映像制作


■PART.3■
目的別にムービーを書き出す・・・完成した作品を公開

 完成したオリジナルのDV作品は,自分で楽しむだけではなく他人にも見てもらいたいもの。また,サイズが大きくなりがちなDVデータはバックアップが必須になる。こうした際に大切なのが,データの保存法だ。具体的には保存するデータ形式や使用するメディアの種類がポイントになる。ビデオテープに録画するべきなのか,CD−Rに焼くべきなのかはケースバイケースだ。どういった機材を持っている人に渡すのれどの程度の画質でのバックアップが必要なのかを考慮して最適な方法で書き出そう。

■DVテープに書き戻してビデオテープに録画

 制作したDVの作品を公関する最も一般的な方法は,VHSなどのアナログビデオテープに録画する方法だ。普及度の高い家庭用のビデオデッキで再生できるため,汎用性が高い。アナログビデオテープは価格も手頃なので気軽に扱える。VHSテープは安いものだと,30分のテープが500円程度で頻入できる。
 ビデオヘの録画の手順は難しくはない。だがマックから直接,ビデオデッキに接続することはできないため,いったんDVカメラの中のDVテープに書き戻す必要がある。
 まずマックのFireWire端子とDVカメラのDV端子を接続。iMovieの場合,「ファイル」メニューから「ムービーの書き出し」を開く。表示された「ムービーの書き出し」ウィンドウで「書き出し先」として「カメラ」を選択して「書き出し」ボタンをクリック。すると開いているムービーをDVカメラのDVテープに保存できる。保存したムービーは,iMovie側からDVカメラを操作して確認可能だ。
 次に,DVカメラのアナログ出力端子と通常のビデオデッキのアナログ入力端子を接続。DVカメラでDVテープを再生して,この画像をアナログビデオデッキのビデオテープに録画する。
 気になる画質の劣化だが,マックからDVテープに書き出す際には,はとんどないといえる。デジタルのままデータを転送するからだ。アナログテープに録画するときに若干劣化するが,気になるほどではない。ただし,アナログテープ間でコピーを繰り返すと画質は劣化していく。DVテープをマスターとして保管しよう。


●DVカメラに書き戻すためには「ムービーの書き出し」ウィンドウで「カメラ」を選ぷ

●マックとDVカメラはDVケーブル、DVカメラとビデオデッキはAVケブルでつなげる

■用途で設定を切り替えてQuickTimeムーピーとしてCD−Rに保存

 コストパフォーマンスの高さで,注目度の高いCD−R。ほとんどのパソコンが搭載するCD−ROMドライブで読み込んで再生できるため,自分用に保有しておいたり,パソコンユーザーに渡すメディアとして最適だ。CD−Rに書き込むにはCD−Rドライブと書き込みソフトが必要になる。
 もしデータを素材としてDV形式でバックアップしたいのであれば,DVテープに書き戻して保存しておく方法が現実的だろう。1分で200MBを使うDVデータは,650MBの通常のCD−Rメディアでは,3分強しか保存できないからだ。コンシューマー向けのDVカメラが使うミニDVテープは,60分のものが1000円程度で買える。

■作品としての保存はQuickTimeで

 長めの作品を友人や家族に送りたいのであれば,QuickTimeムービーに圧縮して書き出せば容量を減らせる。マック,Windowsといったプラットホームを問わず,QuickTimeとCD−ROMドライブさえあれば再生できる。この場合,まずは作成した作品をiMovieでQuickTimeムービーとして書き出す。
 
「ムービーの書き出し」ウィンドウの「書き出し先」として「QuickTime」を,「形式」から「CD−ROM用ムービー」を選択する。CD−ROMに収録するために適切な画質を自動設定してくれる。サイズは320×240ピクセルで毎秒15フレームの映像を記録できる。容量は1分でだいたい4MBくらいになる。650MBのCD−Rメディアなら,3時間近くを記録できる計算だ。
●左が「SorensonVideo」,右がiMovie2推奨のCD−ROM用として圧縮した映像。SorensonVideoがきれいに再現できている
 画質設定を自分でカスタマイズして書き出すことも可能だ。書き出しの「形式」として「詳しい設定」を選ぶと,映像のサイズや圧縮形式,圧縮率を決められるようになる。
 この陛の圧縮形式は「Sorenson Video」を推奨する。圧縮率と画質のバランスが優れており,容量の小さい割に画質が高いからだ。サイズを320×240ピクセル,毎秒15フレームで,圧縮率などの設定にデフォルト値を使った場合,容量は1分で8MB程度。iMovieの標準設定よりは容量が大きくなるが,画質は格投に上がる。ただし圧縮に時間がかかることと,Quick Time4でしか再生できないのが欠点だ。Quick Time3といった古い環境でも再生できる圧縮形式「シネパック」は,Sorenson Videoと比較すると圧縮時間は少し短いが圧縮率に劣る。Quick Time4環境で比較するとSorensonに分がある。

●ムービーとして書き出す際には、映像のサイズや圧縮形式を設定できる。圧縮率が高く画質も高い「Sorenson Video」がお薦めだ

■MPEG1への変換が必須のVideoCDへの記録

 Video CDは,DVDプレーヤーやレーザーディスクプレーヤー,一部の家庭用ゲーム機などで再生できるメディアだ。Video CDを作るためには,CD−Rドライブと書き込みソフトのほかに,ムービーをMPEGl形式に変換するソフトが必要になる。書き込みソフトは,はとんどの製品がVideo CDの書き込みに対応している
 マック用のMPEG1エンコードソフトとしては「ASTARTE M.Pack」がある。Quick TimeムービーをMPEG1やMPEG2に変換することが可能だ。ただし書き込みソフトは「Adaptec Toast4」を使う必要がある。
 VideoCDでは動画を単純に再生するだけではなく,分岐などのインタラクティブ性を加えることもできる。単純に動画を再生する規格が「VideoCDVer.1」であるのに対して,インタラクティブな規格は「Video CDVer.2」と呼ばれる。VideoCDVer.2を作るためのソフトには「Video CD Maker Personal」がある。ドラッグ&ドロップでインタラクティブなビデオを作成してCD−Rに書き込むことができる。


●「ASTARTEM.Pack」。
QuickTlmeムービーをMPEG1に変換して「VideoCDVer.1」のメディアを作れる。MPEG2への圧縮機能も備える。価格は5万8000円。連絡先はソフトウェア・トウー(TEL03−5676−2177、http://www.swtoo.com/)


●「Video CD Make rPersonal」。インタラクティブ性を持つ「Video CDVer.2」のメディアを作れる。MPEG1への圧縮、CD−Rへの書き込み機能を併せ持つ。連絡先はソフトウェア・トウー(TEL03−5676−2177,http://www.swtoo.com/)

■ファイル容量に注意してホームページやメールで配付する

 ホームページで公開したり電子メールに添付して作品を公開したいのであれば,ファイルの容量に注意しよう。DV形式は1分当たりおよそ200MBの容量があり,インターネットでのデータの配布方法としては適切な容量ではない。
iMovieには,Web公開用とメール添付用に最適なサイズに書き出せる設定があらかじめ用意されている。この場合も,作成したムービーはQuickTimeとして書き出す。「ファイル」メニューから「ムービーの書き出し」を呼び出し,「書き出し先」として「QuickTime」を選んだ後に,「形式」から「Email用ムービー」か「Web用ムービー」を選択する。画質はメール用が160×120ピクセルで毎秒10フレーム,Web用が240×180ピクセルで毎秒12フレームになる。

■Webは3MB,メールは1MB以下に

 Webで公開する場合のファイル容量の目安だが,高速なISDN回線を使ってダウンロードする場合でも,3MB程度のムービーで10分くらいの時間がかかる。これ以上,大きな容量になると気軽にダウンロードというわけにはいかない。3MBでは,iMovie2の推奨設定で3分程度の映像を記録できる。メールに添付するのであれば,容量は1MB以下にするのが無難だ。iMovie2推奨設定なら1分30秒程度で1MB前後の容量になる。
 画質にこだわるのであれば,圧縮方式をカスタマイズして「Sorenson Video」に変更することを薦める。容量が増える半面,画質はiMovieの推奨設定より向上する。


●Quick Timeムービーの書き出し中に現れるダイアログ。変換に必要なおおよその時間が分かる


●iMovie2には、あらかじめメールやWeb用に最適な保存方法が設定されている

形式変換の達人,QuickTime Pro
 有償の「Quick Time4 Pro」なら,映像をさまざまな形式に変換できる。標準の日本語版Quick Time4から29.99ドルでインターネット経由によりアップグレード可能だ。例えばマックで一般的なQuick Timoムービーを,Windowsで標準のAVI形式のムービーに変換するといったことができる。
相手側の環境に合わせた形式のムービーファイルを簡単に作成できるので便利だ。
 手順は,変換したいムービーを「Quiok Time Player」で開き,「ファイル」メニューから「書き出し」を選ぶだけだ。表示されるダイアログから「書き出し」と「出力」形式を選択する。各形式のムービーをiMovieのクリップとして取り込める「DVストリーム」形式に変換することも可能だ。
 注目されることは少ないが,Quick Time4 Proは編集機能も高度なものを搭載する。通常の切り抜きやコピーのほかに,iMovieではできない画像の合成や回転,マスク処理などが行える。
●「Quick Time4 Pro」はムービーをさまざまな形式に変換できる。iMovieに取り込めるDVストリームや,Windowsで標準的なAVIといった形式にも対応する ●「Quick Time4 Pro」は編集機能も豊富。操作ははん雑だがiMovieが搭載しない機能も備える
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日経MAC2000年10月号