山田浩之
Yamada Hiroyuki

プロデューサ,
デジタルクリエータ

今年の夏はゲーム用のCGを作って過ごした。時間があったのでいろんなことを試してみることができたのは良かったけれど,SIGGRAPHに行けなかったのは残念だ。今年もSIGGRAPHではいろんな新製品が発表されたようだ。個人的に興味があるのは加DPSのdpsRealityと加MatroxのRT2000,それに米PlayのTrinity用TimeMachineだ。ところで,SGIのNTワークステーションはどうなるのだろうか。

 今回は、DVノンリニア編集システムの構築方法を説明する。
 DVノンリニア編集システム構築に必要なパソコン、DV入出力ボード、映像専用ハードディスク、ソフトウェア、周辺機器について、選択のポイントを伝授しよう。
 前回は、DVカメラや撮影機材の選択方法と撮影についてのワンポイントアドバイスを行ったが、今回から2回に渡ってDVノンリニア編集システムの構築法と撮影したビデオ素材を利用してノンリニア編集を行う方法論をお話したい。
 今回はシステム構築の話が主になるが、システム構築については今までもずいぶんとお話ししているし、最近出版された日経CG別冊「ノンリニアビデオ編集完全ガイド」(日経BP社刊2300円)でも詳しく説明されているので、ここでは基本的なことをおさらいしながら話を進めることにしよう。

システム構築には何が必要?

 DVノンリニア編集システム構築に必要なものは、(1)パソコン、(2)DV入出力ボード、(3)映像専用ハードディスク、(4)ソフトウェア、(5)その他周辺機器ということになる。ところで、これらは機種や価格の差で何が違うのだろうか。操作性や機能、性能の違いにはどんなことがあるのだろう。システム構築に当たり、それぞれの機器を選択する場合のポイントを簡単に説明しよう。

(1)パソコン

 パソコンとしては、一般的にはMacintoshやWindowsマシンを使用するのがほとんどだろう。パソコンの性能の差はCPUによる。MacintoshとWindowsではCPUか異なるので一概には言えないが、同じCPUで比較するなら周波数が高くなるほど性能は良くなる。つまり、演算スピードが速くなる。これは、DV編集では合成の処理スピードに大きく貢献する。しかし、CPUの演算スピードはほぼ周波数に比例しているので、500MHzと600MHzでは約2割程度のスピードアップにしかならない。このスピードアップとCPUの価格差をどう判断するかはユーザーの判断に委ねられる。ただ、合成の処理スピードはCPUの速度以外に搭載されているメモリーの容量にも関係する。メモリーは128〜256MBくらいは搭載しておいた方が無難だ。このほか、パソコンの拡張性(拡張スロット数など)も選択要素になるだろう。

(2)DV入出力ボード

図1●カノープスのDVRaptor

 DVカメラ(DV機器)からパソコンにDVデータを取り込むのがDV入出力ボードだ。このDV入出力ボードは、オプションカードとしてパソコンに装着して使用するが、最近ではPower MacintoshG3/G4などパソコン本体に最初から内蔵されたマシンも登場してきた。Windows系では近々登場するWindows2000がlEEE1394をサポートする予定なので、今後はますますこうしたDV端子付きマシンが多くなるだろう。最近ではソニーのVAIOなどノートブックパソコンにもDV端子(IEEE1394)が搭載され始めてきた。
 パソコンに最初から付いているDV端子や安価なDV入出力ボードと値段の高いDV入出力ボードとでは、機能、性能で大きな差がある。では、どこかどう違うのだろうか。
 DV入出力ボードには大きく分けてハードウエアコーデックを搭載したものと搭載していないものがある。ハードウエアコーデックが搭載されている場合、DV機器から入力したDVデータをパソコンに取り込みながらDVデータを解凍してモニターやRGBディスプレイにリアルタイム表示が可能だ。もちろん編集作業中もDVデータを映像としてリアルタイムに出力することかできる。
 一般的に安価なDV入出力ボードやDV端子が標準搭載されたマシンにはハードウエアコーデックは搭載されていない。したがって.DVデータをパソコンに取り込む時にフル解像度でモニターしようとすると、外部DV機器(DVカメラなど)から出力されるビデオ信号をモニターするしかない。パソコンでDV編集する時も、外部DV機器を通して出力される映像信号をモニターする。この時にパソコンのRGBディスプレイ上では簡易的なモニターしかできないのが一般的だ。
 もっとも、カノープスのDVRaptor(図1)のように外部DV機器を通して出力された映像を再度DVRaptorに入力してRGBディスプレイ上にNTSC信号をオーノトレイして表示できるものもある。これによりハードウエアコーデック搭載機と同等の操作性を持つことかできる。
 ハードウエアコーデック搭載ボードは高価格な製品が多い。これらの製品にはオーバーレイやDVEなど多彩な機能を搭載したものもある。最近ではデュアルストリーム対応の完全なリアルタイムDVボード(エフェクトをリアルタイムでかけられるボード)も登場してきた。

(3) 映像専用ハードディスク

 DV映像信号はデータ的には1/5に圧縮されてはいるが、それでも1秒間に約3.6Mバイトのデータ量か必要とされる。音声を含めると約4Mバイト/秒のデータ量が必要になる。これは、一瞬でもこれ以下のスピードに落ちるとコマ落ちか生じることを意味する。したがって、映像編集用には、安定して動作きせるためにシステムとは別に高速ハードディスクを用意するのがベストだ。別ディスクが用意できない場合はパーティションを切ってシステム用と映像用は分けた方かいい。
 最近のハードディスクは非常に高速になってきているので1台で使用してもDV編集は十分可能だが、2台以上のハードディスクを組み合わせてストライピング接続(RAID)を行うとさらに安定する。ハードウェア方式のRAIDは高価だが、 RAIDソフト(MACではREAMUS、FWB HDTooIKitなど、WindowsNTでは標準装備)を使用すれば比較的簡単に構築できる。この時、組み合わせるハードディスクは同じ機種にした方が相性はいい。
 ハードディスクのインタフェースにはSCSIやlDEなどの規格があるのはご存知の通りだ。映像編集用にはULTRA SCSIやULTRA2 WIDE SCSlを使用するのが望ましい。
しかし、IDEハードディスクでもAHA−33やAHA−66に対応した高速な製品も登場してきたのでDV編集にはむしろIDEハードディスクの方がコストパフォーマンスがいいかもしれない。
 パソコンがE−IDEタイプならマスター2チャンネルとスレーブ2チャンネルの合計4台を取り付けられるので前述のRAIDを組むことができる。この場合、同チャンネルのマスターとスレーブを組むよりも別チャンネルのマスター同士を組み合わせたほうがいい結果が出るようだ。

(4)ソフトウエア

 ノンリニア編集には当然、映像編集用のソフトウエアか必要になる。DV端子搭載パソコンの中には、EditDV(図2)やRexEdit(図3)のように本格的なDV編集が可能な編集ソフトを標準搭載しているものもある。もし、これらでも役不足の場合にはPremiere5.1やMedia StudioProなどの汎用ソフトウエアを購入すればよい。映像業務用にはもっとハイエンドの編集ソフトを組み合わせることもできる。単に映像編集ソフトといっても機能や操作性は異なる。金額が高いからいいというものでもないので自分の必要とする目的を知った上で選択するようにしたい。
 ここで一つ注意したいのは、これらの編集ソフトとDV入出力ボードによっては、使用できない組み合わせもあるということだ。購入前に確かめておきたい。

図2●Digital OriginのEditDV 図3●カノープスのRexEdit
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日経CG1999年10月号