●Perceptionシリーズ(Win用58万4000円〜)

Perception RT

 Perceptionと言えば,Perception VR(PVR)を語らないわけにはいかない。PVRはどちらかというとCGアニメーションをビデオに落とすためのビデオレコーダ的発想で生まれたと言えるだろう。こいつに,ビデオ入力ボードと音声入出力ボードをオプションで組み合わせることでノンリニアビデオ環境を構築することができる。10Bitサンプリングによる完全なYUV4:2:2カラースペースでのハードウエアコーデックを行っており,これらをYUVコンポーネントで入出力できる。また,転送レートも上限で7MB/秒(約1/3圧縮)まで可能なので画質面での評判もかなりいい。
 DPSの新製品,Perception RTは,PVRに磨きをかけ,映像制作用のノンリニアマシンとして高い完成度を持っている。具体的に述べると,まず入出力系の解像度が720×480から720×486となり完全にD1対応になった。また,圧縮/伸張のハードウエアコーデックを2系統持ち,デュアルストリームとなったため,完全なリアルタイムエフェクトが可能だ(オプションボードにより3次元まで対応)。入出力にブレークアウトボックスを標準装備し,アナログコンポーネントのほかSDI搭載モデルも用意されている。オプションのDVボードを取り付ければ,すべてのビデオフォーマットでの入出力が可能となる。
 最低圧縮比も1.4:1(約15MB/S)となっており,Ulltra Wide SCSIも搭載している。
 Perception RTには,専用のビデオ編集ソフトVideo Action RTが付属しており,Video Actionの数々のエフェクト効果と組み合わせることで,非常にコストパフォーマンスがいいシステムに仕上がる。タイトラー専用の「インスクライバーCG(現在は英語版)」も添付しているので,かなり強力と言える。


Perception VR7MB/秒Sビデオ マルチバースト

Perception RT5MB/秒コンポジット 波形

Perception RT5MB/秒コンポジット ベクトル

オリジナルマルチパースト

●miroVIDEO DC30/DC50,ReelTime(Win用14万8000円〜)

 Pinnacle社の製品には入門者用からプロフェッショナル用までラインナップが揃っている。Pinnacle社は放送用のDVEや3次元DVEのメーカーとして知られているが,近年Miroを買収しビデオキャプチャ再生ボード製品も扱うようになった。
 DCシリーズは発売当初から低価格にもかかわらず,高画質だったため,WindowsでのCGアニメーション出力やノンリニア編集の入門者にユーザーが多い。DC30はYUV4:2:2カラースペースコーデックで最大転送レート6MB/秒(圧縮率3.5:1)までの低圧縮が可能で,解像度もCCIR601の720×480に対応している。
 Miro買収後初めて登場したDCシリーズがDC50だ。これはYUV4:2:2カラースペースコーデックで最大転送レート7MB/秒を達成し,解像度もCCIR601の720×486に完全に対応した。DC30との根本的な違いは外部にブレークアウトボックスを持ち,コンポーネント入出力を持っている点だ。これにより格投に画質がアップしている。
 Pinnacle社の最新製品ReelTimeはデュアルストリームのリアルタイムエフェクトに対応している。圧縮率も1.4:1まで対応し,ブレークアウトボックスでのコンポーネント入出力を搭載するなど,業務用を意識して作られている。現在はPremiere4.0でのリアルタイムエフェクトにのみ対応しているが近々premiere5.0にも対応予定だ。


miroVIDEO DC30

miroVIDEO DC30 5MB/秒コンポジット マルチパースト

miroVIDEO DC30 5MB/秒コンポジット ベクトル

miroVIDEO DC50 5MB/秒コンポジット マルチバースト

miroVIDEO DC30 5MB/秒コンポジット ベクトル

miroVIDEO DC50 5MB/秒コンポジット 波形

●DigiSuite(Win用89万円〜)

DigiSuite

 MatroxのDigiSuiteはデュアルストリーム対応のロスレス・ビデオキャプチャ再生ボードである。
 DigiSuiteの魅力はなんといってもブロードキャストクオリティの高画質なデュアルMotionJPEGコーデックボードにある。データの圧縮方法にロスレスを用いることで,非圧縮と同等の画質を可能にしている。従来の画像圧縮は圧縮の際に多かれ少なかれ画像データが間引かれる。したがって,どんなにうまく復元しても全く同じデータにはなり得ない。ところが,ロスレスは画像データを間引くことなく圧縮のみを行うため,可逆的に完全な状態に復元できるのだ。もちろん,データを間引かない分圧縮できる限度はあるが,いくらかでも圧縮できればそれによるメリットも出てくる。非圧縮の画質を維持したままデータ量を押さえることができるので,ディスクを有効利用できたり,DVE処理に余裕ができるなど利点は多い。


 この魅力的なロスレスコーデックを2系統持っているので,デュアルストリームによるリアルタイム処理が可能となっている。安定した動作を保証するために,ボード上にUltra Wide SCSIを持ちPC本体のデータの流れとは別にしている。さらに,32ビットDSPを搭載しているので,マルチトラックでのリアルタイムディジタルオーディオミキシングも可能となっている。ロスレス圧縮以外に一般的なMotionJPEG圧縮コーデックも持っているので,使い分けることも可能だ。
 また,DVE機能を搭載したビデオ/グラフィックミキサーボードを持っているため,2次元DVEをリアルタイムに処理できる。DVEチップは5つ(1つはαチャンネル付き,4つはαチャンネル無し)搭載されているので多彩な使用方法が考えられる。
 映像は,CCIR601に準拠した720×468の解像度に対応し,アナログコンポーネントのほか,オプションでSDIも用意される。非常にハイエンドを意識したシステムである。
 DigiSuiteの弟分となるのがDigiSuite LEだ。これは2chのDVEを持ったデュアルストリームボードだ。したがって,DigiSuite同様リアルタイムエフェクトを行うことができる。しかし,DigiSuiteの魅力の一つロスレス圧縮には対応していない。その他は基本的にDigiSuite と同じである。
 DigiSuite.DigiSuite LEとも現在はSpeed RazerMach4.0RTにのみ対応しているが,9月中にはAdobe Premiere5.0に対応する予定だ。
 現在,DV入出力ボードに取り付けられた端子はIEEE1394は,アップルコンピュータが提唱し,米国電子電気技術者協会(IEEE)で制定された規格で,制定前はFireWire(ファイヤワイヤ)と呼ばれていた。このIEE1394は,

(1)伝送速度がUltra Wide SCSI並みであること
(2)信号線が少ないこと
(3)端子がコンパクト
(4)ID設定やターミネータの取り付けが不要
(5)連続的な転送が保証される

などの利点を持っており,ビデオのディジタル転送にはもってこいの規格である。この規格を使用してDV用に開発された最初のボードがAdaptecのAHA8940だ。
 このボードを使って各メーカーから販売されているDVキャプチャ再生ボードとしては,DPSのSPARK,ラディウスのMoto DV/Edit DV,Pro MaxのFire MAXなどがある。また,最近AdapteではAHA-8945という新製品を発売した。これはDV端子以外にUltra Wide SCSIインタフェースを搭載しているため,ハードディスクの接続にSCSIインタフェースを必要としない。PCIパスを1つしか占有しなくてすむのでコンパクトになるという利点がある。
 このAHA-8945を利用して,商品化されたものには,SPARK Plus,Fire Max-2,miroVideoDV300などがある。
 これらの製品はいずれも基本的にDV信号の入出力のみを行うため,DVデータをビデオ信号に変換したり,その逆を行う場合は,外部のDVカムやDVデッキあるいはパソコンのソフトウエアによって行うことになる。つまりこれらのボードはソフトウエアコーデックを前提に作られたカードと言える。
 ボード上にDV信号のハードウエアコーデックを搭載した製品もある。FastのDV Master/DV Factory,カノープスのDVRex-M1などだ。これらは,いずれもコーデック用のチップとしてソニー製のDVBK-1を採用している。
 これらの製品はハードウエアコーデックを採用することで,DVデータをビデオ信号に変換するのにほかのDV機器を必要としない。このため,DVノンリニア編集時の操作性が格段に向上している。使用対象をプロフェッショナルに置いているため,入出力系としてはSビデオ端子やYUVコンポーネントを搭載している。DVカメラの業務用での使用頻度もかなり増えてきているので,今後はさらに普及していくことだろう。
 さて,DVキャプチャ再生ボードにおける画質の優劣は,DV入出力のみで考えればほとんど差は出てこないと考えられる。今回の波形測定でもその差はほとんど見受けられなかった。ただし,ハードウエアコーデックを採用したDVキャプチャ再生ボードの場合は,DVデータをアナログビデオ信号に変換するところで映像の違いが出てくる。
 DVキャプチャ再生ボードを選択するに当たって何よりも大切なことは,それに付属するドライバやソフトウエアの違いを把握することだろう。同じAdaptecのカードを使っていてもドライバソフトの違いでビデオコントロールができるものとできないもの,バッチキャプチャができるものとできないものがある。添付する編集ソフトも自分に合ったものを見極めたい。


DigiSuite 5MB/秒コンポーネント マルチパースト

DigiSuite 5MB/秒コンポーネント ベクトル

オリジナル波形 DV入出力ボードのテストにはDVカメラのV X-1000のカラーバーを使用した。

オリジナルベクトル
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日経CG1999年9月号