映像制作


●カスタマイズ可能なエフェクトフィルター

 リアルタイムエフェクトフィルターとしてTARGA3000 Filter(図8)が搭載されている。 TARGA3000 Filterは映像やグラフィックスに対してどのトラックでも使用でき、レイヤーで重なった映像に何重にかけることもできる。TARGA3000 FiiterにはTARGA3000 Transitionに搭載されているワイプの動きを与えることや、キーイング(グリーンクロマキー、ブルークロマキー)を初め、色調などの調整ができる。 これらはあらかじめ用意されているが、それらを細かくカスタマイズして自分のオリジナルフィルターをつくることもできる。
 実はこのカスタマイズをする部分を見ると1つのフィルターがいくつものファクターで構成されているのがわかる。これらのファクターがいくつあってもリアルタイム処理できるわけで、つまりは重ねられたレイヤーの映像(最大8レイヤー)をリアルタイム再生できることになる。これがTARGA3000のメモリー・セントリック・アーキテクチャーでHUB 3によるものである。
 このほかにも、映像の再生スピードも可変させることができる。


図8 TARGA3000FilterはDVE、キーインク(グリーンクロマキー、ブルークロマキー)を初め色調などの調整ができる。
上最は色調整の設定パネルとその効果。左下は、キーインクの設定パネル

●強力なタイトル作成機能(TitleDeko)

 標準のPremiereの弱部はテロップ(テキスト)機能の貧弱さにある。TARGA3000には同社のキャラクタージェネレーターTitleDeko(図9)が添付されたことで、非常に強力になっている。
 TitleDekoのインターフェースはあらかじめ用意されているタイトルパターンを使用して迅速にタイトルをつくることができるようになっている。色やエッジを初め、影、バックグラウンドなど基本的に使用するものはすべて用意されている。もちろん、これらのファクターを後で細かくカスタマイズもできる。映像編集時に必要な基本的な内容はすべて搭載しており、静止のほか、ロールやクロールもリアルタイムで処理できる。


図9 キャラクタージェネレーターTitleDeko。操作画面(左)とプリセットのタイトルパターンの一部(右)

●TARGA3000のリアルタイム編集作業の実力

 さて、今回premiereを使用して感じたことはそのリアルタイム性にある。3ストリームの非圧縮映像+6ストリームのグラフィックスを重ねてもリアルタイムに合成してくれるので、作業の効率は格段に上がる。ここでいう3ストリームの非圧縮映像とは、異なった3つの映像ということで、もし同じ映像を同じ位置で再生させるならさらに多くの動画映像を扱えることになる。つまり、3つの映像のうち1つの映像をPremiereのレイヤーに多重に並べ、これらの映像に別々のエフェクト効果をかけた場合でもすべてをリアルタイム処理することができる(図10)。
これこそが、HUB 3の威力ということができる。これらのリアルタイムも使っているうちに、あたりまえに思えてしまうから困ったものだ。多分、ほかのシステムで同様なことを行おうとすると膨大なレンダリングという事態が待っているに違いない。
 ただ1つ気がかりなのは、メモリーを512Mバイト搭載しているにもかかわらず、操作が重たく感じるときがあった。これは、Premiereの特性(問題?)なので仕方ないが、非圧縮映像を扱うにはもう少し多くのメモリーを搭載する必要があるかもしれない。今後Speed Razorやeditなどの編集ソフトがTARGA3000に対応した場合はこれらの問題はクリアーされるだろう。


図10 同じ映像を同時再生させれぽ、さらに多くの動画トラックを扱える

■添付されている強力なソフトウェア  

Pinnacle Systemsが近年多くのソフトウェアベンダーを買収したため、それらの多くの資産が同社のハードウェアに添付されている。最も強力なソフトウェアはCommotionだ。 Commotion Ver.3.0はいわずと知れた合成処理ソフトウェアで、モーショントラッキングのほか、ペイントツールなどを使用してロトスコーピングができる。TARGA3000にはCommotion Ver.3.0 DV(図11)が同梱されている。使用できる解像度の制限以外は同じ機能が使用できる。
 このほか、DVDオーサリング用にMinerva Impression DVD(図12)が同梱される。Minerva Impression DVDはマルチアングルにも対応した本格的なDVDオーサリングソフトウェアだ。  そして、Web用ストリーミング映像の制作用にSonic Foundryのstream Anywhere LE(図13)が同梱されている。



図12 DVDオーサリンク用にMinerva ImpressionDVDはマルチアンクルにも対応した本格的なDVDオーサリングツールだ


図13 stream AnywhereLEでWebストリーミンクに吐き出せる

■最後に

 TARGA3000を一言でいうと、トリプルストリーミングに対応したハイスペックな非圧縮ノンリニア編集マシーンである。しかし、それとともに、DVやMPEG2編集も行え、DVDオーサリングやWebストリーミングにも対応した高品質マルチメディアツールであるということもできる。機能、性能、同梱されるソフトを考えると価格面でもコストパフォーマンスは非常に高いといえるだろう。
 今回、TARGA3000を使用するまではその仕様をオーバースペックにさえ感じていたが、実際に使用して感じたことは、リアルタイム編集の気持ちよさだった。やはり、ハードウェアに余裕があると編集作業も効率よく行うことができることを実感した。しかし、扱うデータ用が大きいとメディア用のハードディスクやメモリー量などのハードウェアスペックも要求されるのでシステム構築の際は的確な知識も必要になる。  TARGA3000を使用してノンリニア編集システムのさらなる可能性を再認識させられた。

価格:115万〜 問い合わせ先:ピナクルシステムズ・カスタマーサポートTEL03(5465)0648
ビデオアルファ2000年12月号