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●自由度のあるカラーコレクション
カラーコレクション機能もcombustionの優れた機能の1つだ。discreet Color correction(図13)のデータも他のdiscreet製ハイエンドシステムと100%互換が保証されている。
マスター以外にチャンネルやハイライト、ミッドトーン、シャドーなどの明るさごとにもカラーコレクションを施せるので、非常に細かい調整が可能となっている。特に異なるイメージ画像と正確にしかも自動的にカラーマッチングを行える機能は、条件の異なった状況下で撮影した映像を見事にマッチングさせてくれる。
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図13 discreet Color correction
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●ベクトルベースのペイント機能
combustionには合成機能のほか、ベクトルベースのペイント機能が搭載されている(図14)。
ペイント機能とは単に色をペイントする以外に、ブライトネスやスムーズ、ブラー、など30以上ものエフェクト効果を適用することができる。これらのペイント情報はすべてベクトルベースで作成されるため、変形やアニメーションを自由に設定することができる。
ペイント機能を使う目的として画像中の不要な部分の修正が考えられる。このような場合は、単にペイントするのではなく、隣接の類似した画像データをクローン情報としてもってくることで、ほとんど見分けのつかない映像をつくり出すことができる。
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図14 ベクトルベースのペイント機能
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●テキストの表現
combustionではpostscriptやTrueTypeのフォントを使用した高度なテキスト表現が可能だ。
テキスト文字は1文字ずつアウトライン化され、1文字ずつあるいは文字全体でのアニメーションも自由に施すことができる(図15)。
基本的にはペイント機能と同様な扱いが可能となる。もちろん、3次元空間で扱えるので工夫次第では非常に面白い効果も期待できる。
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図15 1文字ずつあるいは文字全体でのアニメーションも自由に施すことができる
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●標準搭載のエフェクトプラグインとサードパーティ製プラグイン
さて、combustionに標準で搭載されているフィルターの数はけっして多いとはいいがたいが、それでも有用で品質の高いフィルターを備えているので、エフェクトを掛けた作品の品質が格段に上がるのは間違いない(図16)。また、フィルター数が少ないとはいえ使用したい基本的なフィルターは備わっているので、充分納得はできるはずだ。
物足りない場合はAdobe PhotoshopやAfterEffectsのプラグインも使用できるようになっているが、サードパーティから出ているPhotoshopやAfterEffects向けのフィルターは使用できないものもけっこうあるので、注意したい。筆者も最初はこれらのプラグインを登録して使用していたが、適用した瞬間にcombustionが落ちたりするなど、不具合が出るため、使用をあきらめた。
Photoshop用のプラグインは不具合は少ないようだが、使用する前には使えるかどうかを確認してから作業に入ったほうがよいだろう。
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図16 ブラー系には、モーションブラー、ドリーブラー、パンブラーなどカメラの動きを意識したエフェクトが用意されている。
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●自由度の効くキーフレームとタイムラインコントロール
combustionで設定したエフェクト効果やマスク情報などあらゆるデータはキーフレームとして記録される。キーフレームはタイムラインコントローラから制御することができる。これらのキーフレームはベジェ曲線やリニア直線などを用いてアニメーションを思いどおりにコントロールすることができる。
多数の画像やオブジェクトを取り込み複雑に動かしたりするような合成の場合、ワークスペースが狭いため操作しづらいときがある。このような場合はタイムラインパネルやワークスペースを別ウィンドウとして表示させれば、操作性も向上できる。
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●RAMキャッシングによる作業効率の向上
RAMキャッシングによるリアルタイムライクなエフェクト確認が可能で、また修正した個所のみが再計算されるので効率よい作業が行える(図17)。RAMキャッシングはAfterEffectsなどのRAMプレビューにも似ているが、内容は少し異なる。
AfterEffectsのRAMプレビューは最終コンポジションデータであるプレビュー情報をRAMにレンダリングしているわけだが、RAMキャッシング最終コンポジションデータ以外の中間データも格納される。そのためあるエフェクトの一部分だけの変更の場合はそのエフェクト部分だけが変更されるため、作業効率がアップする。しかし、その反面非常に多量にメモリーを消費してしまう。したがって、搭載するRAMは大容量にしなければならない。
筆者のマシーンにも1Gバイトのメモリーを搭載して作業を行ったが、複雑なエフェクトを施した場合は、わずか3秒や5秒程度のエフェクトでも1Gバイト(正確には900Mバイトをcombustionに割り当て)のキャッシュはいっぱいになってしまった。HDデータの場合1秒でいっぱいになる場合もあった。
このようにRAMキャッシングは非常に便利な反面、RAM容量による制限を受けてしまうので使えない場合も発生した。最近では高速なHDDも安価に登場してきたので、RAIDを使用したハードディスク上に仮想RAMキャッシュを設定できるようにしてほしい。これにより、RAM容量に制限されずに作業できるのではないだろうか。
RAMキャッシュとは別にRender to RAMがある。これはRAMにレンダリングすることでリアルタイム再生
を可能にするものだが、この場合はRAMキャッシュよりも効率よくRAMを使用できる。
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図17 RAMキヤシング |
●3ds MAXやeditとの連携
combustionは、3ds MAXでRLAファイルやRPFファイル形式でレンダリングしたファイルに、3Dフィルターを掛けることができる。これにより、確認のため3
ds MAXで何度もレンダリングを行うことはなく、combustionとの連携により作業効率を上げることができる。
また、editとの連携によりノンリニア編集とデジタル合成をシームレスな関係で作業できる点も見逃せない。今回はeditとの連携作業は行わなかったが、これらの連携次第でsmokeなどのハイエンドソフトにもひけをとらない作業環境を得ることができるだろう。
■実際に使ってみて
今回は、実際の仕事でもいろいろ使用してみた(図18)。キーイングやカラーコレクション、そしてモーショントラッキングの完成度は非常に高く使いやすい。さすがdiscreetといった感じだ。
標準で搭載されているフィルターの数がやはり少し少ないのは残念だが、搭載されているエフェクトの品質も高く納得させられる。特にブラー系やレンズフレアは非常に質が高く、使っていて気持ちがいい。欲をいうならモーフィング系のフィルターが1つほしいところだ。5DのMonsterなどのサードパーティ製フィルターが正式に対応してくれることを切望したい。
そのほか、使用して思ったことは先にも述ベ
たRAMキャッシングの件だ。アーキテクチャー的にはよいのだが、RAMの容量の制限を受けるところはいただけない。早期にHDDに仮想RAMキャッシュを設定できるようにするべきだろう。
トータルでcombustionを評価するなら、キーイングやカラーコレクション、モーショントラッキングなどのあまり多くの画像を使用しない合成作業では非常に有効なツールといえるだろう。
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図18 デジタルBSの番組オープニング用にHDTV解像度で作成した
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問い合わせ先(正規販売代理店):[win版]住商エレクトロニクスTEL03(5228)5565、ニチメングラフィックスTEL03(5423)5531、レイTEL03(5410)1940、フォトロンTEL03(3486)347、シリコンスタジオTEL03(5428)0550、TooTEL03(3461)0251[Mac版]TooTEL03(3461)0251 |
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