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自分でノンリニアビデオ環境を組む場合,何を基準にして選んだらよいのか分からない人も多いことだろう。この悩みに答えるべく,各社から発売されているビデオキャプチャ再生ボードの代表選手を一同に集結させ,波形モニターなどを使用してハードウエアのテストを行うと同時に,添付ソフトウエアやドライバをチェックした。
映像信号のテストには,ソニー・テクトロニクス(03-3448-3010)の協力で,信号発生器のTG2000型,ベクトル波形モニターの1760型とWFM601型,そしてビデオアナライザのVM700Tを使用した。ご協力いただいたスタッフの皆様にこの場を借りてお礼を述べたい。
また,今回はビデオ信号の劣化を総合的に判定できるソニー・テクトロニクスの新製品「ピクチャー・クオリティー・アナリシス・システムPQA200型」を使って,画像診断を断行した(下の「ピクチャー・クオリティー・アナリシス・システムによる画像診断テスト」参照)。
なお,最後に編集部で作成したDVビデオキャプチャ再生ボードの一覧表とMotion JPEGベースのビデオキャプチャ再生ボードの一覧表を示しておいたので,参考にしてほしい。 |
ピクチャー・クオリティー・アナリシス・システムによる画像珍晰テスト
ピクチャー・クオリティー・アナリシス・システムについて説明しよう。
これは,オリジナル信号とテスト対象信号を比較して,圧縮画像の劣化具合を数値(PQR値)で診断するというものだ。リファレンス映像には,動きの激しいものなどいろいろ用意されているが,今回は,模型の列車が走るシーンを使った。PRQ値は0に近いほどオリジナルに忠実ということになる。
今回は(1)DV MASTER(Sビデオ),(2)DigiSuite(コンポジット),(3)Media100(コンポジット),(4)PerceptionVR(Sビデオ)を対象にテストを行ってみた。
このピクチャー・クオリティー・アナリシス・システムは,アナログコンポジット,SビデオおよびディジタルのSDIしか持っていない。したがって,コンポーネント端子は持っているがSビデオ端子を持っていない場合,アナログコンポジットでの測定となり,かなり不利な測定結果となってしまう。
しかし,今回はこれらのことを踏まえた上でテストを行った。したがって,こうしたことを考慮して結果を見ていただきたい。今回は時間の都合で4機種しか測定できなかったが,いずれ,もっと本格的なテストを行ってみたいと思っている。
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ピクチャー・クオリティー・アナリシス・システムによる測定結果
PQR(Picture Quality Rating)は,画質品質を表し,数字が小さいほど良い。
PSNR(Peak Signal to Noise Ratio)は,S/N比を表し,数字は大きい方がいい。
転送レートは,Perception VRが6MB/秒,MEDIA100が5MB/秒,Digisuiteがロスレス。
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リファレンス映像とPerception VRの映像の差分。
黒いほど画質が良い。 |
リファレンス映像 |
Perception VRの映像 |
波形,ベクトル,マルチバーストの見方
リファレンスのマルチバースト信号
6つの周波数を表している。
左から0.5,1,2,3.58,4.6MHz。
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ビデオキャプチャ再生ボードの画質はどういうところで,判断すればよいのだろうか。まず,重要なのは,ビデオ回路の基本的性能である。これには周波数特性や,色の位相差,信号の遅延,S/N比などがある。また,ビデオ映像信号を圧縮/伸長する際にも映像信号は大きく劣化する。
今回は信号発生器や波形モニター,ベクトルモニターを使って主にビデオ回路の基本性能を調べてみた。
波形モニターではビデオ信号の振幅やタイミングのずれを測定できる。今回はカラーバーの信号とマルチパースト信号を発信し,ボードにキャプチャしてそれを再生させオリジナルと比較することで画質の劣化を観察した。
パースト信号を使用して測定すれば,回路の持つ周波数特性を見ることができる。パースト信号が6つの周波数の信号を含んでいるため,各周波数の振幅の上下で判断する。振幅(波の高さ)が小さくなっていると,解像度が落ちている。
カラーバーの信号では色による振幅の違いを見ることができる。波形モニターは,オリジナルと見比べて形が変わっていると色のばらつきが出ていることになる。波の高さが変わっていると白や黒のレベルが違うことになる。ベクトルスコープでは,ビデオ信号の色(クロミナンス)成分をベクトルで表示し,色の色相や彩度を測定できる。これもリファレンス信号と比較することで,違いを見ることができる。R,G,B,シアン,マゼンタ,イエローを表しており,すべてについて,モニターの小さな四角い預域に入っていれば一番いい。形が崩れていると,色が違っていることになる。それぞれの結果についてコメントはしていないが,自分の目で比較してほしい。注意してほしいのは,入出力端子。コンポーネント,Sビデオ,コンポジットの順で画質は悪くなる。
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信号発生器内蔵のカラーバーのオリジナルベクトル |
信号発生器内蔵のカラーバーのオリジナル波形 |
MotionJPEGベースのビデオキャプチャ再生ボード
●Cinema Gear (Mac用9万8000円,Win用8万8000円) [テスト無し】
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CinemaGear |
Cinema Gearはインタウェアのビデオキャプチャ再生ボード。Mac用は「Cinema Gear」,Windows用は「Gava」である。Mac用の「Cinema
Gear」は,ビデオの入出力としてコンポジットとSビデオを持っているが,MacのAV機能を一部使用している。このためDAVパスを持ったPower
Mac7500,7600,8500が必要となる。Cinema GearをPCIバスに挿入した後,Cinema GearのDAVパスとMac側のDAVパスを接続して使用することになる。
Windows用のGavaにはDAVパスがない。したがって,ビデオの入出力はできるが,オーディオの入出力には別途オーディオボードが必要となる。
今回は,Mac版のみ評価したのでWindows版の詳細は分からないが,外観上はDAVパスがないだけでほぼ同じだ。画質性能も同じくらいではないかと推測されるが,価格はWindows版(8万8000円)の方が安い。
さて,Mac版Cinema Gearはフルモーション(30フレーム/秒),フルサイズ(解像度640×480)に対応し,カタログ値で最大転送レート4.0MB/秒(メモリー使用の場合6.0MB/秒)まで対応している。
したがって,一般的なVHSクラスの画質での使用であれば,問題なく使用できるだろう。しかし残念なことに,フルフィールド(60フィールド/秒)には完全には対応していないようだ。
また,Mac版Cinema Gearには簡易編集ができるVizlt Universalが付属する。これを用いることで静止画取り込みや,簡易的な編集ができる。また,500本限定版にはStrata
Video Shop3.0Jが付属している。
Strata Video Shopがあれば,通常の編集なら十分使えると思う。インタフェースはPremiereに似ており,すんなりと覚えられる。エフェクト類はPhoshopのフィルタも使えるので,Photshop用フィルタを持っている人はぜひ使ってほしい。また,Premiereには無い映像にモーフィングをかけるフィルタもあるので,おもしろい効果を得られる。
●Win用10万8000円)「テスト無し」 Power Caputure Pro
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Power Caputure Pro |
カノープスから販売されているPower Caputure Proは初心者からプロフェッショナルまで幅広く使用できるビデオキャプチャ再生ボードだ。このボードはCCIR601規格の720×480の解像度とスクエア解像度の両方をサポートしており,転送レートは最大7MB/秒が可能だ。ハードウエアによるレンダリングアクセラレーションも可能で,映像の入出力にSビデオ端子を備えているので,高画質なノンリニアビデオ編集をすることができる。
編集ソフトとしてはMedia Stadio Pro5.0Jが付属しており,これだけですべてが揃ってしまう。
それでいて,値投も手頃なので使用用途は広いだろう。ただし,音声の入出力は持っていないので別途サウンドカードが必要になる。
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●MEDIA100(Mac用55万円〜)
MEDIA100シリーズは,Macintosh用のノンリニアビデオ編集システムとして発売当初から高画質なことで評判が高かった。現在でも映像業界ではその評価は高く,映像業界以外でも企業,学校,病院などユーザー層はかなり広い。テストには,MEDIA100qxを使った。
MEDIA100シリーズの画質を支えているのは,「VINCENT601」と呼ばれるビデオキャプチャ再生ボード。これは,ビデオボードの画質に対する基本的な性能が優れており,しかも完全なYUV4:2:2カラースペースによるハードウエアコーデックを使用しているためだ。このYUV4:2:2コーデックを使用することで小さいデータ量でも高画質を可能にしている。
MEDIA100は発売当初はビデオキャプチャ再生ボードと専用ソフトのパッケージだけだったが,現在では汎用の編集ソフトも使えるように,ボードのみの販売もしている。最高画質設定(圧縮比)やリアルタイムエフェクトの有無などが異なる豊富なラインナップを持つ。近々WindowsNT用も出荷される。
また,MEDIA100qxを除くすべてのモデルで,MEDIA100専用DVEボード「Gaudi」をオプション追加することで高品位な2次元/3次元DVEをリアルタイム処理できる。なお,この場合はPowerMac9500または9600シリーズが必要になる。
D1デジタル1/0ボード「Theo」もオプションで用意されている。
MEDIA100qx
Vincent601をPremiere4.2で使用できるようにしたエントリーモデル。最高で2.5:1の低圧縮(高
画質)を得ることができる。Vincent601のDSPによる高速エフェクトも使用することができるかなりお買い得と言える。これから,DTVを始める人には十分すぎるであろう。コンポーネント入出力できるモデルも用意されている。
MEDIA100le
MEDIA100leは最低圧縮率に1/4の制限はあるものの,MEDIA100専用ソフトを使うことでスピーディな編集ができる。
MEDIA100lx
MEDIA100lxにオートディジタイズやベクトルモニター,波形モニターを付加したモデル。
MEDIA100xe
最低圧縮率が1/3まで可能で,MEDIA100lxにリアルタイム6chオーディオおよびインサートマスタリングや,アセンブルマスタリングなどが付加されている。
MEDIA100xs
MEDIA100シリーズ最高機種。最低圧縮率が1/2まで可能で,MEDIA100xeにリアルタイム8chオーディオ,リアルタイムワイププレピュー,リアルタイムタイトル,リアルタイムキーエフェクトなどが追加されている。
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MEDIA100qx5MB/秒コンポジット(マルチパースト) |
MEDIA100qx5MB/秒コンポジット(ベクトル) |
オリジナルマルチバースト |
MEDIA100qx |
●TARGA/BRAVADOシリーズ(Win,Mac用価格は表3を参照)
米Truevisionのビデオキャプチャ再生ボードは,AvidのMedia Composerをはじめ多くの映像機器メーカーヘOEM供給されていることが知られている。
始めにTARGA2000が発売され,その後TARGA1000シリーズが登場した。
最近では,ノンリニアビデオの入門用としてBRAVADO1000とBRAVADO2000シリーズが販売されている。BRAVADO1000は入門者でもすぐ使用できるようにビデオ編集ソフトとしてPremiere4.2」がバンドルされ,かつ低価格に押さえら
れている。入門書向けなため,BRAVADO1000の転送レートは4MB/秒くらいが上限のようだ。また,上位機種のTARGAシリーズはRGB4:4:4でコーデックされているが,このBRAVADOシリーズはYUV4:2:2でコーデックされている
TARGAlOOOシリーズとTARGA2000シリーズの違いは.VRAMとDRAMにある。
TARGA2000シリーズはVRAMに4MB,DRAMに16MBを搭載しているが,TARGA1000シリーズはVRAMには搭載しておらず,DRAMのみ8MB搭載している。TARGA2000シリーズはVRAMを搭載することで,ビデオ映像信号の出力とは別に,パソコン用のモニターヘのRGB出力が可能である。
TARGA1000シリーズもTARGA2000シリーズもオンボードにDSPチップを持っており,これが特定のエフェクトの処理速度を高速化しているが,これらの処理はDRAM上で行われるため,DRAMを多く搭載した2000シリーズの方がエフェクト処理は有利である。
TARGA2000シリーズにはTARGA2000PROの上位機種として,さらにTARGA2000DTX.TARGA2000RTX,TARGA2000SDXが存在する。
TARGA2000DTX,TARGA2000RTXは最低圧縮比1/2で使用できる。このためさらに高画質を追求できる。また,TARGA2000RTXはリアルタイムエフェクト用のエンジンを持ち,デュアルストリームにより同時に2つのMotionJPEGの再生が可能だ。つまり2つの映像を再生しながらリアルタイムにエフェクトをかけることができる。
TARGA2000シリーズの最高峰はTARGA2000SDXである。最低圧縮比1/1.5を可能にしており,ビデオ入出力にはディジタルのSDlを持っているので,D1やディジタルベータカムとディジタルでのやりとりが可能である。そのため,画質を損なうことなくマスターテープを仕上げられる。
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TARGA1000PRO |
TARGA1000PRO5MB/秒コンポジット マルチパースト |
TARGA1000PRO5MB/秒コンポジット 波形 |
TARGA1000PRO5MB/秒コンポーネント ベクトル |
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日経CG1999年9月号 |