映像制作


システムに要求される必要充分条件

 ここで、ノンリニアシステムの導入時における注意点を使用目的別に見てみよう。

■マルチメディア用

 たいていのCD-ROMタイトルの場合、ユーザーが使用するハードの環境も考慮して、通常2倍速CD-ROMプレーヤーの転送レートの300k〜150kビット/秒を超えないデータ量にすることがほとんどだと考えられる。この楊合、画像サイズは最大で320×240以下、コマ数も20〜10f/秒になるだろう。これらの制作目的のために導入を検討されている方は、決して高価なシステムから導入する必要はない。場合によっては、AV機能を搭載したパワーマックでも充分に目的を達せられるはずだ。
 最も安価なシステムの構築がこの方法であるが、このマシーンに画像編集ソフトを組み合わせればOKだ。ただし、マシーンの性能を最大限に引き出すには、さらに高性能のハードディスクが必要となる。
 ネットワーク上で使用するMovie制作においても、現在のデータ転送レートから、上記システムで充分だと考えられる。しかし、これらはあくまでも最低レベルであるということを肝に銘じるべきである。というのも、制作したMovieの画質は入力時の画質により決定されるといっても過言ではないからだ。つまり、業務としてデジタルムービーを制作するには、やはりサードパーティ製のビデオ圧縮ボードを使用し、高画質でデジタイズすることが望ましい。
 安いビデオ圧縮ボードには、インターウェアのパワービデオAV(Power Video AV)(¥7万8000)やBUGのデスクスタジオプロ(Desk Studio Pro)(オープンプライス)があり、NuBusタイプのAVマックには最適だろう。
 パワービデオAVにはアビッド・ビデオショップ(Avid VideoShop)2.0Jが添付されており、基本的なクイックタイム編集はこれだけでできるのだが、定番のアドビ・プレミア(Adobe Premiere)4.2Jを使用して、さらに幅広い編集も行ってほしいところだ。
 また、BUGのデスクスタジオプロはアドビ・プレミア4.0Jのバンドルタイプとそうでないのとがあるので、注意が必要だ。このデスクスタジオはスーパーマック(SuperMac)社が開発したデジタルフィルム(DigitalFilm)ボード互換フォーマットで、安価な割に優れた性能をもっている。
 デスクスタジオLCプロとパフォーマ630(現在入手できるか?)の組み合わせにプレミア4.2を組み合わせると非常に安くシステムを組むことができる。実売価格約28万円くらいだ。これに、ハードディスク・シーゲート・バラクーダ(Seagate Baraccuda)2の2.0Gバイトを1台購入すると合計実売価格約40万円でとりあえず一式そろえることができる。
 ところで、このパフォーマ630はパワーマック6100シリーズより転送レートを大きくできる点で優れている。もちろん余裕があれば、パワーマック7100シリーズや8100シリーズで使ったほうが、より性能は発揮できるだろう。
 プロフェッショナルとして、業務で使用するなら、もっと高画質を求めたい。それらの機種には、マック用ではラディウス(Radius)のビデオビジョンスタジオ(Video Vision Studio)やトゥルービジョン(TRUEVISION)社のタルガ2000(TARGA2000)がある。最近、これらにデータトランスレーション・メディア100qx(Data Translation MEDIA100qx)が加わった。また、タルガ2000はウィンドウズ用もある。ウィンドウズ用にはこのほかDPS(DIGITAL PROCESSING SYSTEMS)のバーセプションビデオレコーダー(Perception Video Recorder)なども評価が高い。ただし、パーセプションVRの場合ビデオキャプチャーをするには、別途ドーターボードが必要なので注意を要する。
 これらの製品は仕様の違いはあるが、マルチメディア制作において画質的にも間違いなくお薦めできる。いずれにせよ、業務で使用するには、これらのシステム以上のシステムを導入することが望ましいと思う。
 ところで、現在のCD-ROMの売り上げ状況は、ウィンドウズ95人気も手伝ってか、マック版よりウィンドウズ版のほうが圧倒的なシェアをもっている。したがって、現在のCD-ROMの制作はウィンドウズ版かマックおよびウィンドウズ両方で使用できるハイブリッド版の制作が中心だ。ということは、制作会社は両方のマシーンを使い分けなければならない状況にあるのだ。通常はどちらかのマシーンでいったんオーサリングを行い、その後、他機種に載せ扱えてテストをすることになるだろう。
 筆者はマックでオーサリングまで行ってからウィンドウズへ載せ換えたほうが、現時点ではソフト資産や操作性からいって効果的だと思うのだが、これからマシーンごと導入する人にとっては考えどころかもしれない。
 それでは、これらの画像圧縮ボードを含めて、ビデオ圧縮ボードの選定時に注意しなければならないことを見てみよう。


写真1 アビッド・メディアコンポーザー


写真2 BUG・デスクスタジオプロ


写真3 ラディウス・ビデオビジョンスタジオ


写真4 トゥルービジョン・タルガ2000


写真5 データトランスレーション・メディア100qx


写真6 DPS・バーセプションビデオレコーダー

1)フルサイズ(640×480)、フルモーション(フルフィールド)、フルカラーの取り込み再生ができるか?

 この項目は、CD-ROMタイトル用のMovie制作にかならずしも必要な項目ではないが、ビデオ信号を忠実に取り込むには必要最低条件だ。決してクリアしておく必要はないが、将来的なことも考慮す争と、ぜひクリアさせておきたい。


表1 DTV導入時の最低ライン(目安)

2)S端子(Y/C)の入出力をサポートしているか?

 高画質での取り込みには最低S端子の入出力が必要だ。そして導入後は、S端子を装備していることに満足せず、かならずS端子を使用してもらいたい。前出の価格帯のボードにはS入出力に比べ、コンポジット信号が異常に良くないものがあるからだ。さもないと甘い画像でデジタイズしてしまうことになりかねないから要注意。
 ところで、前出のDPSパーセプションの組み合わせはコンポーネントの入出力をサポートしており、信号も放送レベルに達しているといっても過言ではない。したがって画質面では充分すぎる。
 つけ加えるなら、ビデオビジョンスタジオやタルガ2000も上位構種のテレキャストやタルガ2000プロにアップグレードすることで、コンポーネントの入出力を行える。メディア100qxにもコンポーネント対応版がある。

3)オーディオの入出力を装備しているか?また、その際のサンプリングは16ビットに対応しているか?

 マルチメディア制作においては音声も重要だ。通常のCD-ROMタイトルでは16ビットのサンプリングでの収録はほとんど必要ないかもしれないが、例にもれず、高音質でのデジタイズが最終完パケに影響することを考えると、16ビットステレオ対応が望まれる。
 NuBus用のビデオビジョンスタジオの場合8ビットまでしか対応していない(PCI版は16ビット対応予定)が、本体にAV機能をもったマックを使用することで、マックのオーディオ入出力を利用することで回避できる。ただし、マックのオーディオ入出力ジャックがミニプラグなので、ノイズの心配が残るのと、本体のA/D、D/A変換の音質の心配が残る。
 また、パーセプションは本体にオーディオ入出力をもっていないので別途購入しなければならない。
 ところで、最近音楽CDとCD-ROMを融合したエンハンスドCDなるものが登場しているが、これらのことを考えるとデジタルの入出力も考えたいところだ。ビデオビジョンテレキャストはデジタルの入出力を備えている。

4)ビデオ圧縮ボードのもつビデオ出力について

 ビデオ圧縮ボードは機種によってNTSCのみの出力を有するものや、コンピュータモニターのRGB出力とNTSCを同時に行えるものや、どちらかを切り替えて使用するものがある。
 たとえば、パーセプションの場合、出力はNTSCのみである。したがって、コンピュータのモニター用にはビデオボードを別に用意する必要がある。
 また、データトランスレーション・メディア100で使用されるボードのビンセント(VINCENT)もNTSCのみの出力である。しかしAVマックの場合、本体にビデオ出力をもっているので、この出力でコンピュータの操作を行う。
 ビデオビジョンスタジオの場合、RGBとNTSCを切り替えてどちらかに表示することができる。マルチメディアの制作時にNTSCモニターが不要の場合はRGBに切り替えれば、本体のビデオ出力と合わせて2画面での編集操作が可能となる。
 後発のタルガ2000の場合はNTSCとRGBの同時出力が可能で、本体も合わせると3画面表示できる優れものだ。しかし、タルガ2000のNTSCとRGB出力は同じ画面となる。ここで、特筆すべきはこのRGB出力時に1152×870の24ビット表示ができることだ。


写真7 データトランスレーション・メディア100


写真8 メディア100のビンセント

5)使えるソフトはどんなものか?

 ノンリニアシステムがそれ専用のソフト上でのみ稼働できるのか、他のソフトでも使用できるかということはマルチメディア制作者にとって重要なことだ。マルチメディア制作者にとっては、制作中にいろんなソフトを使い分けるため、できるだけ多くのソフトに対応していたほうがいい。基本的にシステムがコンピュータといっしょに組まれているものは専用ソフトのみで稼働し、ビデオ圧縮ボードのみを販売しているものはいろんなソフトが使えることが多い。
 マックの場合、専用ソフト以外でも使えるものなら、ほぼすべてのソフトで利用できるが、ウィンドウズの場合、ソフトがハードに対応しているものといないものがあるので注意をしてもらいたい。
 また、圧縮ボードには編集ソフトが付いている揚合が多いので、どんなものが付いてくるかチェックしておこう。たとえば、タルガ2000の場合プレミア4.0のみである。したがって、ビデオデッキをコントロールする場合、パイプラインデジタル(Pipeline Digital)のPro Vtrなどのディバイスコントローラーを別途購入しなければならない。これが定価で5万8000円する。
 ビデオビジョンスタジオの場合はプレミア4.0のほか、ラディウス・ビデオフュージョン(VideoFusion。モーフィングなどもできる)やディパイスコントローラーのPro Vtr、ハードディスクオプティマイザーのディスクエクスプレス(DiskExpress)IIが付属している。特筆すべきはラディウスエディット(RadiusEdit)まで付属している点だ。このソフトはビデオ編集に慣れた人にとってはわかりやすいインターフェースをもった編集ソフトだ(図3)。このソフトだけでも価値はあるかもしれない。画質ではタルガ2000に若干の分はあるが、ビデオビジョンスタジオは得々パックといった感じがする。いい換えれば捨て身の術かもしれない。


図3 ラディウスエディットの操作画面
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