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Reviewer |
山田浩之(やまだ ひろゆき)
プロデューサ,デジタルクリエータ。映像,CG,Web,CD-ROMなどのマルチメディア製作会社B-ARTISTを主宰する。映像,マルチメディアのプロデュースのほか,デジタルビデオや3次元CGをクリエイトする。
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解像度フリー(実際には最大6万5535×6万5535ピクセル)の2次元ペイント合成ソフトウエア,「SatoriFilmFX64
3.3」が日本語版として登場した(図1)。Photoshopのようなレイヤー機能や,動画(AVI,連番ファイル)のロトスコーピング*1が可能である*2。またSatoriシリーズのうち,このFilmFX64は内部処理を64ビットで行うことができる。 |
図1●Satori FilmFX64の画面 |
●オブジェクト指向のデータ管理で大容量画像の取り扱いが快適
開発●英Spaceward Graphics社
【URL】www.satoripaint.com
問い合わせ●空気
【URL】www.koo-ki.co.jp
(092)736-6621
価格●18万円
出荷●2000年2月
稼働OS●Windows95/98/NT4.0 |
satori最大の特徴は,巨大なサイズの合成においても,非常に高速に操作ができる点にある。これはPhotoshopを例にして説明するとわかりやすい。
Photoshopは画像データをビットマップデータとして扱い,大きいデータだろうが小さいデータだろうが,すべての画像をRAMに展開し処理する。フィルタや合成も,すべてのデータに対してRAM上で計算し表示する。もし,ポスターサイズのデータに複数のレイヤーを使用した場合は,非常に大量のRAMが必要になる。RAMが不足すれば仮想メモリとしてハードディスクを使用し,処理スピードが低下してしまう。
これに比べてSatoriでは,すべてのデータをメモリーに展開して合成することはしない。オリジナルデータに加えられたデータの操作のみを記録し,表示する際にオリジナルデータをもとに計算(レンダリング)し,表示するしくみをとっている。実際にモニターに表示されるデータは,モニターのスクリーン解像度(72dpi程度)なので,オリジナルデータが巨大であっても,軽いデータ分しか計算しない。これにより,あたかも非常に小さいデータを扱っているかのように繰作することができる。
これはSatoriがオブジェクト指向でプログラミングされており,オペレーションした操作のすべての内容をオブジェクトとして記録しているからだ。このデータはキャンバス(CANVAS)ファイルとして保存される。
このCANVASファイルは,実際のサイズのデータを持っていないため,いつでも好きな解像度で出力することができる。つまり,3DCGソフトのデータファイルみたいなものだと考えると理解しやすい。そのため,Photoshopのように作業の終了=作品の完成とは違い,最後に必要な出力解像度でレンダリングする必要がある。
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●作業がオブジェクトとして管理され画像の修正や履歴管理も容易
では,ここでSatoriの基本的な操作を見てみよう。
Satoriにはいくつかのツールやボタンなどのセットがある。これらはフローティングパレットとして使用できるほか,自分が使いやすいようにツールバーに収めて使用する事ができる。
アクションパレット(図2)では,全体的な設定をする「キャンバス」,レイヤーを制御する「レイヤ」,キーイングの設定をする「キーイング」,図形処理の「ジオメトリ」,ペイントの設定をする「ペイント」を,それぞれボタンで切り替えながら細かい設定の制御を行うことができる。また,「オブジェクトリスト」や「レイヤーリスト」,「ズームリスト」を表示させるボタンもある。
「オブジェクトリスト」(図3)はSatoriの持つオブジェクト指向プログラムの特徴を示しており,作業した内容がオブジェクトとして記録されている。これを操作することで,前の状態に戻ることも簡単だ。たとえばペイント機能でエアーブラシをかけた場合や,ブラー効果のペイントを行った場合も,それぞれが別のオブジェクトとして記録される。全体にフィルタをかけるような場合でも,Satoriの場合は単に画面全体にフィルタをかけるのではなく,選択されたエリアにフィルタ効果をかけることになる。画像全体にフィルタをかけたいのなら,選択範囲を全体にすればいい。そして,Satoriはこのフィルタのかかった範囲をも,オブジェクトとして保存する。もしフィルタを掛け直したいのなら,このオブジェクトを削除すればよい。
*1ロトスコーピングとは,画像合成のためのマスクを1コマずつ手描きで作成する手法のこと。
*2 Satoriは,AfterEffectやCommotionなどのようなタイムラインには対応していない。動画に対する編集は,連番面像,または動画ファイルをコマ送りしながらペイントすることとなる。
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図2●アクションパレット
基本的な設定やツールのパラメータ調整は,ここから始まる。 |
図3●オブジェクトリスト
オブジェクト指向のSatoriの特徴が最も良く現れている個所。過去の動作の履歴がツリー構造で表示されている。 |
●レイヤー機能はやや寂しい
「レイヤーリスト」(図4)は,Photoshopのレイヤーと同じように,レイヤーの上段が画面の手前として重ね合わされる。ここではレイヤーの表示・非表示,透明度,削除が行えるが,その他の設定はアクションパレットの「レイヤ」プロパティーで行う。合成方法は「通常」,「乗算」,「ティント」(Photoshopの「カラー」モードに相当),「シェード」(同「輝度」に相当)の4種類で,Photoshopに比べ少ない。Satoriでは画像の調整を,レイヤーの合成よりも豊富なエフェクトで行おうとしているように見える。
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図4●レイヤーリスト |
●ストロークの途中からやり直せるペイント機能
ここでペイント機能を見てみる。ペイントをおこなうときは,まずアクションパネルでブラシのサイズと種類を決め(図5左上,右),カラーパレットで色を指定してからペイントする。ブラシは予め25種類用意されているが,独自のブラシを作ることもできる(図5下)。ブラシのストロークをアニメーション化することもできる。また,ブラシのアンドゥは「Brush
Undo」パレットのスライドバーで,ペイントのストロークの途中まで戻ることができる。つまり,ブラシの適用をやり直したい場合,適用したストローク全体を取り消すだけでなく,ペイントのストロークの途中までを取り消すことができるので,本当に間違った地点の直前まで戻ることができる(図6)。
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図5●ペイント機能の設定タブ左上から,サイズ,ブラシの種類,追加ブラシの設定画面。
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図6●Brush Undo適用前(左)と適用後書き間違える直前までのブラシストロ−クを取り消すことができる。
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日経CG2000年6月号 |