山田浩之
Yamada Hiroyuki

プロデューサ,
デジタルクリエータ

TV番組制作会社でTV番組,CM,イベントなどのプロデューサを経て独立。映像,CG,CD-ROM,Webなどのマルチメディア制作会社B-ARTISTを設立。現在B-ARTIST代表取締役。映像,マルチメディアのプロデュースのほか,自らディジタルビデオや3次元CGをクリエイトする。その傍ら,ディジタルビデオやCG関連の評価,試用レポートを執筆。PCを自作するなど大の機械好きである。

 After Effectsの最新バージョンがついに発表された。
 After Effects4.0については,今月号の新製品評価室で詳しく紹介している。
 今回のDIGITAL VIDEO WONDERLANDでは,このAfter Effectsの強力な対抗馬として成長してきたDigital Fusionとeffect&paintを紹介しよう。
 両製品とも,After Effectsには無い優れた特徴を持っており,合成エフェクトソフトの導入を考えている人には,十分検討の価値がある。
 「After Effects4.0日本語版」が発表になった。約3年ぶりのメジャーアップグレードということになる。
 After Effectsは,従来ハイエンド・ワークステーションでしかできなかったデジタル合成をパソコン上で可能とした。前バージョンの3.1は,映画やテレビでその実力を証明し,確実に合成ソフトとしての地位を築いてきた。パソコンを使った合成がここまで浸透したのはAfter Effectsの功績が非常に大きい。
 そして,今回登場したAfter Effects4.0は,さらに完成度を高め,機能面での充実も図られている。筆者もAfter Effects4.0のワープ機能をCMでさっそく使用してみたが,前バージョンに比べて操作性が格段に向上していることを実感した。After Effects4.0日本語版の新機能については今月号の「新製品評価室」で詳しく紹介しているので参考にしてもらいたい。
 さて,After Effectsが合成ソフトのメジャーソフトとして成長している間に,実はその対抗馬とも言える合成ソフトウエアも確実に育っている。これらのソフトは,After Effectsとは違ったコンセプトを持ち,優るとも劣らないソフトに仕上がってきた。それが,eyeon Softwareの「Digital Fusion2.5」とDiscreet Logicの「effect2.1&paint2.1」だ。今回は,このDigital Fusion2.5とeffect2.1&paint2.1についてお話しよう。

■独特のインタフェースを持つハイエンド映像向きのDigital Fusion2.5

図1●Digital Fusion2.5のユーザーインタフェース
マスクや合成後の映像,アルファチャネルなど,いくつもウインドウを開いて同時に確認できる。

Digital Fusion2.5は,Perception VRでおなじみのDPSの子会社eyeon Softwareのデジタル合成ソフトウエアだ。Windows NT上で稼動し(インテルとAlphaに対応),オブジェクト指向のGUIを持った完全なマルチスレッド,マルチプロセッサ対応のソフトである(図1)。開発者によると,Discreet Logicのflameやflintなどのワークステーションベースのハイエンド合成ソフトの性能をパソコン上で実現させるべく開発した製品という。そのため,用途を映画やCMなどのハイエンドに絞っており,ハイエンドでの使用に十分耐えうる性能と品質を持っている。最近ではハリウッド映画の「アルマゲドン」や「タイタニック」などでも使用されている。日本でもすでに数百人のユーザーがおり,CMなどの合成に使用されている。
 このソフトには,一般クリエータ向けのDigital Fusion2.5(販売は日本DPS,03-3588-1013,39万8000円)と,特にフィルムを主体としたハイエンドプロダクション向けのDigital Fusion2.5Post(89万8000円)の2バージョンがある。Postバージョンは,(1)64ピットの映像が扱える,(2)Ultimateが付属する,(3)ソフトからVTRデッキをコントロールできる,(4)ソフトから画像のキャプチャ/出力ができる,(5)EDL出力ができる,(6)HD・TV(16:9)に対応している-などのハイエンドユーザー向けの機能が付加されている。また,今回のバージョン2.5から「Render Node」という分散レンダリングエンジンも発表され,これにより効率的な分数レンダリングが可能となった。
 Digital Fusion2.5の特徴は,何といっても独特のユーザーインタフェースと合成アーキテクチャにある。
 合成ソフトは,レイヤー上に画像を合成していくのがほとんどだが,Digital Fusion2.5は一見水道管ゲームにも似た独自の「Flow Layout 」で,複数の動画像を一つのオブジェクトと見立てて並べていく。これらは自由に関係を付けることができ,それぞれベジェ,スプライン,タイムライン,キーフレームでエフェクトファクターをコントロールすることができる。このインタフェースは一見取っ付きにくいように見えるが,実際に操作を始めると案外早くおぽえることができる。また,合成の流れをフローで見ることができるのでユーザーインタフェースに慣れてくると手放せなくなる。
 Digital Fusion2.5は,いつでもどの場所でもセーブすることができるので,合成の途中過程や試行錯誤の段階をいくつもレンダリングして比較することができる。また,合成前の映像や合成結果の映像,αチャンネルなどいろいろな角度から一度にモニターすることができるマルチモニター機能を持っている(図1参照)。これらは,自分でカスタマイズすることができるので合成作業を多角的に確認しながら進められる。これは,非常に優れた点だ。
 対応するビデオ出力ボードを使用すれば,NTSCモニターに出力できるので色味の違いや色にじみなどを確認しながら作業ができることも大きなメリットだ。現在,Digital Fusionに対応したビデオボードとしては,DPSのPerception VR/RT,MatroxのDigi Suite,Digi Suite LE,TruevisionのTarga2000シリーズなどがある。
 Digital Fusionのエフェクトは,(時間軸とエフェクト座標上の)スプラインカーブでコントロールすることができる(図2)。また,動きの制御もモーションパス(図3)により,スプラインカーブでコントロールすることができる。動きはきわめてスムーズな制御が可能だ。
 合成エフェクト機能としては,パックグラウンドカラー,イメージマニュピレーション,カラーコレクター,クロマキー,マットキー,ワープ,ブーリアン合成,テキストフィルター,モーションブラー,マスク,モーショントラッキング(図4),3Dデプスツールなどがある。
 特にバージョン2.5で追加された3Dデプスツールは強力だ。Alias/Wavefrontの「MAYA」や「Softimage3D」,「Light Wave」,「3D Studio MAX」などでバッファ(奥行き情報)を持たせてレンダリングしたデータを合成に使用する場合,そのデータの持つ3次元情報(Zバッファ)を使って,合成やシェーディング,フォグ,テクスチャ,被写界深度を2次元で再現することができる(図5)。
 3D Studio MAXで,オブジェクトやマテリアルにID番号を付けておけば,ID番号を使用してエフェクトをオブジェクトやマテリアル単位に加えることもできる。2次元データに対して擬似的に奥行き(Z軸)を付けて3次元エフェクト効果を実現することもできる。
 今回の2.5では,RAMにデータを読み込ませることでリアルタイムプレビューも可能になった。
 プラグインソフトとしては,5D(ファイブディー)がMonsterというソフトをDigital Fusion2.5用にいち早く出荷した(図6)。Monsterは,flameやflintなどのハイエンドソフト用の高品位なエフェクトプラグインだ。これにより,Digital Fusionでハイエンドソフトと同じような効果を付けることが可能となった。


図2●スプラインコントロール

図3●モーションパス


図4●モーショントラッキング
灯りの動きをトラッキングしてる。


図5●Zバッファによる合成


図6●5DのMonsterプラグインはDigital Fusionにいち早く対応したEffect&Paintにも対応予定だ。
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日経CG1999年4月号