日経CG2000年2月号

●DVD制作までこなせるプロ向けビデオキャプチャ再生ボード DC1000

問い合わせ●ピナクルシステムズ TEL(03)5465-0648【URLwww.pinnaclesys.com 稼動OS●Windows95/98/NT 価格●46万8000円から。DVオプション付きの「DC1000/DV」が69万8000円 出荷●2000年2月上旬

図9●DC1000本体

 米Pinnacle Systems社の「DC1000」(図9)はMatrox社の業務向けビデオキャプチャボード「DigiSuiteDTV」の対抗馬的存在ではあるが,異なる点もある。DigiSuite DTVはDV,DVCAM,DVCPRO,DVC-PRO50,MPEG1,MPEG2など複数のビデオ形式に対応した製品であるが,DC1000はビデオのコーデックにMPEG2のみを採用した製品である。つまり,DC1000は,どちらかというとDVDなどのオーサリングに向いている製品だ。
 入出力はアナログ系にコンポジット S-VHSの入出力のほか,オプションでDVをサポートする。DV入力時はDV信号をMPEG2にリアルタイム変換してキャプチャする。この変換技術には独自のテクノロジ「SmartGOP」を使用しており,高画質での変換を可能にしている。最高50Mbps(25Mbps×2ストリーム)でビデオを再生できる「デュアルストリームプレイバック」に対応しており,ビデオ編集ソフトのPremiere RT 5.1上で,2次元のリアルタイムエフェクトが可能だ。このリアルタイムエフェクト用プラグインは,「Pixelan SpiceRack」(図10)と呼ばれ,約300種類が用意されている。
 画面上に文字やグラフィックスを挿入するキャラクタジェネレータには,同社の「TitleDeko」を搭載。サウンド編集用に「ACID Music」が添付されており,音楽制作も行える。
 このDV1000にはインタラクティブなビデオCD-ROMのオーサリング用ソフトとして米MinervaSystems社の「Minerva Impression CD-Pro」が添付されている。このソフトでは簡単なインタラクティプ性を持つコンテンツのオーサリングができる。


図10●約300種類のリアルタイムエフェクトが用意されている

上位機種では本格的なDVDオーサリングが可能

うれしいことに,このDC1000の上位機種「DVD1000」(149万8000円)には本格的なDVDオーサリングが可能な「Minerva Impression DVD」が添付されている。Minerva Impression DVDは日本では丸紅ソリューションが200万円くらいで扱っているものなので,高機能なソフトであることがお分かりいただけるだろう。しかし,ソフトを買うお金でDC1000がついてきてお釣りがもらえるとは,なんともおかしな話だが,得をすることなのでいいとしよう。
 実はこのDVDオーサリングソフトMinervaImpres-sionが同桐されていることが,DC1000(DVD1000)の生命線であると思われる。つまり,一般的なノンリニアビデオ編集システムのためというより,映像の編集からDVDオーサリングまで一貫して行いたい人には,もっとも適したシステムに仕上がっているといえるだろう。DVDオーサリングシステムは,少し前までは数千万円もしており,今でも1千万円くらいのシステムはたくさん存在する。その中において非常にコストパフォーマンスのいい製品といえる。

●CGクリエータに最適な非圧縮ビデオディスクレコーダ dpsReality

問い合わせ●日本デジタル・プロセシング・システムズ
TEL(03)3588-1013 【URU】 www.dpsj.co.jp 稼動
OS●WindowsNT 価格●58万円 出荷●1999年11月

 加DPS社の「dpsReality」(図11)は,非圧縮/圧縮の両方に対応するビデオディスクレコーダーである。解像度は業務用のD1に準拠した720×486ピクセルで,アルファチャンネルを完全な非圧縮で扱える。基本的には同社のビデオディスクレコーダ「Preception VR」(PVR)の後継機にあたる。しばらくはPVRも販売されるだろうから,PVRの上位機種ともいうことができる。非圧縮のビデオデータを扱えるようになったので,同社の「Hollywood」の後継機種ともいえる。
 dpsRealityは編集を伴わないCG制作や映像合成などの現場で使いやすいように作られている。非圧縮ビデオデータを扱えるようになったことで,ハイエンドレベルでの使用にも十分耐えることができる。DPS製品の特徴でもあるハード専用のビデオデータを仮想的にほかのフォーマット(AVI,連番のTARGAなど)で読み書きできる「バーチャルファイルシステム」も拡張されて「バーチャルテープシステム」となった。ネットワーク上のマシンから自由にファイルを引き出せるようになった。
 dpsRealityの映像入出力は,コンポジット,S-VHS,アナログコンポーネントに対応。オプションでSDI*4とDVが扱える。音声はRCA,XLRの入出力のほか,CDからの入力にも対応。SDIオプションを使用すれば,SPDI/FやAES/EBUでの入出力もサポートされる。
 これらの入出力は,標準ではたこ足状のケーブルを使用する。オプションでケーブルを接続する端子をまとめたブレークアウトボックスが発売されるようだ。
 ところで,DPS社の製品は,ビデオキャプチャボード自体にSCSIインタフェースを搭載しているものが多い。このdpsRealityにもUltra Wide SCSIが搭載されている。これは,バーチャルテープシステムを実現する上で必要なことと,パソコン側のSCSIを使うことによるビデオキャプチャ再生のコマ落ちといったトラブルを防いでいるのだろうと考えられる。
Ultra Wide SCSIは最大40Mバイト/秒までデータを流せるので,非圧縮のシングルストリームなら十分な速度だ。付け加えるなら,オンボードのUltraWide SCSIには14台までのハードディスクを接続できる。
 一般的なパソコンのPCIバスの電圧はほとんどが5.0Vだが,米SGI社のNTワークステーション「Sili-con Graphics 320」などでは3.3V仕様になっている。
dpsRealityは3.3Vと5.0Vの2つのPCIタイプに対応しているので,Silicon Graphics 320などの3.3Vタイプにも対応できる。Silicon Graphics 320用のMotionJPEGを入出力できるボードは,今のところ出荷されていないので,Silicon Graphics 320や同540のユーザーにとって,dpsRealityの登場はうれしい限りだろう。
 dpsRealityを実際に操作するには,「dpsRealityProgram」(図12)を立ちあげる。PVRのころの操作ウインドウは1つであったが,dpsRealityは4つのウインドウを操作し,簡単なカット編集も行うことができる。
 プレビューウィンドウでは呼び出した映像データを再生したり,コマ送りしたりすることができる。
このウインドウはPVRの操作ウインドウに似ている。
大きな違いは,ウィンドウ内で動画をモニターできることだ。また,映像の上でマウスを左右にスクラブするとビデオデッキのジョグ&シャトルに相当する操作ができる。すばやく確認したい時に便利だろう。
ここではウィンドウで呼び出したデータの確認以外にインポイント(素材の先頭部分)とアウトポイント(最後の部分)を設定できるが,素材のどの部分を使用するのかを指定するトリムウィンドウを用いれば,アルファチャンネルやオーディオデータを視覚的に確認しながらトリミングできる。
 トリミングした映像はプロジェクトピューウィンドウに並べて簡単なカット編集の映像を再生できるようになっている。現段階ではカットとカットを切り替える時に挿入する視覚効果であるトランジションを入れることはできないが,将来的には簡単なトランジション効果も付けられるようになるらしい。
 ただ残念なことは,現段階ではPVRのように業務用のビデオデッキをエミュレーションする機能が搭載されていない点だろう。しかしこれは近い将来搭載する予定なので非常に喜ばしい。プレイヤエミュレーションに関しては,2月くらいには可能になるようで,レコーダエミュレーションもそう遠くはなさそうだ。デジタルベータカムやD1同等のVTRエミュレーション機能をこんなに安く手に入れられるのはうれしい。
 もう1つの朗報は,波形モニターをビデオ再生時に常時表示可能にしてくれることだ。これで,dpsRe-alityを波形モニター代わりにも使用できる。外部波形モニターも要らなくなる。

*4 SDlとは,デジタルベータカムといった業務向けデジタルビデオデッキを,ノンリニアビデオ編集システムや映像機器に接続する時のシリアル・デジタル・インタフェース。


図11●dpsRealityのビデオキャプチャ再生ボード本体

図12●簡単なカット編集まで可能なdpsRealityの添付ソフト

●仕事に使えるビデオ合成ソフトがバンドル

図13●強力なプロ向けビデオ合成エフェクトソフト「DFX」を添付している

 dpsRealityにはビデオ合成エフェクトソフト「Digital Fusion」の機能限定版である「DFX」(図13)が付属している。Digital Fusionは,米Adobeのビデオ合成エフェクトソフト「After Effects」のような特殊合成に特化したソフトである。合成の方法はAfter Effectsのアプローチとは違っているが,Digital Fusionの特長を生かすことで,非常に完成度の高い映像合成ができる。「タイタニック」などのハリウッド映画で使用されているのも納得できる。
 Digital Fusionの売りは高度なマット合成とキー合成,エフェクト,トラッカー(画像の特定の点を追跡する機能)などが挙げられる。特に,Discreet*5のハイエンドビデオ合成エフェクトソフト「fire」や「smoke」などでしか使えなかった米5D社の特殊効果プラグイン「Monster」が使えることで,重宝がられているようだ。だたし,dpsRealityにバンドルされるDFXにはトラッカー機能などが省かれており,5D社のMonsterがオプションで使えるかどうかは不明である。
 しかし,強力なマット合成やキー合成が可能であり,グローやブラーなどのエフェクト類も使えるのでバンドルソフトとしては非常に役に立つと思う。特に,dpsRealityと一緒に使用すると,NTSCモニターへ映像信号をモニター出力できるので制作過程を正確にモニターできる点で助かるだろう。

*5 Discreetは,米Autodesk社の1部門。3次元CGソフト「3D Studio MAX」やビデオ合成エフェクトソフト「effect」,ビデオペイントソフト「paint」などを開発・販売している。

●ビデオ編集から合成まで可能なdpsRealityの上位機種 dpsVelocity

問い合わせ●日本デジタル・プロセシング・システムズ TEL(03)3588-1013 【URL】www.dpsj.co.jp 稼働OS●Windowa NT 価格●基本モデルが70万円から。dpsVe-locity-J Pro(基本モデルに,DV,422アタプタ,ブレイクアウトボックス,3次元エフェクトボードを追加した構成)がキャンペーン価格で148万円 出荷●2000年1月

加DPS社の「dpsVelocity」は,ハードウエア仕様がdpsRealityと基本的に同じノンリニアビデオ編集システムだ。dpsRealityとの違いは,ビデオ編集ソフトがついてくることだ。この編集ソフトはデュアルストリーム対応のビデオディスクレコーダ「Perception RT」に付属していた「Video Action RT」のdpsVelocityバージョンだ。ソフトの名称は「Velocity」(図14)という。本国ではすでに発売になっているが,日本での出荷は2000年2月くらいになりそうだ。
 このVelocityを使用することで,MotionJPEGなどの圧縮コーデックを使用した時には,デュアルストリームを使ったリアルタイムエフェクトが可能となる。オプションの3次元ボード「V3DX」を追加すれば,3次元のエフェクトもリアルタイム処理が可能だ。このオプションボードはPerception RT用の3DFXボードと同じものだが,Perception RTとの組み合わせに比べてフィールドの処理が改善されている。


図14●dpsVelocityは,本格的なノンリニア
ビデオ編集ソフト「Velocity」を装備している

●3DCG,ペイント,ビデオ編集まで揃った非圧縮ビデオ制作環境 VideoToaster for NT

問い合わせ●デイ・ストーム TEL(03)5570-8722【URL】www.dstorm.co.jp 稼働OS●WindowsNT 価格●VIDEO TOASTER for NT/Entryが48万8000円。同Standardが62万8000円 出荷●1999年10月

 米NewTekが開発したノンリニアビデオ編集システム「Video Toaster for NT」(図15)は,本誌でも何度か紹介しているのでご存知の人も多いだろう。現在はVideo Toaster for NT/Entryモデル,同Standardモデルが発売されているが,本命の「Video Toaster for NT/Switcher」の発売は少し遅れているようだ。当然これらには次期バージョンの3次元CGソフト「LightWave3D6.0」や,ビデオ合成ペイントソフト「AURA2.0」も同梱されるはずなので,本命製品の発売が遅れている背景にはスイッチャ・ソフトの開発の遅れ以外にも,こうしたソフトウエアの完成を待っているという理由もあるのかもしれない。
 VideoToaster for NT/Switcherを本命といったのは,非圧縮でのリアルタイムエフェクトを実現し,しかもエフェクトをソフトウエアで処理するというからだ。これが実現すれば,スイッチングとノンリニアビデオ編集にリアルタイムエフェクトを絡めて使用できる。しかし,現実的にはソフトウエアだけでリアルタイムにエフェクトを施すのは難しいらしく,何らかのアクセラレーションボードを使用する可能性もあるようだ。いずれにしても登場が待たれる。
 Video Toaster for NTのビデオキャプチャ再生ボード「FrameFactory」(図16)は,D1解像度,YUV4:2:2の非圧縮,シングルストリームに対応している。映像入出力はコンポーネント,S-VHS,コンポジットのアナログ入出力を備えている。オプションで,DVも入出力対応予定だ。オーディオの入出力はオプションで対応している。同梱されるソフトウエアは,ノンリニアビデオ編集ソフトとして「Speed Razor VT」(図17),画像合成とペイント用として「AURA1.0」(図18),そして3次元CGソフトの「LightWave3D 5.6」だ。ただし,Entryモデルの場合,機能限定阪の「LightWave3D for VT」(図19)が,Standardモデルはフルパッケージが同梱されている。基本的にはEntryモデルとStandardの違いはこのLghtWave3Dの違いになる。
 Switcherモデルは,ハードウエアとしてSwtcherカードが加わり,ソフトとして「Toaster Switcherコントローラ」を添付させる予定だ。オプションとしてケーブルをつなげやすくするブレイクアウトボックスも用意される予定。同梱ソフトもバージョンの上がったAURA2.0とLightWave3D 6.0の予定。


図15●Video Toaster for NTの構成

図16●非圧縮ビデオを扱えるビデオキャプチャ再生ボードの
「FrameFactory」ボード単体でも販売されている。

図17●ノンリニアビデオ編集ソフト「Speed RazorRT」で編集できる

図18●ビデオペイント合成ソフト「AURA」

図19●3次元CG制作には,LightWave3Dを使うEntry版は機能限定版であるが,Standard版は通常のLightWave3Dが同梱されている。
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