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山田浩之(やまだ ひろゆき)

プロデューサ,デジタルクリエータ。映像,CG,Web,CD-ROMなどのマルチメディア制作会社B-ARTISTを主宰する。本誌で,昨年12月号まで「DIGITAL VIDEO WONDERLAND」を連載。

1998年1月に発売されたカノープスのDVキヤプチャ再生ボード「DVRex-M1」は,DVコーデック用のチップを搭載することで編集映像のモニタリングを行いながらノンリニア編集が行え,付属のソフト「RexEdit」を使えば簡単にビデオ編集ができるということで,ハイレベルのアマチュアから業務レベルの映像の現場まで根強い人気を博してきた。特に,ビデオ制作用に使っているユーザーが多く,海外でも高い評価を得ている。廉価版の「DVRaptor」も評価が高く,米Avid Tech-nologyのAvid Xpressシリーズの新製品「Avid Xpress DV on lntelliStation」の入出力ボードに使用されることが決まっている。
 さて,99年9月にカノープスは,Adobe After Effectsなどとの親和性を考慮して,従来付属していたMedia Studio Pro 5J VideoEditionに替えてAdobe Premiere5.1Jのフルバージョンを添付した「DVRex-M1 NewEdition」(36万8000円)を発売した。同時に,DVRex-M1の上位機種として,2次元のトランジション効果をリアルタイムに処理することが可能な「DVRex-RT」(49万8000円)が登場した。

問い合わせ●カノープス
●(078)992-6830 【URL】www.canopus.co.jp 価格●DVRex-RTが49万8000円,DVXPLODEが5万9800円
出荷●DVRex-RTが1999年9月,DVXPLODEが99年12月

●デュアルプロセッサ環境で2ストリームをリアルタイム処理

DVRex-RTは,DVRex-M1にリアルタイムエフェクト用エンジンである「RT Engine」(14万8000円)を付加した製品だ。Win-dowsNT4.0のデュアルプロセッサ環境で,2ストリームのビデオをリアルタイム処理でき,トランジションワイプ,アルファワイプトランジション,カラーコレクション,ブラ
ーやエンボス,モザイクなどがリアルタイムに処理することができる。これらはキーフレームでコントロールすることができるので,複雑なエフェクト処理にも対応できる。タイトルもリアルタイム処理することができ,タイトルトラック数も従来の2トラックから10トラックに増えたので複雑なタイトルエフェクトも可能になった。
 DVRex-RTのリアルタイム処理は,従来製品のように専用ハードウエアやDSPのみで処理するものではなく,CPUで処理する。今後CPUのパワーが飛躍的に向上すれば,より複雑な機能のリアルタイム処理も可能になる。
DVRex-RTは,PCの進化と共に発展していく全く新しいスタイルのノンリニアDV編集システムと言える。
 カノープスは,以前から3次元エフェクト処理を高速化するボード「Rex fx」を販売していたが,99年12月に,さらに高速処理が可能な「DVXPLODE」(5万9800円)が発売になった。今回は,この2製品を使用してみたのでレポートしよう。

●PinP,ビデオ/オーディオフィルタ,キー合成もリアルタイム処理

 DVRex-RTは,Adobe Premiereを使用することができるが,Premiereではリアルタイムエフェクトは使用できない。リアルタイムエフェクが可能なのは付属のRexEditを使用した場合のみだ。また,DVRex-RTに付属するRexEditはRT専用になっており,DVRex-M1用のRexEditとは異なっている(図1)。
 では,RT版RexEditを使用してDVRex-RTでリアルタイムに行えるエフェクトを紹介しよう。


図1●RexEditの全体図

(1)タイトル機能

 RexEditのタイトル機能は非常に強力だ。まず,日本語タイトルで重要な文字の表現として,ハードエッジ,ソフトエッジ,シャドウ,ソフトシャドウ,エンボス.グラデーション,透過といった多彩な表現が可能だ(図2)。
 また,タイトルの出し方や消え方などのタイトルエフェクトが35種類用意されている。一般的なノンリニア編集ソフトに搭載されたタイトラーはロールやクロールしか対応していないものが多い。タイトルエフェクトの豊富さは,RexEditの特徴だ。タイトルエフェクトとしては,カット,ディゾルブ,プラーディゾルブ,ディゾルブスライド,ソフトワイプ,ソフトスライド,レーザー,スライド,ワイプなどが用意されている(図3)。
 RT版のRexEditは,タイトルトラックが10本あるので,複雑なタイトルバックも作れ
るようになった。


図2●タイトル文字には任意の4色を設定でき,エッジも設定できる

図3●タイトルエフェクトも可能(図はレーザービーム)

(2)トランジション

 DVRex-RTの魅力は何といってもトランジションエフェクトのリアルタイム化にある。
リアルタイム処理できるトランジションは,ディゾルブを始めベーシックパターンが15種類用意されており(図4),ベーシックパターン内にはさらに複数のパターンがある。そして,エフェクトに対して任意のキーフレームを設定できるので,より自由なトランジション効果の作成が可能になっている(図5)。あらかじめ5つのキーフレームパターンも用意されており,新しいパターンを保存することもできる。トランジション効果の中では,アルファマットをワイプに利用したアルファワイプトランジションが筆者好みのトランジションだ(図6)。これも72種類のアルファパターンが用意されており,任意のパターンを作って利用することも可能だ。


図4●トランジション設定ウィンドウでは多彩なトランジションが設定できる
効果の度合いはキーフレームで設定でき,プリセットパターンも用意されている。

図5●ワイプパターンの例

図6●アルファワイプトランジションには自分で作成したアルファパターンも使用できる

(3)ビデオフィルタ

 モザイクやソフトフォーカスなどのビデオフィルタ類をノンリニア編集ソフトで使用するには,高い処理能力が必要なため,今まではCPUによるレンダリングが必要だった。しかし,DVRex-RTでは,ノイズ,ブラー,高品位ブラー,エンボス,線画,モノトーン,モザイク,モーションブラー,シャープ,ソフトフォーカス,カラーコレクション,マージ,ブレンド.矩形/楕円領域といった主要な14種類のビデオフィルタをリアルタイム処理することができる。
 特に,ブラーや,モーションブラー,ソフトフォーカスは使う頻度も高いので重宝するだろう(図7)。カラーコレクションもリアルタイム処理できるので,正確な色合わせもやりやすくなった(図8)。もちろんこれらはすべてキーフレームにより制御できる。


図7●ソフトフォーカス(左)や,モーションブラー(右)などのビデオフィルタがリアルタイムに処理できるのは非常にありがたい

図8●矩形/楕円領域を使ったモザイク
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日経CG2000年1月号