ノンリニア編集システムの必須知識−圧縮比と画質,SCSIとハードディスク ノンリニア編集システムについてさらに詳しくお話ししようと思う。 |
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■さあ,ノンリニア編集を始めよう! ノンリニア編集とは,パソコンなどのコンピュータを使ってコンピュータ内で映像編集を行うことである。 |
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図3●ノンリニア編集のメリット |
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■まず,画質と圧縮の関係を知ろう ノンリニア編集を行うのに必要な知識として,画質と圧縮の関係がある。ちょっと退屈な話だ。だがとても重要なので,よく理解してほしい。 |
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では,デジタル映像をビデオ出力で使用する場合には,どのような圧縮方法が採用されているのだろうか。 ビデオに出力する場合は,ある程度の圧縮比(2分の1〜50分の1)で,なおかつできるだけ高画質でなければならない。しかも,リアルタイムにコンピュータからの再生とコンピュータヘの録画(取り込み)ができなければならない。 ここで一般的によく用いられているのが,MotionJPEGである。 このMotionJPEGは動画用に開発されたJPEG方式*で,これにより高画質に圧縮を行うことができる。ただし,ソフトウエアだけではリアルタイムの取り込み・再生ができないので,専用のビデオキャプチャ再生ボードを使用する。ビデオキャプチャ再生ボードにより,コンピュータからのリアルタイム再生とリアルタイム取り込みが可能となる。 ただし,このMotionJPEGはビデオキャプチャ再生ボードとセットになっておりボードメーカーによる方言があるため,あるメーカーのボードで取り込んだ(圧縮した)ものは,他のメーカーのボードでは再生(伸張)できない。 このように,ビデオ出力用のノンリニア編集に用いられる圧縮方式はMotionJPEG方式あるいはこれに類似した(メーカー独自の)方式がもっとも一般的である。これらの圧縮方法を用いることで,ビデオへの高画質な映像記録が可能になっている。 もっとも,皆同じような圧縮方法を用いているといってもビデオキャプチャ再生ボードの性能によって画質は大きく左右される。購入の際は自分の目で画質をチェックすることをお薦めする。 同じビデオカードを使用する楊合は,画質に影響するのは圧縮率である。当然,低圧縮の場合が画質は良く,圧縮比を上げれば画質は悪くなる。しかし,画質の点を除けば,必ずしも低圧縮が良いとは限らない。というのも,低圧縮にするとデータ量は増えるので,データの転送レートを高めなければならず,ハードディスクなどのハードウエアの性能アップが必要になるとともに,必要となるハードディスクスペースも大きくなるからだ。自分が必要な画質を十分見極めて利用することが大切だ。 ところで,ここで面白いことがある。それは,あるビデオボードが低圧縮時にほかより高画質だからといって,高圧縮の時も他のボードよりきれいとは限らないということだ。自分はどのような目的で使用したいと思っているのか,そのためにはどのくらいの圧縮をかけて使用するのかをまず決めて,ボードを選択しなければならない。 最近ではデジタルビデオカメラに使用されているDVコーデックを使用したノンリニア編集システムも登場してきた。このシステムは撮影から編集まですべてデジタル化されているのできわめて高画質でノンリニア編集システムを組むことができる。DVノンリニア編集システムはこれからの期待のシステムだ。 |
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*コーデック:圧縮/伸張ソフトウエアのことコーディング・デコーディングの略。 *JPEG方式:静止画像の圧縮方式の中で最も代表的なもの、フルカラーに対応しており、圧縮率が高い割に画質劣化が少ないのが特徴、圧縮のかけ具合を変えることがてきるので,圧縮次第では印刷に耐えうる高画質を維持できる。これを動画用に利用したのがMotionJPEG。 *DVコーデック:デジタルビデオ一口メモ参照 |
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■ノンリニア編集システムの構成はどうなっているのか? ノンリニア編集システムには,編集ソフトとコンピュータ,ビデオキャプチャ再生ボードが一体になった専用システムと,パソコンにビデオキャプチャ再生ボードを組みこんだシステム(図5)に大別できる。 |
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図5●ノンリニア編集システムの一般的な構成 |
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■ノンリニア編集システムの周辺機器 SCSIとハードディスクについて |
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ノンリニア編集システムの周辺機器でまず必要になるのは、ハードディスクだ。そして,コンピュータとハードディスクをつなぐインタフェースも必要になる。 |
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表1に,SCSIのタイプ別の転送レートを,表2に圧縮率と転送レートの関係を示した。 表1と表2を見て,必要なSCSIボードを取り付ければよいだろう。このSCSIボードはあまり買い換えることもないだろうから,転送レートに余裕を持たせて,狙い目よりちょっと上の方を買った方がいいだろう。 さて,肝心なハードディスクについて述べよう。 まず,自分が目的とする画質を得るためにはどれくらいのデータ量を流さなければならないかをよく知っておかなければならない。もし,将来高画質な編集をしたいのなら,けちけちせずに始めから転送レートの稼げるものを買った方が後々得をする。これは肝に銘じてほしい。 ところで,ハードディスクの性能を見るのにシークタイムやアクセスタイムなどがあるが,ノンリニア編集で最も大切なのは転送レートである(図6)。しかも,瞬間の転送レートではなくいかに安定してデータを流し続けられるかが重要である。また,SCSIのタイプにより最大で流せるデータ量は決まるが,これはあくまでも最大値であって,そのSCSIにつないだハードディスクの能力が上がるわけではないので注意してほしい。 パソコンに最初から付属するハードディスクの転送レートは大体2〜4Mバイト/秒くらいだろう。高速ハードディスクの場合4〜8Mバイト/秒くらいは流せる。最近ではSeagateのCheetaのように10Mバイト/秒を超えるものもある。これは正直言って驚異である。 とは言ってもハードディスク1台で流せる量は高々10Mバイト/秒程度である。ということは,ハードティスク1台では1/2圧縮や非圧縮は扱えないことになる(表2参照)。では,10Mバイト/秒以上の転送レートを得るにはどうしたらよいかというと,そのような場合はディスクアレイを使用する。 ディスクアレイとはハードディスクをRAID*接続したもので,接続する目的によりRAID0,RAID1,RAID2,RAID3,RAID5などの種類がある。これらは,ほとんどがバックアップのための接続で,ノンリニア編集に関係するのはRAID0だけ。RAID0接続を使用することでデータを数台のハードディスクに交互に割り振れるため,数台のハードディスクを見かけ上1台のハードディスクとして使用できるわけだ。これにより,ハードディスク性能をトータルで向上させることができる。このRAID0接続のことをストライピング接続と呼ぶ。 ディスクアレイはハードウエア式のものもあれば,ソフトウエア方式のものもある。安上がりなのはソフトウエア方式だ。 Macintosh用だとREMUSなどがあり,WindowsNTには標準で付いている。これらのソフトを使うと自分で簡単にRAID接続できる。なお,RAID接続するハードディスクは,なるべく同じ機種の方が相性がいいようだ。 |
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*RAID:Redundan Arrays of Inexpensive Diskの略。データを数バイト単位に分解して複数のディスクドライブに対して並列に書き込み/読み出しを行う。 | |||||
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ノンリニアビデオ編集完全ガイド2000 |