映像制作


山田浩之
Yamada Hiroyuki

プロデューサ,
デジタルクリエータ

2000年もすぐそこにやってきている。小さい頃はずいぶんと先の話に思えていたのに,月日の流れるのは本当に早いものだ。そして,この連載も気が付けばまる2年。これもまた早い話だ。・・・と,物思いにふけっていてもしょうがない。2000年はもっともっと楽しい年にしてやるぞ!!そして,もっともっと働いていいものを作ることにしよう。そうそう,その前に営業・・・どなたかお仕事ありましたらなんでもお受けします。企画,撮影,制作,CG,合成なんでもやっていますのでご一報を。また,CGや合成を一緒にやりたい人がいたら連絡ください。では,よい年をお迎えください。

 2年間連載してきたDIGITAL VIDEO WONDERLANDだが残念ながら今回で最終回。最終回では,今後のデジタルビデオの行方を占う。
 この連載は一応今回で終わりだが,筆者の山田さんには,来年以降も様々な形で本誌で活躍していただくつもりなので,乞うご期待。
 Digital Video Wonderlandの連載が始まってちょうど2年が過ぎた。読者の皆さんからはいろいろな質問やご意見をいただき本当にありがとう。実は今回をもって,このコーナーの連載は終了することになった。
 Digital Video Wonderlandは,ビデオや映像の初心者にも分かるようにやさしく解説してほしいという編集部からの要請で始めたわけだが,読者によってはやさしすぎたり,難しすぎたりしたかもしれない。しかし,パソコンでデジタル映像(画像)を扱う場合の基本的な注意や方法論はちゃんと話してきたつもりだ。少しでも読者の皆さんのお役に立っていればうれしい。今回は最終回ということで,今後のデジタルビデオの方向を考えてみようと思う。

■今後のキーワードはリアルタイムエフェクト

 まず本コーナーでもメインに話してきたノンリニア編集システムの今後について占ってみよう。
 最近は,ハードウエアの進歩により,低価格のビデオ圧縮/伸張ボードでも十分な画質を実現できるようになってきた。DVに目を向ければ,iMACやVAIOなどパソコン本体にi.LINK(lEEE1394端子)を標準装備しているものが珍しくなくなってきた。コンスタントに4Mバイト/秒以上流せるように,映像用に使用するハードディスクを吟味すれば,i.LINK付きのパソコンで十分なノンリニア編集ができる。DVカードを別途使用するならDigital OriginのEdit-DVもビデオ編集には使いやすい。EditDVはMacとWin-dowsで使用できるが,CPUにPentiumIIIを使用したシステムではレンダリングスピードがかなり高速化される。使うならこちらのほうがお薦めだが,今後G4に対応すればMac上でも高速化されるだろう。
 ノンリニア編集システムの今後のキーワードはやはりリアルタイムエフェクトということになるだろう。
 リアルタイムエフェクトは,(1)専用のエフェクトボードで行う,(2)ビデオカードの持つグラフィックアクセラレータ機能や専用メモリーを利用して行う,(3)パソコンのCPUを利用して行う-という3パターンが考えられる。価格的には(1)が一番高く,(3)が一番安い。
 パソコンのCPUですべてを処理できれば安上がりなのは当然だが,残念ながら現在のパソコンのCPU能力では完全なリアルタイムエフェクトは行えないのが現状だ。年末から2000年初頭に登場するであろうNewTekのVideoToaster for NTはすべてのエフェクトをCPUで行おうとしているわけだが,実際にはどの程度のCPUが必要で,どれくらいのことができるかは不明だ。
 リアルタイムエフェクト関連の一番新しい製品としては,lnter BEE'99('99国際放送機器展)で発表されたPin-nacle SystemsのDV500(www.pinnaclesys.com/dv500/)がある(図1)。これはDVフォーマットのデュアルストリーム対応ボードで,このボード1枚でリアルタイムエフェクトが可能になる。エフェクトはCPUで行う。つまり(3)の方式である。しかし,リアルタイムエフェクトが行えるのはワイプなどの2次元トランジション効果で,3次元のDVE処理にはレンダリングが必要なようだ。
DV500には,Premiere5.1RTやタイトル作成ソフトのTitle Deko,音楽作成ソフトのACID Musicが同梱されているので,映像,テロップ,音楽,MAまですべて行える。これが米国では1000ドルを切っているのは大きな魅力だ。日本ではいくらになるのか・・・。
 (2)の方式ではMatroxのRT2000がある(図2)。RT2000はDV500のライバル製品になるわけだが,RT2000の場合,同社のビデオカードG400が別途必要になる。これはリアルタイムエフェクトにG400のアクセラレーション機能を利用しているためだ。このためRT2000では3次元DVEのエフェクト処理も完全なリアルタイムで行うことができる。MPEG-2での編集も行うことができる(www.matrox.com/videoweb/home.htm,販売は日立計測器サービス,価格は19万8000円)。  
 カノープスのDVRex-RT(図3)は,(1)と(3)のミックス方式だ。前回お話ししたDVRexにRT Engineボード(図4)を装着し,さらにCPUの力を借りてリアルタイムエフェクトを可能にしている(価格は49万8000円,www.canopus.co.jp)。編集ソフトには専用のRexEdit(図5)を使用し,デュアルPentiumIII500MHz以上を使用した場合は,高品位なPicture in Pictureやモーションブラーなどのビデオフィルタまでもリアルタイムに行うことができる。ビデオフィルタがリアルタイムにできるのは非常に喜ばしいことだ。選択範囲の内と外それぞれに別の設定を施すことができ,キーフレームでアニメーションできるので,移動する物体のある範囲にモザイクやぼかしをかけてリアルタイムに追従(キーフレームアニメーション)。させることができる。これは非常に便利な機能だ。

 ハイエンドのノンリニア編集システムは(1)の方式でリアルタイムエフェクトを可能にしている製品が多い。
 MatroxのDigiSuite,DigiSuite LE,DigiSuiteDTVはワイプ(2次元)のトランジションは本体に内蔵しているが,3次元のエフェクトには別途3DFXボード(Pin-nacle Systems社のGiniePlusのOEM)が必要になる。Pinnacle Systems社のReelTimeやTARGA2000RTもワイプ(2次元)のトランジションは本体に内蔵しているが,3次元のエフェクトには,別途3DFXのボードが必要になる。ReelTimeには同社のGiniePlus,TARGA2000RTにはAccom製のボードを使用する。
Media100もPinnacle Systems社のGiniePlusを使用してリアルタイムエフェクトが行える。

図1●Pinnacle Systemsの新製品DV500
これ1枚でリアルタイムエフェクトが可能になるDVボード。

図2●DV500のライバル製品になるMatroxのRT2000

図3●リアルタイムエフェクトが可能なカノープスのDVRex-RT (左)
図4●リアルタイムエフェクト用ドーターボードのRT Engine (右)

図5●DVRex-RTおよびRT Engineに付属するRexEdit(RT専用版)

■編集ソフトはユーザーインタフェースが鍵

 ノンリニア編集システムに要求されるのは,ハード上のスペックだけではない。編集ソフトの操作性も重要だ。ソフトウエアの操作は慣れれば速くなるが,人によってインタフェースの向き不向きがあるので,自分に合ったものを使用するのがいいだろう。
 例えば汎用ソフトのPremiereは価格も安く非常によくできたソフトだが,ビデオ編集という面で見ればまだ不満が残る。つまり,もともとパソコン用アプリケーションとして開発されたか(Premiereがそうだ),ビデオ編集用として開発されたかによって,編集ソフトの趣が異なるのである。
 カノープスのRexEditは出発点がビデオ編集なので,やはりビデオ編集はやりやすい。このソフトは,バージョンが上がるごとに合成やエフェクト類が充実してきている。ハイエンドシステムのMedia100やMediaComposerも始めからビデオ編集のために作られているので,ビデオ編集はやりやすい。言い換えれば,従来のビデオ編集の方法論を知り尽くした上で作られた製品と,そうでない製品との違いだ。これは,使う人にも言えるわけで.従来のリニアのビデオ編集に慣れた人とパソコンのアプリケーションに慣れた人では好みも違ってくるだろう。

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日経CG1999年12月号