映像制作


 カノープスからリアルタイムDVノンリニア編集システムとして、同社のDVノンリニアシステムをIBM IntelliStationに組み込んだターンキーシステム、REXCEED MODEL 1000が登場した(写真1)。
 同社はこれまで、DVRaptorII、DVStorm−RT、DVRex−RT Professional(以下DVRex−RT Pro)など、DVノンリニア編集用の映像入出力キャプチャーカードを販売してきた。映像編集にはカノープスオリジナルの編集ソフトRexEditなどが同梱され、これらのソフトもビデオ編集者の立場に立ったソフトとして定評があった。
 今回登場したREXCEED MODEL 1000は、カノープスの最高機種であるDVRex−RT Pro(ブレークアウトボックス付き)にMPEG2用モジュール
を組み合わせ、IBM IntelliStationにセットアップすることで、安定性に優れたリアルタイムDVノンリニア編集システムを構築している。そして、映像編集ソフトウェアとして、同社のRexEdit、Adobe Premiere5.1日本語版を初め、3Dタイトル作成ソフトUlead COOL 3D SE、音楽編集/作成ソフトとしてSonic Foundry ACID Style、DVD−Videoオーサリングソフトとしてダイキン工業ReelDVD2.0 for DVRex、ソフトウェアDVDプレーヤーとしてInterVideo WinDVD DHなど数多くのソフトウェアを同梱しているので、リアルタイムDVノンリニア編集から、MPEG1/2への出力、Webストリーミングメディアの制作、DVDソフトの制作、BGM音楽制作など非常に幅広いコンテンツ制作が可能となっている。
 では、簡単にその特徴を見ていこう

写真1●REXCEED MODEL1000はIBM IntelliStationとDVRex−RT Professionalをベースにしたターンキーシステムだ

■PCハードウェア・スペック

 まず、PCマシーンであるIBM IntelliStationのスペックを見てみる。CPUはPentiumIII 1.0GHz Dual Processor(Intel840chipset)、メインメモリーとして512MバイトRDRAM(PC600、ECC)、DVD−ROMドライブ最大8倍速(CD−ROM読み込み最大48倍速)、グラフィックスアクセラレーターにNVIDIA Quadro 2 MXRが搭載されている(写真2)。また、OSにはMicrosoftWindows2000日本語版+Service Pack 1を使用している。
 さて、InetelのCPUはすでにPentiumIV1.5Gバイトが登場し始めたが、PentiumIVでデュアルCPUに対応しているマザーボードはまだどのメーカーからも登場していないのが現状だ。ビデオ編集の場合、大さいデータ量を扱うので最速よりも安定をとったほうが望ましい。REXCEED MODEL1000はすでにリアルタイム編集能力をもったDVRex−RT Proボードが搭載されているので、PemtiumIII 1.0GHz Dual Processorによる高速安定のIntelliStationは現段階ではビデオ編集には最適といえるだろう。また、グラフィックスアクセラレーターにNVIDIA Quadro2 MXRが搭載されてるので、3D CGなどのコンピュータグラフィックスの作成時の描画速度も高速に行える。
 デイバイスコントローラーとして、Ultra160 SCSIボードが搭載されており、標準でハードディスク18.2GバイトUltra160 SCSI(10,000rpm)がセットアップされている。もちろん増設も可能だ。


写真2●REXCEED MODEL1000の内部


表1●RECCEED MODEL1000のPC仕様

■DV周りのハードウェア

 REXCEED MODEL1000に搭載されている基本DVボードはDVRex−RT Pro(写真3)だ。これには19インチラックマウント仕様ブレークアウトボックスが付属しており、YUVコンポーネント、S−Video、コンポジット、リファレンスの入出力を初め、2系統のDV端子、2chのバランスオーディオ入出力、2chのアンバランスオーディオ人出力を備えている。9ピンビデオコントロールはPCのシリアルポートと接続してコントロールでき、当然DV機器はDV端子からもコントロール可能だ。
 また、MPEG1/2へ高速出力が可能なMPEG2 ModuleはDVRex−RTのRT Engineにドーターボードとして搭載され、MPEG1/2へのエンコーディングを高速に行うことができる。


写真3●DVRex−RT Professional。ブレークアウトボックスは業務で使用するには便利だ

■RexEditによる映像編集

 さて、「RexEdit」(図1)はいわずとしれたカノープスオリジナルの映像編集ソフトで、DVRex−RT Pro上でリアルタイムDV編集を可能にしている。DVRex_RTはリアルタイム処理を100%ハードウェアに依存していないぶん、PCマシーンのCPUスペックの向上によりリアルタイム性能(リアルタイム処理できるエフェクトの数など)を向上させることができる。
 リアルタイム処理できるものには、多彩な2Dトランジション(図2)、アルファーワイプトランジション(図3)を初め、ブラー、エンボス、カラーコレクション(図4)などのビデオフィルターがある。これらはDVのYUV4:1:1を超えて内部処理をYUV4:2:2で処理しているため、DVのクオリティを損なうことなくエフェクト処理されている。ところでカラーコレクションでは、画面全体に対してカラーコレクションするのではなく、特定の色の部分(クロミナンスフィルター)または矩形/楕円領域を指定してフィルターを適用することができる。そのとき矩形・楕円領域では、補間機能付きの移動パスを指定したり、ソフトエッジ機能で境界部分を馴染ませることも可能だ。


図1●RexEditの操作画面


図2●2Dトランジョン。トランジョンの動きをキーフレームで自由に追加できる。プレパターンも用意されている

図3●あるファーワイプトランジション。アルファーキーによるトランジション効果は高品位なトランジションとして仕事も充分使える

図4●カラーコレクション。多角度からのカラーコレクションが可能だ
 
 また、クロマキー(図5)、ルミナンスキーは内部YUV4:4:4処理がされているため、抜けのよい合成処理が可能となっている。
 このほか、リアルタイムPinP、リアルタイムタイトル表示ができる。タイトル(図6)は合計10レイヤーのタイトルを自由に組み合わせてリアルタイム表示することができる。エンボスやシャドー&ハードエッジなどの表現に加え、タイトルエフェクトが35種用意されているので、仕事でも充分に使用することがでさるだろう。
 オーディオフィルターにはパンポット&バランス、グラフィックスイコライザー、ローパスフィルター/ハイパスフィルター、トーンコントロール、デイレーなどのリアルタイムフィルターが用意されており、DirectXプラグイン・ブリッジによりDirectShow(DirectX Media)のフィルター形式で実装されたオーディオフィルター(いわゆるDirectXプラグイン)をRexEditのフィルターとして利用することもできる。


図5●クロマキーの設定画面。抜けのよい合成処理が可能となっている

図6●タイトルの設定画面。業護用のタイトラーレベルの設定かできるので、VPなどの仕事で充分使用できる
 その他、SMPTEなど3種頚のカラーバー・クリップと、1kHzの基準音データの発信やベクトルスコープとウェーブフォームモニター(図7)が搭載されており、AVI再生時にリアルタイム表示が可能だ。また、カラーコレクション設定中も単独のクリップで表示可能で、表示形式の変更やラインセレクトなどの設定もできる。これらは映像制作者にとって非常にありがたい機能といえる。
 付け加えるなら、若干のレンダリングが必要であるが、SoftXplode(図8)により3Dトランジション効果を利用できる。
 さて、このような様能を使用して編集したデータは直接DV出力することもできるが、アナログビデオ信号で出力することも可能だ。この場合、9ピンコントロールを使用してベータカムのVTRデッキなどへもプリントアウトできる。
 また、AVI出力以外にWMV(ストリームビデオ)やQuickTimeへの出力も可能で、MPEG 2Moduleにより、タイムライン上のデータをダイレクトでMEPG 1またはMPEG 2データに高速出力(高速変換)することも可能である。REXCEED MODEL1000がワンソース・マルチユースを実現するシステムといわれるゆえんはここにある。

図8●SoftXplode。3Dのトランジション効果を付けるプラグインソフトだ。若干のレンダリング時間を要するが、効果を考えると使いではあるだろう

図7●ベクトルスコープとウェーブフォームモニター。
専用のベクトルスコープとウェーブフォームモニターの見やすさには勝てないが、
簡易的なモニターには充分だろう。あるのとないのでは大違いだ

■Adobe Premiere5.1日本語版による映像編集

 Adobe Premiere5.1日本語版はWindowsマシーンやMacintosh上で稼働するビデオ編集ソフトで、いわゆる定番の映像編集ソフトである。REXCEED MODEL1000にはAdobe Premiere5.1日本語版のフルバージョンと、REXCEED MODEL1000の機能をPremiereから利用できるようにするためのプラグインソフトが添付されている。スクラビングの高速化、正確なVTRコントロール、高速レンダリング、リアルタイム編集などが可能となっているため、Premiereの操作に慣れた人はこちらを使用することもできる(図9)。また、4ストリームPinPのリアルタイム処理やPremiere標準のタイトラーを利用して高品位な合成を行うファインタイトルジェネレーターが搭載されている。また、Premiereを使用しながらベクトルスコープとウェーブフォームモニターを使用することもできる。しかし、スローモーション再生など一部の機能は利用できない。
 なお、2月21日以降に購入のREXCEED MODEL1000にはAdobe Premiere6.0日本語版への無料アップグレードパスが付属している。


図9●Adobe Premiere5.1日本語版。
スローモーションなどの一部の機能は使えないが、
PremiereでもDVRex-RT Proのリアルタイム性能を引き出せるようになったことは非常にありがたい

■ReelDVD2.0 for DVRexによるDVDオーサリング

 ReelDVD 2.0forDVRex(図10)は、ダイキン工業の業務用DVDオーサリングソフトReelDVD 2.0(製品版\12万8000)を元に、Dolby AC−3エンコーダー、CDライティングの機能を省いたDVDオーサリングソフトである。しかし、基本性能はまったく同じのためマウスによるドラッグ&ドロップ操作による簡単な操作で本格的なDVD制作を可能にしている。また、いままではこのようなバンドル版では不可能であったDLTプリマスタリングもサボートしている。これによりプレスによる大量作成が可能になった。


図10●ReelDVD2.0forDVRex。
マルチアングルなどのハイレベルなDVDオーサリングはできないものの、
一般的なDVD制作には充分なオーサリングができる

■その他の添付ソフト

 添付されているUlead COOL 3D SE(図11)を使用すると、非常に簡単に3Dタイトルが作成できる。タイトルのダンス、ツイスト、爆発などが使用でき、3Dタイトルによるビデオ映像の表現力アップを狙える。
 Sonic Foundry ACID Styleはルーピングしたオーディオ信号をタイムラインに並べていくことで、BGMを簡単に作成することができる優れものだ。一般的にはオーディオループシーケンサーとも呼ばれ、ピッチやテンポをトラックループに対してリアルタイムで変更し、ボリューム、パン、エフェクト・エンベロープをトラック/オーディオ・イベントごとにコントロールすることで、ループを自由にミックスしBGMを作成する。


図11●Ulead COOL3D SE。超簡単3Dタイトル制作ソフト。時間がないときなど、困ったときにけっこう使える

■ワンソース・マルチユースを可能にしたREXCEED MODEL1000

 REXCEED MODEL1000はカノープスのもつリアルタイムDV技術とMPEG2技術を盛り込むことで、ワンソース・マルチユースが可能なオールインパッケージシステムといえるだろう。
 MotionJPEGや非圧縮などを使用したハイエンドな放送品質を狙うのではなく、あくまでもDVを基本として業務レベルでの本格的な映像編集作業を目指し、定性や操作性などを実現している。また、MPEG 1、MPEG 2のエンコードやストリーミングメディアへの出力も可能とし、ワンソース・マルチユースを実現したことで、業務レベルでいかようにも使用できるので、非常に好感がもてる。特にReelDVD2.0for DVRexの添付により、ある程度の目的(結婚式や企業PRなど)のDVDタイトルも容易に作成できるので、業務レベルでの利用にはコレ1台ですべてできるといった感じだ。
 余談ながらDVRex−RT Proを購入して、他社のマシーンに組み込んだり、自作PCに組み込めば同様のシステムを構築することは可能だが、メーカーによるプリインストールは業務遂行を考えるとトラブルも少なく、アフターフォローの点でも安心かもしれない。

価格:オープン 問い合わせ先:カノープス・REXCEED製品ご案内係 TEL03(3577)5841 URL:http://www.canopus.co.jp/rexceed/
ビデオアルファ2001年4月号