映像制作


■3D CGの制作におけるプラグインの使用例

 プラグインソフトはハイエンドの3D CGの分野でも沢山使用されている。プラグインを使用することで、複雑なモデリングを手早く行えたり、物理的な運動を与ることで、アニメーションにリアリティをもたせることもできる。
 今回はLightWave 3D用のプラグインソフトを3つ紹介したい。1つは稲妻を簡単につくれる『VertiLectric』、また、髪の毛などをつくる『FiberFactory』、そして爆発、炎、煙などのパーティクルオブジェクトによるエフェクトをつくる『SPARKS』だ。

●VertiLectric

 VertiLectricには2つのプラグインが付いている。1つはLightWave 3Dのレイアウト(アニメーションをつくるところ)用とモデラー用だ。
 レイアウトで『VertiLectric』を使用することによって、2つのオブジェクト間で稲妻を簡単につくることができる。2つのオブジェクトには通常、点オブジェクト(LightWave 3DではNullオブジェクトと呼ぶ)を用いるが、通常のオブジェクトのほか、カメラやライトを使用することもできる。この場合稲妻はそれらのもつ原点(LightWave 3DではPivot)間に発生することとなる。また、モデラーでVLを使用することで稲妻をオブジェクトとして作成できる。
 では実際の設定例を簡単に紹介しよう。
 インストールは、フロッピーから所定のプラグインのディレクトリにコピーするだけでよい。LightWave 3Dのレイアウトを起動後、オプションメニューのAddPlug-insからレイアウト用のプラグインを登録する。
 つぎにオブジェクトメニューで、Add NullObjectにより2つのNull(点)オブジェクトを作成する。1つ目を稲妻の発生点とする場合Current ObjectにNullObject(1)を選択する。続いてObject Replace-ment Plug-inを選択し、Plug-inに『VertiLectric』を指定する(図13)。すると『VertiLectric』の設定パネルが開く(図14)。
 ここで、稲妻の落雷点になるオブジェクトをターゲットとして登録する。
 StrikeSequenceで発生する稲妻のキーフレームを入力する(図15)。ここでは50%と設定(Apply)してみる。すると、右のウィンドウに[X]印が設定され、50%のキーフレームがランダムに生成される。
 ここでOKを押し、いったん『VertiLectric』の初期設定パネルに戻る。つぎにSet Parametersで稲妻のパラメーターをセットする(図16)。ここでは稲妻が起こるオブジェクトの最長距離、稲妻の節目の数、分岐する(杖の数、曲がり具合、形状など)を設定する。
 最後にレイアウトに戻り、2つのオブジェクトに間隔を与える。間隔は先に設定した最長距離を超えると稲妻が発生しないので注意が必要だ。
 図B(カラーp.24)は、上記のパラメーターで設定した稲妻を走らせたものである。
 また、モデラー用のプラグインの場合だが、設定パネルは図17のようになっており、パラメーターはレイアウト用プラグインの形状に関するパラメーターとほとんど同じだ。注意しなければいけないことは、ここでつくった稲妻オブジェクト同士にモーフィングをかける場合、Level設定を同じにしてオブジェクトのポイント数を同じにしておかなければならないことである。


図13●Object ReplacementのプラグインでVertiLectricを選択する


図14●VertiLectricのメインパネル

図15●Strike Sequenceでは発生する稲妻のキーフィルムを設定する

図16●Set Parameterパネル:稲妻の諸設定を行う

図B●747には軽くスポットライトを与えて、稲妻の中心には稲妻とともに発光するポイントライトを置いた


図17●VertiLectricのモデラー用プラグインの設定パネル

●FiberFactory(毛髪生成ソフト)

 3D CGで毛髪をつくるのは至難の業だ。もちろん、1本1本をつくることはそんなに難しいことではない。
しかし、何千、何万もの毛髪となると考えただけでもぞっとしてしまう。したがって、たいていの場合テクスチャーマップでごまかしながら作成しているという方が大半ではなかろうか。そこで活躍するのが、Fibe-Factoryだ。
 FiberFactoryで設定できる項目には
・セグメントの数
・一節当たりの側面数
・毛髪の生える方向
・発生位置の整列/ランダマイズ
・しなだれる向き
・カールさせる場合の周回転
・逆立っている度合い
などがある。
 これらの設定値をうまくセットすることによって、人間の毛髪はもとより、動物、昆虫、麦畑、繊維などさまざまな毛を作成することができる。
 使用するにあたっての注意点は、LightWave 3Dの制限で1オブジェクト中のポリゴン数の上限が65500個までしか作成することができないため、場合によっては地肌の見えた毛髪になる場合があるかもしれない。
このようなときは、オブジェクトを分けるとかオブジェクト自体に毛髪に近い色を指定するなどして工夫する必要があるだろう(余談だが、FiberFactoryを使い始めると、毛髪(頭髪)の薄い方の気持がとてもよくわかってくる。先日、電車でなんか変なじい様を見つけ、近づくと頭頂部の地肌に黒い墨を塗っていた。
FiberFactoryでも使えるテクニックではあるが、近づくとやっぱり違うとばれてしまう)。
 さて、FiberFactoryの制作工程だが、モデラー上で毛髪をつくりたいオブジェクトを設定後、ToolsメニューのカスタムプラグインからFiberFactoryを選択する(図18)。そして、Geometry(図19)で、毛髪の量とサイズ、および形状(側面数、節数、先細り度)を設定する。つぎに、Effect(図20)で毛髪の巻き、ばらつきを設定する。そして、Gravity(図21)で毛髪に作用する重力の大きさと方向を設定する。最後にMakeボタンを押すことで毛髪ポリゴンが作成される。一度設定したこれらの値はFileにて保存でき、ロードすることによっていつでも使用することができる。
 ところで、FiberFactoryの制作上のこつとして、まず初めは10本程度の毛髪を平面に作成し、設定値をいろいろいじってみて、インターフェースの特長を理解することから始めよう。最初から何千何万もの毛髪を作成すると、なぜそのようになるのかがいつまでたっても理解できないからだ。
 また、毛髪はすべて一定の長さではないはずだから、オブジェクトを分割し、生える毛髪の長さを変えることでリアリティのある頭髪が生まれるだろう。
 筆者が今回つくった頭髪(図D:カラーp.24参照)は、まず頭頂部に毛先の短い毛髪を上向きにつくる。
これは作成後に地肌が見えるのをなくすためだ。それとは別に前頭頂部に短めの毛髪をつくり、残りの部分は長めの毛髪にした。
 もっと擬ればリアリティは増すだろうが、ポリゴン数には制約があることと、ポリゴン数が増えることでレンダリング時間も延びてしまうので注意が必要だ。


図18●FiberFactoryのメインパネル


図19●Geometryでは毛髪の量とサイズおよび形状を入力する


図20●Effectでは毛髪の巻き、ばらつきを設定する


図D●毛髪の作成例


図21●Gravityでは毛髪に作用する重力の大きさを設定する
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