画像合成ソフトウェアにはAdobeのAfterEffectsなどがあるが、AfterEffectsにはペイント機能は付いていない)。つまり、1つのソフトでありながら、ペイント機能とコンポジション機能を切り替えながら使用することになる。実のところ、discreetが扱っている「effect」と「paint」を統合した製品ともいえるが、プログラムは改めて書き直されており、「effect」、「Paint」より機能・性能ともに進歩している。たとえば、「effect」と「paint」に比べ操作反応も速くなっている。このcombustionの登場で「effect」と「paint」は姿を消すことになり、combustionはinferno、flame、flintの最下位モデルという位置付けになる。これはいい換えればflame、infernoへの導入モデルということであり、combustionの名前そのものである「着火、燃焼」を意味する。  combustionには数々の目新しい機能が搭載されている。たとえば、RAMキャッシング技術によりリアルタイムエフェクトが行える。この新機能は従来のRAMプレビューとは異なり、一度キャッシングしたデータを使用してリアルタイムエフェクトが可能となる。これにより作業効率が数段アップするだろう。  また特筆すべきは、infernoやflameと同等のトラッキング機能が搭載されていることと、なんといってもinferno譲りのキーイング、マットコントロールができることだろう。これ欲しさにcombustionを求めたくな る人も多いはずだ。また、combustionで作成したデータをinfernoなどで活用できるので、combustionとinferno のコンビネーションにより、高いコストパフォーマンスも期待できるだろう。  このほか、combustionのもつ3D合成機能と3D Studio Maxなどの3D CGソフトウェアや、編集ソフトであるeditとのコンビネーションプレーにより、inferno、smokeなどの上位機種にも負けない合成編集作業が可能となる。では、以下に「combustion」の機能をざっくりと紹介しよう。

■combustionの各種機能

●高級感溢れるインターフェース(図1)

 インターフェースは、discreetの上位製品であるinferno、flame、flintなどのインターフェースを受け継いで操作性に優れているとともに、見た目にも非常に高級感がある。高級感があるインターフェースは操作していて気持がいいのは筆者だけではないだろう。  ビュー画面はカスタマイズすることで複数の異なるエレメントの結果を同時にプレビューでき、最大4画面でのマルチモニター構成で使用できる。


図1●combustionの作業画面。discreetの上位製品であるinferno、flame、flintなどのインターフェースを受け継ぎ操作性に優れている

●強力な3D合成機能(図2)

 combustionの特徴の1つが、3次元空間での合成機能だ。これは3D CGソフトのように合成する画像(オブジェクト)を3次元空間に配置し、アニメーション可能な自由なカメラ、無数のライトを使用して合成を行うことができる。AfterEffectsなども3Dツールが用意されているが、これらは単に指定した画像を3次元で回転・移動できるというだけであるが、combustionの場合、画像間の影や複雑な動きに対する複雑なモーションブラーなど、完全に3次元での合成処理が可能となっている。


図2 強力な3D合成機能。3D CGソフトのように合成する画像(オブジェクト)を3次元空間に配置し、
アニメーション可能な自由なカメラ、無数のライトを使用して合成を行うことが可能

●ベクトルベースのペイント機能(図3)

 オブジェクト指向プログラムにより、途中の作業のみのやり直しも容易に行える。また、ベクトルベース ペイント機能のためペイントのアニメーションも簡単に行える。これらは「paint」の機能を継承しているが、RAMキャッシング技術によりブラーやエンボスなど30以上のリアルタイム(エフェクト)ドローが行える。


図3●ベクトルベースのペイント機能。ペイントのアニメーションが簡単に行えるとともに、
RAMキャッシング技術により ブラーやエンボスなど30以上のリアルタイム(エフェクト)ドローが可能

●inferno譲りの高性能キーイング、マットコントロール(図4)

inferno譲りのハイクオリティのブルー/グリーンスクリーンのキーイング、マットコントロールツールであるdiscreet Keyerは非常に高度なキーングとマット作成が可能だ。キーはRGB、YUV、HLS、チャンネル、ルミナンス、RGB-CMYKなど多角的にコントロールでき、必要なキーを少しずつ追加していくことが可能だ。これらはかなり細かい制御が可能で、discreetの他のエフェクト/編集システムのキーヤーと100%の互換性をもっている。そして、セットアップデータをインポート/エクスポートが可能なので、combustionのキーイングデータをinfernoで使用することもできる。


図4●inferno譲りの高性能キーイング(上)/マットコントロール(下)。キーはRGB、YUV、HLS、チャンネル、ルミナンス、
RGB-CMYKなど多角的にコントロールでき、必要なキーを少しずつ追加していくことが可能
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ビデオアルファ2000年9月号