映像制作



写真1●PCI Bus対応MEDIA100ボードVINCENT


図1●lRE,EDLの出力タイプ,
VTRコントロールディパイスなどの設定を行う


写真2●B-ARTISTにおけるMEDIA100システム例


写真3●PowerMac7500にMEDIA100ボードを装着したところ。手前はJackHammer SCSIボード

MEDIA100
バンドルパッケージ
価格
PCI版 NuBus版
MEDIA 100 + SuiteDeal \190万 \170万
MEDIA 100 + SuiteDeal + POWER \248万 \228万
MEDIA 100 + SuiteDeal + HDR \278万 \258万
MEDIA 100 + WholeDeal \300万 \280万


表2●MEDIA100バンドルパッケージ価格
問合せ先:イメージアンドメジャーメント・グラフィックシステム営業部2課 03(3365)3641


表3●MEDIA100の圧縮比と取込み時間
※HDRオプションがインストールされている場合のみ81から150の値が設定できる

はじめに

 いままでノンリニア編集機を鼻にもかけなかった人たちが,最近やたらとノンリニア編集機の話題を出してくる。ほんの少し前まではなにも知らなかった人たちが,いつのまにかいろんな情報を知っている。ハードは加速度的に進歩し,時代は確実にノンリニア編集機の時代に突入しようとしているのだ。
そんな折,画質面で最近にわかに話題を呼んでいるデータトランスレーンョン社のノンリニア編集機『MEDIA100』をテストレポートする機会に恵まれた。このMEDIA100は,発売当時からある意味でNTSCに的を絞っていた感が強く,今回の2.5へのバージョンアップでは,画質面,操作面でも一段と進歩を遂げたようである。特にNTSC出力においては同クラスの製品で比較した場合,画質面からいうと現段階ではトノプレベルであるといえる。
MEDIA100の主な特徴を述べると,標準1/8,最高1/4(HDRオプション)の圧縮率に対応し,HDRオプション時にYUVコンポーネント入出力が可能である。入出力ピクセルは4:2:2YUVである。
また,オーディオ入力は標準で4トラック,HDRオプションで8トラックまで対応している。そして,特に大きな特徴として,ボード本体にDSPチップを搭載しており,コンピュータのCPUパワーに影響されず15種類の高速エフェクト処理を行うことができる(Power Option使用時)。    
ところで,このMEDIA100にはNuBus用とPCI Bus用の2種類が用意されており,特にPCI Bus用のボードはVINCENTと呼ばれている。NuBus用とPCI Bus用では大きな違いはないということだが,NuBus用ではセットアップレベルが7.5IREだけしかなく,PCIタイプは7.5IREと0.0IREの両方に対応している。
NuBus版のIREはハード的に制御しているので,今後も0.0IREに対応することは無理かもしれない。このセットアップレベルはノンリニア編集機を選ぶ際,案外見落としがちだが,実際にビデオへ編集画像を戻す際になって困る場合も出てくるので,充分考慮して選んで欲しい。
ご存じのように米国のセットアップは通常7.5IREが多く使用されており,日本では0.0IREが使用されることが多いようである。そのためアメリカ製品の場合多くは7.5IREとなっている。なにも知らずに7.5IREで納品すると,黒が浮いた映像を納品することになるから注意したい。
ところで,今回のテストに使用したMEDIA100は,PCI用のVINCENTを使用し,ソフトは基本セットに全オプションが同梱されたMEDIA100+WholeDealバンドルパッケージ(定価300万円)を使用した。また,CPU本体にはPowerMac7500/100・メモリー16Mバイト/ハードディスク1Gバイトモデルを使用した。
そして,この本体にメルコ製のDIMMメモリーADB-32M(32Mバイト)を2枚乗せ,合計80Mバイトのメモリーとした。また,SCSIボードはPCI SCSI Jack Hammer(潟\フトウェア・トゥー)を使用し,ハードディスクはSeagate15150W×2のディスクアレーを使用した。レイドソフトには,本誌1995年12月号で紹介したヤノ電器のRemusを使用した。
以上が今回の使用環境だが,メモリーの搭載には注意してほしい。MEDIA100は標準セットで使用する際でも,ソフトに45Mバイト(最低30Mバイト)を割当てる必要があり,HDRオプション使用時には65Mバイト(最低45Mバイト)割当てる必要がある。またタイトルを制作する場合,キャラクタージェネレーションが別アプリケーションの形で立上がるので,65Mバイト(最低45Mバイト)以外に16Mバイトのメモリーを空けておく必要がある。MEDIA100に割当てすぎるとキャラクタージェネレーションが立上がらなくなる。
では,MEDIA100の魅力と操作感をハードとソフトの面から検証してみよう。

商品構成 機能と特徴 価格
MEDIA 100 ボードとJunctionBOXおよび編集ソフトの基本システム。コンポジット,Sビデオおよび音声の入出力とカット編集,4ch音声編集,QuickTime入力ほか PCI版 \160万
NuBus版 \140万
POWER オプション 約15種類の高速エフェクト,オートデジタイズ,自動編集,WFM,VSCなどを追加 \64万
HDR オプション 圧縮率1/4までの拡張,コンポーネント入出力および音声4ch追加(計8ch) \84万
SuiteDeal 約60種類の特殊効果,カラーコレクション,キャラクタージェネレーション,EDL出力,ソフト年間保守付き(従来のFX,CG,EDLとソフト年間保守のセット) \64万
WholeDeal SuiteDeal,POWERオプションおよびHDRオプションのセット。MEDIA100の全機能 \180万
Platinum Agreement ソフト年間保守料。1年間のソフトバージョンアップサービス(SuiteDeal,WholeDealを購入する場合は不要)。2年目以降は毎年更新必要。 \14万8000

表1●MEDIA100およびオプションの特長と商品構成,価格

表4●3秒のエフェクトをかけたときの高速エフェクトと標準エフェクトの速度比較
 最初に述べたように,MEDIA100はNTSCで使用する際に最高の能力を発揮できるように設計されているようで,そのためVINCENTボードからはRGBモニターヘの出力はない。したがって,すべての操作はMac本体のRGBモニターで行うわけであるが,Power Mac7500は標準で1280×1024で256色,1152×870で3万2000色をもっており,VRAMを2Mバイトから4Mバイトへ増設すると,1024×768で1670万色フルカラーに対応しているので,基本的にモニター1台で充分だった。もちろん,必要があれば市販のビデオボードを追加し,操作モニターを増やすこともできる。
また,NTSCに焦点を絞っているため入出力は4:2:2YUVを使用している。これは,NTSCの場合4:4:4 RGBよりもデータを小さくでき有利であるからだ。通常4:4:4RGBの場合,640×480サイズ1フレームの非圧縮データ量は900kバイトであるが,4:2:2YUVでサンプリングしたデータ量は600kバイトとなる。これは,色差成分(U,V)のサンプリング周波数を,輝度成分(Y)の半分で行っているためである。なぜ色差成分を半分の周波数でサンプリングするかというと,NTSC信号の場合,厳密にはRGB1670万色の表現はできないため,色差成分を半分でサンプリングしてもNTSC信号への影響が少ないからだ。いい換えれば,どうせ圧縮をするならば,まず4:2:2YUVサンプリングでNTSCに大切な輝度(モノクログラデーション)成分に対して色差成分を軽く制限し,有効な部分を得たうえでさらに圧縮をかけたほうが,データ的に得であるという理由からであろう(ちなみに,最近出てきた6ミリデジタルビデオは4:1:1サンプリングを行っている)。したがって,MEDIA100における最高1/4圧縮とは,YUVデータ600kバイトの1/4ということである(表3)。
圧縮における特徴を述べるならば,4:4:4 RGBサンプリングを行った場合は,圧縮率を上げるに従い輝度と色差が同時に圧縮されていく感じだが,MEDIA100の4:2:2YUVサンプリングの場合では,最初に色差に圧縮の影響(色ノイズ)が出始め,徐々に輝度信号に影響が出るといった感じである。いい方を変えると,モノクロのグラデーションに重点がおかれているため,解像度がよいという特徴がある(『圧縮比と画質』参照)。実際1/4圧縮を行った結果では,細部まで解像度のよい再生画を得ることができた。この1/4圧縮の映像なら,業務レベルのVP等に使用しても充分通用する
画質だと判断した。もちろん使用目的を考慮して,オンエアーでの使用も可能だろう(あくまで,プロデューサー判断といったところか……)。
MEDIA100のハード的なもう1つの大きな特徴は,ボード上にDSPチップを搭載している点だ。このDSPによって,PowerOptionで用意されている約15種類の高速エフェクトを実行することができる。この高速エフェクトを使用した場合と通常のエフェクト処理をした場合との速度比較を表4に示す。ここでは3秒のワイプエフェクトをかけているが,ご覧のように約6.5倍の差がついた。もちろんCPU本体に9500/132を使用すれば少しは差が縮まるかもしれないが,MEDIA100の場合3秒のエフェクトを18秒で行うわけだから,1秒のエフェクトだと6秒で処理することになる。エフェクトのレンデリングがこれくらい高速だと,ほとんどリアルタイムといっていいほどで,業務でノンリニア編集を行う際,エフェクト処理でディレクターやクライアントをいらだたせることはまずなくなるだろう。
少なくとも操作している者にとって,精神衛生上喜ばしい限りである。

図2●操作時の標準的なレイアウト例


『圧縮比と画質』


『高速ワイプ』

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ビデオアルファ1996年2月号