映像制作


DPSは、Perception VRやHollywoodなどのデジタルディスクレコーダーやPerceptionRTなどのノンリニア編集機でよく知られているが、今回、非圧縮から圧縮まで幅広いデータレートに対応したdpsRealityが発売になった。
 これは一口でいうと圧縮フォーマットのPerception VRと非圧縮フォーマットのHollywoodを統合したようなものということができるが、従来はオプションだったオーディオ入出力が搭載され、DPSのお家芸ともいえるバーチャルファイルシステム(VFS)をさらに進化させたバーチャルテープファイルシステム(VTFS)などが搭載されている。また、従来のDPS製品のようなごちゃごちゃしたボードのイメージは一新され、すっきりと1枚のボードにまとめられている。そして、ハードウェアの一新に伴い、付属ユーティリティソフトもカッコよくなって登場した(図1)。このソフト、今後さらに発展しそうな雰囲気さえもっている。
 また、最も注目したいのが合成ソフトDFX(図2)が添付されることだろう。このDFXは、eyeonのDigitalFusionの一部機能を制限している特別版であるが、基本的にはほとんど同じようなものである。
 さて、この魅力的なdpsRealityをじっくりと紹介しよう。

■dpsRealityの特徴について

先に述べたとおり、dpsRealityは非圧縮/圧縮対応スタジオデジタルビデオディスクレコーダー(SDDR)である。解像度はD−1に準拠した720×486で、4:2:2:4で扱うことができる。アルファチャンネルを完全な非圧縮で扱い、映像データといっしょのファイルとしても扱えるので非常に扱いやすくなっている。また、オーディオの入出力もオンボード上に搭載されている。

 さて、これらの映像入出力は標準でコンポジット、Y/C、アナログコンポーネントの入出力が可能で、オプションでSDI、DVも扱える。音声はRCA、XLRの入出力のほか、CDからの入力ポートがdpsRealityのガード上にある。SDIオプションを使用すれば、SPDI/FやAES/EBUでの入出力もサポートされる。 これらの入出力は、標準ではタコ足状ケーブルであるが、オプションでブレークアウトボックスも発売されるようだ。 写真1dpsReality

 ところで、DPSの製品はオンボードSCSIのものが多いが、このdpsRealityでもUltra Wide SCSIが搭載されており、dpsRealityで使用するハードディスクはすべてここに繋がなくてはならない。ハードディスクは1台から15台まで接続でき、必要に応じて2〜14台をストライピング接続することができる。ここで、ちょっと気がかりなのは、D−1非圧縮、4:2:2:4では約30Mバイト/sの転送レートが必要なのだが、Ultra Wide SCSIの転送上限は40Mバイト/sであるので、音声まで考えた場合あまり余裕がないように思われる。本当は上位のUltra 2 Wide(最大80Mバイト/s)にしたほうがSCSIケーブル長にも余裕をもてるので望ましかったと思われるが、コストパフォーマンスをとったため仕方のなかったことだろう。したがって、音声用ハードディスクはパソコン本体倒のSCSIデイパイスに設定したほうがいいだろう。
 さて、一般的なパソコンのPCIバスの電圧はほとんどが5.0Vのため問題ないが、SGIのVWS320などのように3.3Vのものもある。このため、VWS320では使用できるPCIボードに制限があったが、dpsRealityは3.3Vと5.0Vの2つのPCIタイプに対応したユニバーサルタイプのため、SGI VWS320などの3.3Vタイプにも対応できる設計だ。SGIはVWS用のMotionJPEGボードの発売を見送る予定であることからVWS320/540のユーザーにとってはdpsRealityの登場はうれしいかぎりだろう。
 ただしこの際、dpsRealityのコンポーネント入出力を利用して、VWS320のもつD−1非圧縮SGIコーデックRGBA(4:4:4:4)でダイレクトにVWS320へキャプチャー/再生ができるかは、現時点では不明である。しかし、いったんdpsRealityの非圧縮でキャプチャー後、VWS320のもつD−1非圧縮SGIコーデックRGBA(4:4:4:4)に変数することは可能のようだ。CGとの合成などを何度も繰り返す場合は、こういう使い方もありえるかもしれないが、一般的にはYUVA(4:2:2:4)非圧縮でも充分すぎると思う。

表1dpsRealityの主な仕様

図1 dpsRealityユーティリティソフト操作画面。ProjectViewで簡単なカット編集ができる。
将来的にはフェードイン、フェードアウトなどの簡単なトランジション効果もできるようになるらしい

図2 DFXの操作画面
■dpsRealityを使ってみる
では、実際にdpsRealityを使ってみよう。

●Hardware Manager

 まず、コントロールパネル内のHardware Managerを立ち上げる。infoではハードウェアの状況とインストールされたドライバーのバージョン情報を知ることができる(図3)。また、SoftwareUpdateボタンをクリックして、インターネットで最新ドライバーをインストールすることもできる。
 General(図4)では、Genlock信号を外部から行うか内部で行うかを設定し、Genlockのタイミングの修正もここで行うことができる。そして、使用する映像にSetup蕾乗せるかどうかを設定する。日本ではSetupは0.0IREなのでAdd7.5IREのチェックを外す。
 dpsRealityは本体に搭載されたUltra Wide SCSIに最大14台のハードディスクを接続できる。非圧縮を扱うことを考えると使用するハードディスクの規格はUltra Wide SCSI、またはUltra2 Wide SCSIを使用したほうがよい。Ultra2 Wide SCSIはUltra Wide SCSIの上位規格であるが、dpsRealityに接続した場合Ultra Wide SCSIとして認識されることになる。さて、SCSIパネル(図5)では、接続したハードディスクのフォーマットを行いdpsRealityのディスクとして認識させる。認識させたディスクはパフォーマンステストにより最大転送速度を知ることができる(図6)。もし必要な性能が出なければ、2〜14台までストライピングを組むことができる。同じハードディスクを2台接続すれば約1.5倍の性能向上は見込めるだろう。台数を増やせばさらに性能を上げられる。ただし、1つ気になるのはストライピングを組んだ状態のディスクパフォーマンスが見られないため、どれだけ速くなったかがわからない。これはなんとかしてほしい。
 File System(図7)では、dpsReality上に認識させたハードディスク(Volume)をパソコンのシステム上で扱う場合のDriveLetterを設定する。ここではPドライブに設定した。
 記録や消去を繰り返した場合にハードディスク内でフラグメンテーションが起こり、この状態では非圧縮などの大きいデータを扱う場合にフレームのコマ落ちが起こる恐れがある。これを回避するにはディスクのOptimize(図8)を行い、データを頭から順に並べ替えてやればよい。Optlmize VolumeではFull、Midium、Lightの3段階でOptlmizeを行うことができる。大容量の高速ハードディスクを数台使用してストライピングを組んだ場合は、フラグメンテーションによるコマ落ちはほとんどないとは考えられるが、Optimizeを行うことで信頼を高めることができる。
 Test(図9)ではハードウェアの状態をテストすることができる。


図3 HardwareManager内のinfoパネル

図4 Hardware Manager内のGeneralパネル

図5 Hardware Manager内のSCSIパネル

図6 Hardware Manager内のDiskPerformanceパネル

図7 Hardware Manager内のFileSystemパネル
図8 Hardware Manager内のOptimizeパネル

図9 Hardware Manager内のTestパネル

●Virtual Tape File System(VTFS、図10) 

VTFSは従来のバーチャルファイルシステムを拡張したもので、扱えるファイルはBMP、IFF、RLA(Wavefront Run−Length Type A file)、RAS(Sun Raster file)、SGI(Silicon Graphics RGBA)、TGA、TIF、PIC、VPB(Quantel Video Paint Box file)、DPSで、このうちIFFとVPB以外はアルファチャンネルをもったファイル形式なので、アルファチャンネルといっしょに扱うことができる。ただし、これらは見かけ上の(バーチャルの)データであって、本当のデータはアルファチャンネルをもったビデオデータであるDPSファイルとして扱われる。PerceptionVRのPVDファイルやPerceptionRTのRVDファイルは直接扱うことはできず、これらはMedia Conversion Utilityを使用してDPSファイルに変換してから扱うことになる。
 さてVTFSの特徴として、dpsReality上に認識させたハードディスク(ここではPドライブ)をネットワークレンダリング用のドライブとして利用することができる。
これは一見単にPドライブを共有設定すればいいように思えるが、ネットワークレンダリングを行う場合、フレームの順番にレンダリングが完了するとはかぎらず、VTFSの場合不都合が生じる。そこで、レンダリングする仮のデータをSpool Fileとしてあらかじめ作成しておき(図11)、レンダリングの際にはファイルが入れ替わるようになっている。これで連番どおりにレンダリングしなくてもムービーデータが完成される。


図10 Virtual Tape File System

図11 NewMediaFileでSpooI Fileを作成しておく
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ビデオアルファ1999年12月号