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長尺ものの素材が多い業務用レベルではまだまだ浸透していないノンリニア編集システム。しかし,ここにきて業務用としても充分快適に使えそうな製品がようやく出揃ってきた。
そこで今回と次回の2回にわたり,そんな製品をターンキーシステムでテスト,評価してみる。
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レポート
山田浩之 (B-ARTIST)
デジタルビデオやCGを手掛けるデジタルクリエイター。ホームページURLはwww.b-artist.com。
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■業務用DVCAMレベルに最適なシステムが登場
新型の小型DVカメラもぞくぞく登場し,DVカメラもかなり普及してきた。DVカメラを手にすると次に欲しくなるのはDVによるノンリニア編集システムである。DVCAMが好調な業務用クラスでも,そろそろ導入しようかと検討している人が多いのではないだろうか。
ところで,本誌でもDVノンリニア編集については毎号紹介しているので,読者の方なら,DVノンリニア編集システムには大別して二つのタイプがあることはすでにご存知だろう。一つは,ソフトウェアコーデックのもの,もう一つはハードウェアコーデックを持っているものである。
ソフトウェアコーデックの場合,DVデータをパソコン画面上でリアルタイムにモニターすることができない。しかし,ハードウェアコーデックを持っている製品の場合,DV映像データの入出力時や編集時に常にフルモーション/フルスクリーンでリアルタイムにモニターすることが可能である。このことにより編集効率を格段に上げることができる。
さて,今回はこのハードウェアコーデック(ソニーDVBK-1)を搭載したノンリニアキャプチャーボード,FAST社のDVマスターを核としたターンキーシステム,東通産業の「DVステーション」を試用してみたので紹介しょう。
東通産業とは,もともとソニー業務用ビデオ機器の専売特約店として出発した会社。主に学校など教育関係へのシステム販売に強いという。今回のシステムは,最近著しく普及したDV/DVCAMシステムの編集環境をさらに強化するもの。
ソニーにはノンリニア編集システムとしてエディットステーションES-7が用意されているが,業務用としてはかなり高価。今年中に登場が予定されている廉価版のES-3にしても,トータルで200万円以上になりそう。そこで,家庭用との間を埋める低価格の業務用ノンリニア編集システムが求められていた。ちなみに東通産業はFAST社の販売代理店も務めている。
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■DVマスターの魅力はアナログの入出力
まずは,システム全体の核となるDVマスターについて簡単に紹介しよう。DVマスターはDVデジタルポート(IEEE1394)を内部に一つ,外部に二つ持っており,ソフトウェアでこれらの入出力用のDV(DVCAM)機器を切りかえて使用することができる。また先にも述べたようにハードウェアコーデックが搭載されているので,インターフェイスボックスを使用することでアナログ系の入出力ができる。映像はY/Cの入出力またはYUVコンポーネント出力が可能で,オーディオは2chの入出力とモニター用としてヘッドホン出力(2ch)を持っている。
さて,DVマスターを使用した場合の使用可能なオーディオフォーマットは,DVMフォーマットの(1)32kHz,12ビットステレオ,(2)44.1kHz,16ビットステレオ,(3)48kHz,16ビットステレオである。このほかPCMフォーマットも使用できる。PCMフォーマットが使用できるのは,DVマスターがオーディオ用のAD/DA変換も持っているからだ。
したがって,DV映像にPCMフォーマットの音声を付けた場合でも,インターフェイスボックスから映像と音声の同時出力ができる。しかしDVデジタルポート(IEEE1394)を介して出力する場合はPCMオーディオが出力できないので,一旦PCMオーディオ信号をDVMフォーマットに変換しなければならない。これは専用のユーティリティーソフト「DV
Audio Tool」を使用すれば簡単に行うことができる。ちょっと複雑なことを言っているようだが,これはDVマスターがDVのほかにアナログビデオとアナログオーディオを使用できるため,いろいろなフォーマットが使用できるということに他ならない。
さて,DVステーションの基本構成を簡単に述べると,CPUがペンティアムIIIの266MHz,RAMが64MB,システム用HDDが3.5GB(Ultra-ATA)というロジテック社製のパソコンに、キャプチャーボードとして先のDVマスターが搭載されている。
また,映像キャプチャー用HDDにメディア社の「VideoRaid」というディスクアレイが搭載されている。このディスクアレイはIDEのディスク2台で構成されており、5GBから17GBまで必要に応じて選ぶことができる。転送レートもカタログでは10MB/秒をうたっている。
DVマスターのオリジナルソフトでHDDのベンチマークを計ったところ読み書きとも8MB/秒以上を持っていたので、DVノンリニアシステムでは申し分ないスピードだ。
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■想像した以上に使いやすいDVCAMドライブ
このほか特筆すべきは,ソニー製のDVCAMドライブDRV-1000(ミニカセット専用)を搭載している点だ。これにより映像入出力用として外部にDVカメラやDVデッキを接続しなくても使用できる。
DVではなくDVCAMフォーマットなので業務用としても安心して使用できる。もちろん家庭用DVフォーマットも再生可能である(LPモードは不可)。
DRV-1000を搭載したことで,DVマスターのハードウェアコーデックとあいまって,さらに操作性が向上したと言えよう。
この他,モニターにソニー製の17インチRGBモニターCPD−GSとビデオモニターとして14インチのソニーPVM.14N1Jが用意されている。
今回テストしたのは,この2モニターのDS-2シリーズだが,どうしても設置スペースが足りないという場合には,ソニー製マルチスキャンモニターCPD-17MS一台だけのDS−1シリーズもある。
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DD入出力ソフト「DVマネージャー」で取りこみ「プレミア」で編集 |
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■東通産業独自にプレミアをバンドル
実際にビデオ編集をするには編集ソフトが必要である。FASTのDVマスターにはユーリードのメディアスタジオ・プロ5.0がバンドルされているが、DVステーションにはアドビ・プレミア4.2フルバージョン(8月以降から5.0を予定)を同梱している。プレミアは日本語版、メディアスタジオは英語版である。
また、ビデオキャプチャーと簡単なアッセンブル編集ができるDVマスターのオリジナルソフト、「DVマネージャー」も添付されている。
まずは「DVマネージャー」であるが、ビデオキャプチャーや出力時にDVCAM(DV)機器を正確にコントロールすることができる。映像をDVCAM(DV)機器に出力する時も、テープ上の任意のタイムコード位置にビデオを記録できるので大変便利だ。
アドビ・プレミア4.2は言わずと知れた,編集ソフトの定番。ただ,このバージョン4.2は対応しているオーディオのサンプリング周波数が44.1kHz,22kHz,11kHzのため,DVMフォーマットでの入力ができない。そのため一旦PCMデータとして入力しなければならない。このためアナログ出力の場合,ダイレクトに出力が可能だが,DVへの出力時には先に述べた「DV
Audio Tool」でDVMフォーマットへ変換しなければならない。難しいようだが,操作は簡単だ。
しかし,このようなこともプレミアのバージョンが5.0になれば不要になる。DVマスターのプレミア5.0への対応は8月に予定されているので,今号が出ている頃にはバージョン5.0が同梱されていることだろう。プレミア5.0はビデオ編集に重点を置きバージョンアップが図られただけあってかなり強力なツールとなりそう。
ユーリードのメディアスタジオ・プロ5.0はビデオ編集ソフトのほかビデオペイントソフト,キャラクタージェネレーターソフト,オーディオエディターソフトが合わさったもので,非常に強力なビデオツール。
特にビデオペイントは強力なので,オリジナルのビデオ映像を作るにはもってこいだろう。このソフトを紹介するにはかなりの誌面を必要とするので別の機会に譲るとして,一つだけ残念なのは,キャラクタージェネレーターソフトで日本語表記ができない点だ。これは2バイトコードに対応していないためだが,モノが強力なだけにもったいない気がする。
簡単にDVステーションの概要を紹介したが,実際に使用して感じたことは,やはり,ハードウェアコーデックを持っていることと,DVCAMドライブを搭載していることで,操作性が非常によいということだろう。そして,アナログコンポーネント出力も持っているので,ベータカムVTRに出力できるなど業務での使用にも充分に耐える。
またターンキーシステムのためコンピュータとの相性もよく,何よりトータルでのアフターフォローが受けられる点が,業務レベルでの使用を考えた場合,とても重要だと言える。
価格はDVノンリニアシステムとしてはやや高めになるが,販売が業務用機器の特約店ということもあり,従来のビデオユーザーにとつて,このシステムは非常に魅力的なものであろう。
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アドピ・プレミア上で取り込んだファイルを開く
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DVマネージャーで取り込んだ映像は映像用HDD(Eドライブ)に保存されているので,プレミア上でそのファイルを開き,編集する。テスト時点でほプレミア4.2だが,8月からは5.0をバンドルする。 |
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編集ファイルを「DVマネージャー」で再生する
ファイルプレイリストで,再生順の変更などやファイルの削除,コピーが可能。複数のファイルをシームレス再生して,DVCAMドライブに戻すことができる。
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ビデオサロン1998年9月号 |
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