Perception Video Recorder(以下PVR)はカナダのDIGITAL PROCESSING
SYSTEMS社(以下DPS社)の製品で正式型番はPVR-2500(NTSC用)、PVR-3500(PAL用)である。
このボードは基本的には、コンポジット、Y/C、コンポーネント出力をもったビデオ出力ボードである。
単体ではCGアニメーションファイルなどをリアルタイム再生するのに使用する場合が多いだろう。もちろんキャプチャーされた動画の再生も可能である。
したがって、ノンリニア編集で使用する場合は、ビデオキャプチャー用に別売のドーターボードAD-2500(NTSC用)またはAD-3500(PAL用)を使用しなければならない。これはPVRのドーターボード構成となっているので、PVRに2枚重ねにし1つのPCIバスで使用する。
ところで、このDPS社はもともとTBCをつくっていたところで、業務レベルから放送レベルへと着実に実力をつけてきた会社である。TBCをつくっていた会社だけに、今回のテストでもビデオ信号に対して非常に忠実だと感心した。入った(キャプチャーした)信号はそのまま出力するといった印象だ。
実は、PVRの前身にPersonal Animation Recorder(PAR)が存在した(現在も活躍中)。当初AMIGA用のビデオ出力ボードとして発売され、その後PC用も発売されている。このボードは、CGファイルのリアルタイム再生用を可能としたもので、従来のようなビデオデッキでのコマ撮りが不要となったため、CGアニメーターの人気を博した。もちろん、画質的にも優秀だったのでCGプロダクションでも数多く導入されている。
また、このPARはPersonal TBC IVというTBCボードを使用することにより動画のキャプチャーも行えた。まさにPVRの前身の感がある。
このようにPARは発売当初から評判が良く、CGアニメーターの多くが導入したが、今回さらに磨きをかけて登場したのがこのPVRなのである。
PARとPVRの大きな違いは、PVRがPCIバスを採用した点にある。また、PVRはOSにWindows、Window-sNTが使用可能であり、WindowsNTではIntel、DEC
Alpha、Mipsのマルチプラットフォームで使用することができる。さらに、SCSI 2インターフェースを装備しているため、SCS Iボードは不要である。メーカー推奨のハードディスクは表1のとおりである。
PVRは付属のソフトで簡単なカット編集までできるので(図1)、CGアニメーターにはこれ1台でこと足りるだろう。
では、とりあえず単体での使用環境を説明しよう。
PVRが完全に放送クォリティを有するといっているのは、10ビット、2×オーバーサンプルでのデジタル化と、高度な圧縮技術によるところが大きいだろう。
ビデオ解像度は720×480とし、また10ビット処理をすることでD-1をもしのぐダイナミックレンジを有している。
圧縮比の設定はデフォルトでOff-line:1.5Mバイト/秒、Industrial:3.0Mバイト/秒、On-line:5.0Mバイト/秒、Digital:6.0Mバイト/秒の4段階が用意されているが、これ以外にも自分で設定が可能である(図2)。
今回のテストでは、Seagate15150N(4.3Gバイト)を使用したが6.0Mバイト/秒での取込み再生とも、なんら問題なく行えた。画質面は、特に低圧縮での画質では非常に美しいダイナミックな映像を見せてくれた(写真、カラーp.18参照)。これなら放送レベルといっても過言ではないだろう。
先にも述べたように、TBCをつくっている会社らしく、ソフト上でProc Ampのセッティングもでき、IREのセットも0.0IRE、7.5IREなど問題なくセットできる(図3)。また、GenlockからTimeCodeまでと、基本スペックは完ぺきである(図4、図5)。
また、PVRは波形のモニターが可能(図6)で、そのほかフラグメンテーション用のOptimizeソフトや、Device(ハードディスクなど)のスピードを計り、上限の圧縮レートを知ることもできるユーティリティも載っている。残念ながら、これらは今回お借りしたWindowsNT用では対応していなかったが、最新のバージョン2.51では波形をモニターできるようになっている。波形モニターは同社からPersonal
Vector Scopeとしても以前より発売されてはいるが、内蔵ソフトでモニターできるに越したことはない。
ただ、最近のデジタイズボードはオンボードでAudioの入出力ができるものが多いなか、PVRにはAudioの入出力はない。しかし、市販のボードを使用することで、PVRのソフトでコントロールすることができる(図7)。
また、PVRのファイルフォーマットは独自のPVD(動画)、PST(静止画)を使用しているが、各種ファイルへの書出し、吸込みも付属のユーティリティで行うことができるので、ファイルフォーマットの違いで困ることはない。もちろん、CGのレンダリングの場合は直接PVRのハードディスクに書込みできるので、特にファイルを意識する必要はないだろう。ただ、PVRとPARのPVD、PSTファイルは直接の互換性がないので、PARを使っている人は注意が必要だろう。
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表1●Perception VRで使用可能なハードディスク
図1●PVRの操作パネル。ここでビデオのキャプチャー操作やプレーバックを行える。また簡単な編集モードへもここから入っていける
図2●PVRのレコードコントロール画面。ここで入出切替えや圧縮レートを切替える。圧縮レートはモディファイにより新規登録もできる
図3●PVRのProc Amp Setting IREの設定など、きめ細かな設定が可能
図4●PVRのGenlock Setting画面
図5●PVRのTime Code画面
図7●PVRのAudio Play Control画面
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in:Sync社のSpeed Razor MachIIIはWindowsNT上でノンリニアの画像編集および画像エフェクトを行う32ビット対応ソフトである。WindowsNT上で動作するのでX86、Pentium、Pentium
Pro、DEC Alpha、MIPS、PowerPCなどのマルチプラットフォームで動かすことができる(CD-ROMにこれらのソフトがすべて入っている。ただし、ハードウェアプロテクトのドングルが付いているので、同時に複数の使用はできない)。
Speed Razor MachIIIが対応しているビデオボードには、PerceptionVRのほか、TARGA2000(PCI、EISA)、Intergraph
VideoEngineがあるが(表2)、現在のところ完全に対応しているのはPerceptionVRのみで、TARGA2000への完全対応は4月ごろになりそうだということだ。
ところで、今回は幸運にも最強のNTマシーンRaptor3(DEC Alpha/300MHz)上でテストしたわけだが、マルチプラットフォームのためソフト間で若干の違いがあるかもしれないので、あくまでDEC
Alpha用の場合として理解していただきたい。またSpeed Razor MachIIIは音声編集機能ももち、48kHz16ビットの音声を扱えるが、今回はサウンドボードを使用しなかったので、オーディオに関する評価は行っていない。
このほかSpeed Razor MachIIIにはWindows用の姉妹ソフトとしてRazor Proもあり、VTRの制御ができないなどのいくつかの制約があるが、基本性能は同じなので、とりあえず使ってみたい人にはいいだろう。ただ、CPUの処理スピードの差はどうにもならないだろうが・・・・・・。機能の違いを表3に示しているので、参照していただきたい。
さて、いよいよ今回の組合せでのノンリニア編集を、順を追って説明していこう。
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◆Speed Razor MachIIIは32ビットコードでPowerPC、Intel、Alpha、MIPSに対応されている
◆Speed Razor MachIIIストレートカット編集がリアルタイムで可能
◆Speed Razor MachIIIは4000×4000ピクセルイメージだが、Razor PROは2000×2000ピクセルイメージ
◆Speed Razor MachIIIはシームレスに2つ以上のプロジェクトをマージできる
◆Speed Razor MachIIIはオーディオ制御とゲインコントロールが可能
◆Speed Razor MachIIIはアンチエイリアスでインターポーレートがサンプルオーディオから可能
◆Speed Razor MachIIIはDPS Perceptionのプラグインを装備しているので、コンバージョンをせずに直接素材の入出力が可能
◆Speed Razor MachIIIはバーチャル編集テンプレートをサポートしているので、フッテージを作成しなくても編集課程を設定することができる
◆Speed Razor MachIIIは、オーディオマーキング機能でオーディオをシンクロナイズすることが可能
◆Speed Razor MachIIIは、バッチキャプチャリング、VTRコントロールやEDLをサポートしている
◆Speed Razor MachIIIはプロジェクトベースのライブラリーを装備しているので、新しいプロジェクトを始めるときに新しい素材(BIN)を簡単に取出すことが可能
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表3●Razor PROとSpeed Razor MachIIIの違い |
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