映像制作


■PANDORAの概要

 昨年の本誌12月号ではDPS社の新製品ニュースを紹介したが、今回その新製品を搭載したメメックスの「PANDORA(バンドラ)」システムを試用する機会を得たのでさっそくレポートしたい。
 さて、バンドラの基本システムはCPUにPentiumPro200MHzを搭載し、OSにはWindowsNT4.0Jを採用している(表1)。ここで、Windows95ではなく、なぜWindowsNT4.0Jかというと、Windows95は既存のソフト資産を生かせるように16ビットと32ビットコードで書かれており、対してWindowsNT4.0は完全32ビットコードで書かれているためハイエンドの32ビットアプリケーションを走らせた場合、処理する能力に優れているためだ。したがって、CPUもPentiumではなく、完全32ビット対応のPentium Proを採用している。この選択はインテル系のCPUでハイエンドマシーンを組む場合の現在の定石である(今回使用したマシーンはエプソンダイレクトの製品であったが、この辺の構成は執筆現在の話であり、実際に出荷される3月ごろには、インテル社からPentium Proの次期バージョンが出荷されれば、CPU周りが変更され、さらに性能アップされる可能性もあるらしい)。
 そして、バンドラの最大の特長はこのマシーンに以下のDPS製品がオンボードされていることだ。
・Perception Vldeo Recorder (PVR−2500)
・Live Capture Card (AD−2500)
・Perception Audiofor Video (A4V:DAR2500)
・Perception Effects Accelerator (FX−2500)
 また、PVR用に9.1Gバイトのハードディスク(Seagate19171N)が搭載されている。このハードディスクは従来の9GバイトのHDより一回り小さく、以前の4Gバイトクラスの大きさとなっている。また、性能も格段にアップしており、PVRで最高8〜9Mパイト/sでのデータ転送を確保できる。
 さて、バンドラSystem構成は以上のハードウェアに、ノンリニアの編集ソフトとしてinsyncのSpeed RazerMachIIIまたはStar Media Systems社のVideo ActionNT(ビデオアクションNT)のどちらかを選ぶことができる。
 in:syncのSpeed Razer MachIIIは本誌’96年4月号でも紹介しているが、WindowsNTの汎用ソフトの中ではきわめて高機能であり、優れた安定性で定評がある。最近Speed Razer Mach3.5にバージョンアップしてからさらに磨きがかかったようだ。
 さて、この対抗馬として日本上陸したのがStar Media Systems社のビデオアクションNTである。アメリカのDTVマガジンによる評価では、SpeedRazerMachIII、アドビ・プレミア4.2、アビッドMCエキスプレスとこのビデオアクションNTがいつも並んでしのぎを削っている。
 今回はこのパンドラシステムの中でもビデオアクションNTを選び、その使用感やインターフェースについて紹介したい。


表1●PANDORA System構成およぴ価格


図1−1●Perception Player。ここでPerceptionを再生する

図1−2●PVD Clip Manager.psd。PerceptionはPVDファイルで取り込んだものを好きな順番で再生することかできる

図2●Proc Amp Setting.psd。PerceptionはProc Ampをもっており、IREの設定などはここで行う
 
■PVRおよびA4Vについて

 PVRは独自のPVDコーデックを使ったビデオ圧縮伸長ボードである。PVDは完全YUVのコーデックで、入出力のサンプリングに10ビットを使用しているため、きわめてSN比の良い映像を得ている(通常のノンリニアボードは8ビットが主)。また、入出力にはS入力、コンポジット入力のほか、コンポーネントYUVをもっており、まさにハイエンドな映像を見ることができる要因の1つである(詳しくは本誌昨年4月号をお読み下さい)。また、今回のテストに間に合わなかったが、オプションのSD−2500を付けることで、シリアルデジタルD−1の入出力も行うことができる。
 デフォルトの最高画質設定(低圧縮)は6Mバイト/s(1/3圧縮)であるが(図3)、設定を変えることができ、高性能のハードディスクを組み込むことで、それ以下のレート(7〜9Mバイト/s;約1/2圧縮)を転送することもできる。ただし、PVR上にSCSIバスをもっているため、安定しているという利点とは裏腹に、NTを使ったRAIDを組むことはできない。したがって、転送レートを稼ぐには通常ハード式のRAIDを組み込む必要がある。ただし、RAIDを組み込むことでどこまでレートを上げられるかは、残念ながら筆者は未確認であり、もし上げられたとしてもどこまで画質アップにつながるかは定かでない。いずれにせよ、バンドラに搭載のSeagatel1917INはRAIDシステムにも劣らないような安定した高転送能力をもっている(8〜9Mバイト/s)。
 A4Vはperception用のオーディオ入出力ボードで、2ch入力で、サンプリングは48kHzまで対応しており、アナログのほか、デジタル入力も備えている(図4)。また、A4Vボード上にDSPチップを搭載しており、MixControlにより8chをリアルタイムにミクシングしながらの再生ができる(図5)。
 ビデオデジタイズはPerceptionのユーティリティで行うことができる。この際A4Vを使用した場合A4VProgram Playerウィンドウ(図6)が現れる。
 また、オプションのPVR−422を接続し、Source Player左下の設定をPVRからVTRに変更することで、9ピンVTRのコントロールができる(図7)。この際、画面にタイムコードが現れ、VTR Time CodeパネルでIN点、OUT点を設定できる。Bach Recordする際は、Bach Record Listにリストアップされる。
 また、特筆すべきはPVR−422の設定によりPerceptionをマスターにもスレーブにも設定することができる点だ。ただし、スレーブの場合、再生のみに限られる。しかし、このことは既存のリニア編集システムに組み込むことで、Bロールプレーヤーの役割をしてくれることを意味する(デッキエミュレーション)。もちろんその中でデジタル編集をしておけば何台もの編集機の役目をしてくれることになる。


図3●Perceptionへの入力切り替えやデジタイズのレートの設定を行う


図4−1●Audio Recorder Control(入力)


図4−2●A4Vの入力レベルパネル


図6●A4V Program Player


図5●Mix Control.psd


図7●BachDedityze、VTR Time Codeパネル、Bach Record

  [次のページへ]
ビデオアルファ1997年3月号