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山田浩之
Yamada Hiroyuki
プロデューサ,
デジタルクリエータ
今年の夏はゲーム用のCGを作って過ごした。時間があったのでいろんなことを試してみることができたのは良かったけれど,SIGGRAPHに行けなかったのは残念だ。今年もSIGGRAPHではいろんな新製品が発表されたようだ。個人的に興味があるのは加DPSのdpsRealityと加MatroxのRT2000,それに米PlayのTrinity用TimeMachineだ。ところで,SGIのNTワークステーションはどうなるのだろうか。
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民生用のビデオカメラはDV方式が主流になってきた。
業務用でもDV関連製品が登場しており,放送でも使われる機会が増えるだろう。現在のアナログ中心のシステムと比べて,安価に導入できるのがうれしい。
今回は,DVノンリニア編集システム導入の基礎を解説する。 |
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最近ではパソコンを使ったノンリニア編集も一般的に知られるようになり,趣味や仕事で利用している人も増えてきた。特にDVカメラの登場以後,一般の人でも高画質なビデオ映像を扱えるようになったこともあり,DVでノンリニア編集をする人は今後も増え続けるだろう。しかし,始めてみようと思ったものの,どこから始めたらよいか分からなくて困っている人や,始めてみたもののいろんな璧にぶつかっている人も結構いると思う。
「どんな機材を揃えたらよいか分からない」とか「ビデオ撮影のコツがわからない」,「パソコンで作ったデータをノンリニア編集で生かしたいが・・・」など,一歩進めばまたそこに一つの悩みが生じてくる。そこで,今回から数回(3回を予定)に渡って,DVノンリニア編集を仕事で生かせるように,機材導入,失敗しないカメラ撮影法,効果的な編集方法などを順序立てて解説していくことにしよう。 |
4種類あるDV
■DVフォーマットの種類
図1●DVテープのトラックパターン |
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DVには一般の民生用DVカメラに採用されているDVCと,それを業務用に拡張したソニーの「DVCAM」,松下電器産業(Panasonic)の「DVCPRO」と「DVCPRO50」の4種類がある(表1)。DVCとDVCAM,DVCPROの映像信号はYUV=4:1:1でサンプリングされ,圧縮率は1/5だ。したがって,これらは信号的にはまったく同じである。
違いは,信号をテープに記録する際の記録法方だ。業務用に拡張したDVCAM,DVCPROは記録するテープの回転数を上げ,記録するトラック幅を広げることで録画再生の信頼性を高めている(図1)。
注意したいのはDVCAMとDVCPROのテープ速度(記録トラック幅)が違うので2つのテープに互換性がないことだ。DVCPRO50はDVCPROをさらに拡張させたもので,映像信号をYUV=4:2:2でサンプリングし,1/3.3に圧縮している。この場合,テープヘの記録方法はDVCPROと同じだ。このDVCPRO50は放送用で使用されているデジタルベータカムのYUV=4:2:2,1/2圧縮の画質とほぼ同等であり,放送レベルの機材としてはコスト的に安価なので,最近プロダクションでも注目されている。
■必要な機材にはどんなものがあるか
コストがそれほどかからないといっても,必要な機材は多い(図2)。まず,映像撮影のためのDVカメラが必要になる。そして,この映像をノンリニア編集するためのハードウエアとしてパソコン本体とDV入出力ボードが必要だ。
ノンリニア編集ソフトも必要になる。これらは別々に購入することもできるし,ターンキーシステムとしてセットアップされているものもある。最近ではノートブックのパソコンでもDVノンリニア編集ができるものが登場してきている。
最後に,制作した映像を出力する機器が必要になる。
通常DVでノンリニア編集したものはDVで出力した方が劣化が少ないので,最終的にはDVテープに出力することが多いだろう。この場合はディジタルビデオデッキを用意することになるが,撮影に使用したDVカメラを使用してDVテープに録画できるのでディジタルビデオデッキは必ずしも購入する必要はない。しかし,操作性の向上を考えるなら用意した方が賢明だ。この辺は予算との兼ね合いで購入するかどうか決めよう。
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表1●DVフォーマット比較表 一般的な使用ならDVで十分だろう。
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図2(右)●システム構成
DVデータの転送速度は,3.6Mバイト/秒なので,SCSIインタフェースカードやハードディスクは余裕を持って高速なものを用意しておきたい。SCSlインタフェースカードは,転送速度が20Mバイト/秒のUltraSCSIやWide
SCSIか40Mバイト/秒のUltra Wide SCSIのものを選ぼう。ハードディスクは5Mバイト/秒以上のものを選ぶと余裕が持てる。なお,図中のDVレコーダーはDVカメラで代用できる。
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撮影機材の選び方と撮影の心構え
■DVカメラの選択のポイント
ビデオカメラにはアナログ記録方式の「Hi8」やディジタル記録方式のDVがある。ここでは当然DVカメラを選ぶことになる。民生用のDVカメラは一般的にDVCという記録方式を使っている。しかし,ハイエンドの民生機にはDVCAMやDVCPROといった業務向けのフォーマットを使ったものがある。これらは,その機種専用のフォーマットでのみ記録されるので,撮影後に一般のDVC機器では再生できなくなる。映像業務を専門に考えている人は,使用するほかのDV機器や納品形態により選択肢の一つに挙げてもいいだろう。しかし,趣味やインハウスで使用する場合は一般的なDVC対応のカメラを選択するのが無難だろう。
DVカメラの選択で次に注意すべきはカメラ部分の性能だ。これはレンズ,画素数、CCDが決め手になる。レンズの違いは解像度や発色などの画質に表れる。例えば,カールツァイスレンズを使ったものがあるが,レンズの性能が映像にも現れてくる。しかしこれらは数値では表せないのでここでは画素数,CCDについて説明する。
画素数(図3)とはレンズから入った映像受光部の入力解像度で,これは大きければ大きいほど画質が良くなる。画素が受光した光をRGBのビデオ信号に変換する際に,1枚のCCDパネルで受光した光をRGBに変換する場合を1CCD方式,3つのCCDを用いてR,G,BをそれぞれのCCDで受光する方式を3CCD方式という。(図4)。
カタログ上は上記のような違いを参考にして選択することになるが,このほか,ピントのオートとマニュアルの切り替えが付いていた方が便利だし,手ぶれ防止の機能も付いていた方がいい。バッテリーの持ち時間や,付属の液晶モニターの画質,光量(明るいところでも使いものになるか)なども選択の際の条件の一つだ。
筆者お薦めのカメラは画質で言えば,ソニーの「DCR-VX1000」(図5,35万円)だ。液晶モニター付きだと「DCR-TRV900」(図6,30万円)もいい。業務用ならDVCAMフォーマットの「DSR-PD100」(図7,36万円)もお薦めだ。レンズ交換のできる,キャノンの「XL1」(図8,58万8000円)もいいカメラだ。そして,今最も注目したいのは,9月に発売するキャノンの新製品「XV1」(34万円)だ。VX1000を超えたという噂もある。これらのカメラは民生機では高い方の部類なので,予算と照らし合わせて購入しよう。
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図3●画素数の概念図 |
図4●3原色分解型プリズムと3CCD方式 |
図5●DCR-VX1000(ソニー) |
図6●DCR-TRV900(ソニー) |
図7●DSR-PD100(ソニー) |
図8●XL1(キャノン) |
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日経CG1999年9月号 |