映像制作


山田浩之
Yamada Hiroyuki

プロデューサ,
デジタルクリエータ

TV番組制作会社でTV番組,CM,イベントなどのプロデューサを経て独立。映像,CG,CD-ROM,Webなどのマルチメディア制作会社B-ARTISTを設立。現在B-ARTIST代表取締役。映像,マルチメディアのプロデュースのほか,自らディジタルビデオや3次元CGをクリエイトする。その傍ら,ディジタルビデオやCG関連の評価,試用レポートを執筆。PCを自作するなど大の機械好きである。

 筆者が製作した日経CGビデオ「Premiere5.0によるノンリニア編集完全制覇」の製作にあたっては,Premiere5.0のバグに苦しめられた。だが,先日バージョンアップ版のPremieere5.1が正式に発表された。
 Premiere5.1は,5.0のバグがフィックスされているほか,パフォーマンスが向上し,RAMプレビューなど新機能も追加されている。
 今回は,このPremiere5.1について解説しよう。
 今回は,ようやく制作が終わった日経CGビデオ「Adobe Premiere5.0によるノンリニア編集完全制覇」(図1)の制作後記を述べるとともに,先日発表されたAdobe Premiere5.1日本語版について,お話ししたい。

■苦しめられたPremiere5.0のバグ

 「Adobe Premiere 5.0によるノンリニア編集完全制覇」の制作に当たってはPremiere5.0のバグに苦しめられた。大きなプロジェクトを制作していると無いはずのフレームが編集タイムラインに突然現れたり,クロスディゾルブがきれいにディゾルブしなかったりと,ビデオ編集の実作業では非常に困ることを多数発見した。ビデオキャプチャボードによってはドライバーソフトやサードパーティ製のデバイスコントローラが完全に対応しておらず,動作環境が不安定になることもあった。正直言ってかなり苦しめられた,というのが本音だ。そんな事情もあって,ビデオの制作が大きく遅れてしまった。早くからビデオを注文して下さった方には本当に申し訳なく思っている。
  Premiere5.0はバグが多かったが,ようやくバグからは解放されそうだ。というのは,Premiere5.0のバージョンアップ版であるPremiere5.1が正式に発表になったのだ。発表によると5.1では5.0のバグが改善されており,パフォーマンスも向上しているそうだ。また,RAMプレビュー機能により,高速なプレビューができるようになっている。

■昨年末に使ったPremiere5.1β版はまだ使えなかった

 実は筆者は,ビデオ制作の際にアドビシステムズに無理を言って借してもらったPremiere5.1のβ版の使用を試みたのだが,初期ロットのβ版のためタイトル機能がうまくインストールできず,途中で使用を諦めていた(後で聞いたところでは,これは単なるインストーラのバグだったらしい)。
 また,Premiere4.2では完全なリアルタイム動作が保証されていた米Pinacleのビデオキャプチャ再生ボード「ReelTime」をフォーカルポイントコンピュータから借りて,開発途中のPremiere5.1RT(リアルタイムエフェクトが可能なボード専用のPremiere,後述)とβ版ドライバーソフトの組み合わせで強引に使ってみたのだが,米Pipeline Digitalのデバイスコントローラ「ProVTR」(後述)が動作不安定になったため,結局使用を断念せざるを得なかった。
 ここで,また困ったことが起きた。Premiere5.1の使用をあきらめて,5.0に切り替えようとしたところ,Premiere5.1を使って途中まで制作したプロジェクトが Premiere5.0で使用できなかったのだ。つまりたった0.1のバージョンアップにも関わらず。5.0と5.1でデータの互換が無いのだ。5.1は,5.0のプログラムに大きく変更が加えられているようだ。
 もちろん,こうしたPremiere5.1β版での不都合はあくまで昨年末の話であり,今回改めてより製品版に近い Premiere5.1β版を使用した感じでは不都合はないようだ。

■プレピューが高速化されたPremiere5.1

 以前にPremiereとDPSのビデオキャプチャ再生ボード「PerceptionVR(以下PVR)」を使用したビデオ編集術についてお話ししたことがあったが(日経CG10月号),今回は,最新のPremiere5.1日本語版とPVRを使ったノンリニア編集について,解説しよう。
 Premiereは,5.0からドライバーもPVRに完全対応しており快適な動作をしていたが,Premiere5.1日本語版を使ってプロジェクトをレンダリングしてみると,アドビの言う通り確かにパフォーマンスが向上した。Premiere5.0ではレンダリング開始後しばらくしてから計算が始まるような感じだったがPremiere5.1ではすぐに計算が始まる。
 また,Premiere5.1の目玉機能であるRAMプレビュー(図1)は,ハードディスクを使わずに,レンダリングしながらリアルタイムに再生するため,非常に高速なプレピューが可能となる。使用してみても,かなり便利だと感じた。しかし,レンダリングしながら再生するためプロジェクトの解像度が大きいと正確なプレビューができないようだ。とはいっても,大まかな動きを確認する時には非常に重宝する。
 5.1では,QuickTime3.0に組み込まれているエフェクトをPremiereの効果として使用できるようになった(図2,3)。マルチメディアタイトル作成などで面白いことができそうだ。QuickTimeエフェクトプラグインはアドビのホームページから近々無償でダウンロードできるようになる予定だ。


図1●プロジェクト設定でRAMプレビューをチェックしておくと,プレビューが高速化される


図2●QuickTime Transitionsをインストールすると,
効果パレットにQuickTime Transitionsが追加され,QuickTimeの様々な効果が使える(画面はβ版)


図3●QuickTime Effectsをインストールすると,フィルタにQuickTime Effectsが追加される(画面はβ版)

■PVRとの相性がより良くなった

 PVR(図4)はDOS/Vマシン用のビデオキャプチャ再生ボードで,PVDと呼ぶ独自のファイルフォーマットでムービーファイルを作成するが,バーチャルファイルシステム機能により仮想的にtgaやtifなどの静止画シーケンシャルファイルを生成するので,PVDファイルに対応していないソフトでも使用できる。このような理由から特に3DCGソフトウエアのユーザーに根強い人気がある。
 しかし,ソフトウエア上からフレーム落ちなくPVRのピデオ再生を行うには,やはりPVDファイルに正式に対応している必要がある。Premiereはバージョン5.0の時からこのPVDファイルに正式対応しており,完全にリアルタイム再生が可能となっていた。さらに,今回発表された5.1からは,エフェクトアクセラレータ・ボード「DPS f/x」(図5)にも完全対応し,エフェクトの高速レンダリングも可能になった。f/xカードの新しいドライバーはDPS社のWeb(ww.dps.com)からダウンロードできる。


図4●DPSのビデオキャプチャ再生ボード,Perception VR

図5●エフェクトが高速化されるDPS f/xカード
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日経CG1999年2月号